慣れちまった悲しみに
「わぁ〜、やっぱりちよちー真っ白できれーい」
「そうかなぁー?でも見応えならあっちの方があるでしょ?」
「あー確かにー」
「ひゃあんっ!ちょっと二人共!流石に叶奈も怒ったぞ!」
「「きゃー!」」
きゃいきゃいと甲高い可愛らしい声で賑やかな男子の居ない女子だけの教室、その一角で体をバスタオルで覆ったすっぽこぽんな俺達はじゃれあっていた。
「ゴルァッ!なんばしよっとかぬしゃあ!」
「「「うわぁぁぁあ!」」」
「おー……今日もまた勇者が一人、いやこれは三人程転生したようだ」
「ちよよんの言い回しって本当に色々あるよなぁ〜。前は確か「ソシャゲ爆死者が多数出たようですな」だっけ?」
「時々言葉の意味が良くわかんないのがあるけど、それでもだいたい意味は分かっちゃうから不思議なんだよねー」
まぁこの時代にはないけど色々な意味のお亡くなりシリーズを使ってますから。よし、着替え終わりーっと。
「あれ?ちよちー着替えるの早くない!?」
「一緒におしゃべりしてたのに……はっ!さてはちよよん中に着てきたな!」
「全く、二人とおしゃべりしながら着替えてただけだよ。それよりもほら、二人も早く着替えなー?また覗かれる前にー」
「そうするぞー」
「だねー」
前世では旧々スクと呼ばれるこの時代じゃ一般的なスク水姿の俺を前に、二人もそう返事をするといそいそとスク水へと着替え始める。
そう、今日は夏限定のお楽しみ、プールの日なのである。
ーーーーーーーーーーーーーー
にしても、最初はあんなに女子の皆と着替えるのに抵抗あったのに、風呂で慣れ、ブルマで慣れ、気が付けばもうこれが当たり前に……
「いやー……慣れって怖いなぁ……」
「……?ちよちーどうしたの?」
「いやー、なんでもー」
「そこ、おしゃべりしなーい」
「「はーい」」
「それじゃあこの後は男女に別れてタイム測定、終わった人から反対側で自由行動ね」
「「「「「はーい」」」」」
あの後、五分くらい経ってようやく女子全員の着替えが終わり、先に着替えさせられ廊下で待たされていた男子達と合流して、先生より今日やる事を伝えられていた。
ピーッ!
「ぷわっはぁっ!」
「花宮さん十五秒ピッタリ!凄い、また最速じゃない」
「本当ですか!?」
よっしゃあい!いい記録出てる出てる!やっぱり水の抵抗が全く無いのが大きいんだろうな、全く無いのがな!
「くそぅ……いつか少しくらいは」
「あはははははは……とりあえずここだと邪魔になるから、向こうの方に行っててねー」
「うぅ……はーい」
自分で自分にダメージを追わせてしまいつつ、高タイムだったしと自分に言い聞かせてなんとかリカバリーをした俺は、先生に言われた通り皆が遊んでる方へと向かう。
「ちよよんおつかれー」
「叶奈ちゃんもおつかれー。今何やってるのー?」
「今はれーたろーとみやみやと一緒に水中サーフィンしてるぞ!」
「お、あれかー!私もやるー!」
水に沈めたビート板の上に足を乗せ、如何に長くバランスが取れるかという遊びである水中サーフィンをやっていると聞き、ぽちゃんと少し勢いよく水に入った俺はふととある事に気がつく。
そしてその事に気がついた俺は、急いで脇を締め胸元を手で押えるとその状況を叶奈ちゃんに見せる。
「おぉ!ちよよんとお揃いだ!」
「うぇへへ〜♪どうどう?結構それっぽいでしょ!」
「うんうん!にしても流石ちよよんだな!変な事をよく思いつくぞ!」
「へ、変な事……」
いやまぁ確かに変な事だけど……何も言い返せねぇ。
「と、とりあえず!礼二見せて驚かしてこよっ!」
「お!そうだな!そうと決まれば叶奈が隠してやるぞー!」
「たすかるー!」
こうして、俺のちょっとしたイタズラがスタートしたのだった。
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