色々な大きさ問題

 入学式から数日後、例年通り俺達の学校では身体測定が行われていた。


「うぅ〜!恥ずかしかったぞー!」


「あ、叶奈ちゃんおつかれー」


「お疲れ様ー、どうだった〜?」


 パタパタパタと保健室から珍しく顔を赤らめながら出てきた叶奈ちゃんに、先に外へと出ていた俺達はのんびりとした様子でそう声をかける。


「なんなんだあの先生!ずーっと叶奈のおっぱい見てきて恥ずかしかったぞ!」


 あー、顔赤い理由はやっぱりそれだったのか。


「そりゃあ叶奈ちゃんの大きいからねぇ」


「男の先生なら目も行くよねぇ」


「んなー!というか、なんで二人はそんな平気そうなんだ?」


「だって……ねぇ?」


「見られるものも無いからねぇ」


 悲しい事に。


「むぅ……二人もそのうち分かるようになるぞ!」


「喧嘩か?喧嘩売ってるのか?」


「よろしい、ならばクリークだ」


「わわっ!二人共やめっ!ぷくくっ……!やめてー!あははははっ!」


 こちょこちょと二人がかりで生意気を言う叶奈ちゃんの脇をくすぐりつつ、俺達は次の測定へと向かうのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


「うぅーむ……」


 これはイタズラの一種か……?いやでもそんなイタズラが出来る書類じゃねぇしなぁ……


「ちーよよん!」


「わぁっ!びっくりしたぁ」


「ぅぇへへへ。なぁなぁちよよん聞いて聞いてー」


「んもぅ、なぁに叶奈ちゃん」


「聞いて驚け!また身長伸びてたぞ!」


 べしっ。


「あだっ!」


 手元にある紙とにらめっこしていた俺は、どやぁと腰に抱きついたままそう言ってくる叶奈ちゃんの頭をチョップで思いっきり叩いてやる。


「ちよよん酷いっ!」


「酷いのはそっちだ!自慢か?自慢なのかー!?」


 こっちは全然伸びてなかったっていうのにぃぃ!


「いふぁふぁふぁふぁ、ひよよんひゃへへー」


「ちよちーちよちー、そこら辺でやめてあげて」


「むぅ……綺月ちゃんがそう言うなら……」


 俺は大人だからな。これくらいでずっと怒ったりはしないんだよ。……あれ?建前と本音が逆だった?


「ちなみにかなちーは身長幾つになってたの?」


「いてててて……叶奈は百四十五センチになってたぞ!」


 うわっ、地味に高いなぁ……


「え!私と一緒だー!ほら見て!」


 えっ。


「おぉ!本当だ!なんか嬉しいぞ!」


「ねー!そういやちよちーは幾つになってたの?」


「あ!それ叶奈も気になるぞ!幾つになってたんだ?」


「ふぇえっ!?」


 やばい!完璧に油断してた!この流れだと確実に俺にお鉢が回ってくるって分かってたのに!えーっと、えーっと、とりあえず……


「言わなきゃ……ダメ?」


「上目遣いしてもダメでーす」


「かわいいけどダメだぞー」


 くそぅ……でも何かまだ打開する手段は……無いよなぁ…………はぁ……えぇい!男だろう覚悟を決めろ!女花宮千代参る!


「……センチ」


「「ん?」」


「百三十八センチ!!」


「あー……」


「えーっと……」


「なんだよぅ!言いたい事があるなら言えよぅ!」


「なんか……ごめんね?」


「だ、大丈夫だぞちよよん!成長期はまだこれからのはずだぞ!」


「謝るなよぅ!励ますなよぅ!それするくらいなら初めから聞くなよーう!」


 そう言って俺は若干涙目になりつつ入学したての頃とはうって変わり、見上げる程になってきた二人の体をぽかぽかとたたくのであった。

 こうして、俺の小学生最後の身体測定はちょっぴり残念な結果で幕を開けたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る