一人の登校、いつもの皆
もう一人で通いだして一学期経ったって言うのに、やっぱり一人で通うのは慣れないなぁ。
いよいよ二学期が始まり、もう数ヶ月経つというのに中学へ進んだ姉二人が居ない事に俺は心の内に寂しさを感じながら、少しくたびれたランドセルを背負って通学していた。
構って貰えているうちは邪魔だーとか思っちゃう時もあったけど、やっぱり構って貰えなくなると寂しいもんだ。まぁ未だに家じゃ抱きつかれてるけど……ん?あれは……
「二人共おはよー。夏休み元気にしてた?」
「わぁっ!んもーびっくりしたー」
「あはははは、ごめんごめん綺月ちゃん」
ついぎゅーっとしたくなっちゃって。なーんて思っちゃうのは、俺も女の子にだいぶ染まってきたからなんだろうなぁ……
後ろからいきなり抱きついた俺に驚き、謝る俺をぽかぽか叩くのは未だ身長が俺より五センチ程低い、以前より大きくなったにも関わらず小動物感の増した綺月ちゃんである。
「あ!ずるいぞちよちー!叶奈もむぎゅうする!」
「「ぬぅおぉ!?」」
背中に確かな存在感のある柔らかいものがむにぃっと当たってぇー!というか!
「叶奈ちゃん重い重い!綺月ちゃん潰れちゃう!」
「かな、ちー……も……むり私、倒れちゃ……」
「わわわわわっ!ごめんよみやみや!」
そう言って謝りながら、ばっと俺達の上からその夏休みを挟んで更に目立ってきた立派な胸部装甲を揺らしつつ退いた元気いっぱいな女の子は叶奈ちゃん。
数年前までは女の子らしさの欠片もなかった彼女だが、去年からどんどんと身長だけでなく色々な所が大きくなり、今では我々の中で一番体が女の子として成長している子である。
ちなみにまだ女の子の日は来ていないとの事だから恐ろしい。
「倒れなかったから許す」
「ははぁー、ありがたき幸せー」
もう五年生だけどやっぱりこっちの関係は変わらないなぁ……こっちは。
「おーい三人共、何してんだー?」
ん?この声は……
「あ、礼二おはよー」
「お、おはよう千代、今日もいい天気だな!」
「私としては雲がもう少し出ててくれると助かるんだけどねー」
「叶奈はこれくらいが一番いいぞ!」
あいっかわらず叶奈ちゃんは元気だなぁ……とまぁ話はこれくらいにしといて……
「綺月ちゃんもこっちおいでー」
「あ、うん!」
こっちとの関係はちょっと変わっちゃったからなぁ。
俺が呼んだ事でようやく慌てたた様子でこちらに走ってくる綺月ちゃんを見て、俺は仕方ないと頭では理解しつつも、そう少し残念に思わずにはいられなかった。
まぁ高学年にもなれば低学年みたいに自分も相手も男だろうが女だろうが楽しければそれで、なんていられる訳もなく……
「綺月ちゃん少し見ない内に少し焼けた?」
「す、少しね」
まぁ、異性が苦手になる子はなっちゃうよねぇ……
「それは良かった。千代も綺月ちゃんみたいに焼ければいいのに」
「うっさい、私は焼けると真っ赤になって痛くなるだけなの」
元々男子相手にはあんまり喋れない子だったけど……今じゃ礼二だからまだこれで住むものの、他の男子相手だと俺か叶奈ちゃんを挟まないと喋れないくらいだもんなぁ……
「将来が不安だ」
「ん?何か言った?」
「んーん、なにもー」
ま、少し変わっちゃったけどそれでも仲は良いんだ。
これからも皆で楽しんでこの生活を過ごして行くさ。
こうして、俺の五年生としての日常が幕を開けたのであった。
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