女の子としての自分
「……礼二、言い残すことは……?」
「そ、そのー……少し柔らかかったですっっ!」
「こんのっ……!ばかーっ!」
「ごぼぼぼぼぼぼぼっ!」
そんな騒がしいプールの中でも一際騒がしい一角、そこには涙目で顔を真っ赤にした俺と、そんな俺に水中へ頭を抑え込まれている礼二、そして俺達二人を見守る綺月ちゃん叶奈ちゃんの姿があった。
「ほんとにっ!礼二はっ!反省っ!しなさーいっ!」
「ご!ごめっ!ぼぼぼぼっ!ほんとっ!がぼっ!ほんとにもうしないからっ!」
「おー……本気で怒ってるちよよん初めて見た気がするぞ」
「あれは怒ってると言うより……恥ずかしがってる?」
「あー……もしかしてその両方かも?」
「確かにー」
「礼二のばかっ!へんたいっ!すけべっ!」
「ちょっ!ぼぶっ!ちよっ、流石にがぼぼっ、息が……!」
「さて、そろそろれーくん助けるとしますか」
「だねー」
ーーーーーーーーーーーーーー
「えーっとー……そのー……ごめん礼二、やりすぎた」
「い、いや、これは俺も悪かったから……」
プール後の休み時間、プール上がり独特のあの塩素の匂いと共に微妙な雰囲気が流れる中、俺と礼二はとりあえず互いに謝りあっていた。
一体何がどうしてこうなったのか、その理由はというと────
「まぁ今回はちよよんのおふざけがそもそもの原因だし、やっぱり両方悪いと思うぞ」
「原因のある方よりも胸を触った罪は大きいのか……」
「何言ってるのれーくん、そんなの当たり前だよ?」
そう、事の発端は俺がプールに入った際に水着の中に空気が入るのを利用し、見事百パーセント空気で構成されたご立派な虚乳を作り上げたのが事の始まりであった。
そしてふざけてそれを礼二に見せた所、いつものノリで空気を逃がす為に礼二が虚乳を触ろうとした所、当たる直前に空気が抜け、ささやかながら存在する俺の本当の乳に当たってしまったというのが事件の全容である。
「とりあえずこれで仲直り!礼二もそれでいい?」
「あぁ」
「よしっ!それじゃあもうそろそろ授業始まるし、そろそろ席に戻っとこうか」
「そうするかー」
「それじゃあまた次の休み時間にー」
「んじゃ千代、また後で」
「またねー」
さて、皆が席に戻った訳だが……はぁー……我ながら初めて異性に胸を触られたとはいえ、まさかあんなに取り乱すとは思って無かったなぁ……
「今までありそうで無かったハプニングとはいえ……俺自身が自覚してない内に女の子としての自分が出来てたとかそんな所なのかなぁ……」
全く、感慨深……いや、迷惑甚だしい事だ。
流石にもうそろそろ授業が始まるので皆を席に戻した後、そんな事を俺が考えながら教科書なんかを用意しているとチャイムと共に先生がやって来て授業が始まる。
「────である。この事を今では────」
あー……眠い、凄ぶる眠い。どうして体育、それもプールの後はこんなに眠くなるんだろう……不思議だなぁ……
「やっべぇ……このままじゃ寝そうだ……本当、なんでこんなに眠くなるんだ……匂いか?」
この塩素消毒の匂いのせいなのかなぁ……落ち着くとかいい匂いとかそんなんじゃないけど、なんだか悪くはないしなんなら好きだしで、不思議な匂いだよな。
あぁダメだ……瞼が…………
「ほんのちょっぴりだけなら……いい…よ……ね?」
こうして俺の意識は自然とフェードアウトしていき、次起きたのは前の前の席の男子が頭を叩かれた音で起きたのだった。
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