運動会・午後の部!
「いけー!頑張れー!」
そこだ!そこでもうひとふんばり!
パァン!
『障害物競走一組目一位は紅組、花宮千保さん』
「やったぁー!」
流石俺の千保お姉ちゃん!やってくれると信じてたよー!
「よかったねちよちー!お姉さん一位だってー!」
「一位取っちゃうなんて……やっぱりちよよんのお姉さん凄いな!」
「うん!」
午後の部に移り観客、応援席共々更に盛り上がり賑やかな歓声が上がる中、大喜びしていた俺は綺月ちゃんと叶奈ちゃんにそう言われ元気よく頷くのだった。
『以上、障害物競走でした。続きましてはプログラムナンバー二十五番、借り物競走です』
叶奈ちゃん達と盛り上がってる内に障害物競走終わっちゃってた……というか次は借り物競走か。前世でやった事ないのもあるけど、すごい楽しみにしてたんだよな。
「ちよちー借り物競走だって!」
「応援しなくていいのかちよよん!」
「応援?」
なんかあったっけ?
「あー、やっぱりちよよん忘れてたかー」
「れーくん借り物競走の走者だよ?応援しなくていいの?」
「あっ」
かんっぺきに忘れてた……そういや一昨日礼二がなんかそうな事言ってたな……いくらあの時練習で疲れて眠かったとは言え、最近雑な扱いしてたし……
「仕方ない、たまには純粋に応援してやるか。えーっと礼二は……」
走者なら多分もう並んでるはずー……っといたいた。
「礼二ー!がーんーばーれー!」
叶奈ちゃんと綺月ちゃんにそう言われ、最近礼二にあまり優しくしてあげれてない事に気付いた俺はそう考えつつ、礼二を大声で応援してあげる。
すると耳聰く俺の応援を聞いたのか、ピストルの音と共にスタートした礼二は驚く程の速度でお題の紙がある机まで走ると一枚紙を選び、真っ直ぐこちらへと走ってくる。
お、走って来てる走って来てる。何を借りに来たのかなぁー?
「千代ちゃん!来て!」
「え?お、俺!?あ、いや私っ!?」
「うん!早く!」
や、やべぇ!どうせ借りられる物もないからって完全に油断してた!
「え、えと!その!」
「なにやってんだちよよん!はやく行けー!」
「ちよちー走れ走れー!」
「わっ!わわわわっ!」
こける!こけちゃう!
「大丈夫?」
「う、うん」
おぉ……体勢のせいで礼二を見上げてるからかもしれないけど、なんだか礼二がカッコ良く見える。このままよくある展開だと恋に落ちたり……って何考えてんだ俺!
「よし、それじゃあ走るからね!」
「う、うん!」
とにかく、今は走らないと!こういうのの定番だと紙には好きな人ーとか書いてあるって相場が決まってるもんだけど……ってんもー!さっきからどうした俺ェ!
高い所で一つに結んだ髪を揺らしつつ礼二に手を引かれながら俺がそんな事を考えていると、無事一番にゴールへ辿り着いた礼二が先生へと紙を渡す。
別の意味でもドキドキしながら礼二に手を握られたまま俺が先生の持つ紙を確認するとそこには──────
「いやー、千代ちゃんと仲良しでよかったよー。まさかお題が「有名人」だったなんて」
確かに……確かに俺はこの街で知らない人は居ない花宮家の末娘だし、知らない人は居ないということは有名人に違いはないけれど…………
「……」
「千代ちゃん?」
「───っ!もう!礼二のばかっ!」
「いでっ!ちょっ、千代ちゃん!?なんでつねったの!?」
「知らない!礼二のばーかっ!」
そうじゃないだろそうじゃ!全くもう!
「えっ?えっ?」
ぷんぷんと頬を膨らましながら、きょとんとした顔で黙っていた俺を心配してきた礼二の二の腕をつねり、俺は観客席へと戻って行くのであった。
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