運動会・午前の部!

『────────に、正々堂々競技を行い、全力を尽くす事を誓います。紅組代表、花宮千胡』


『白組代表、猪口和樹』


 パチパチパチパチパチ……


 うむ、流石我らが千胡お姉ちゃん、まさに紅組を代表するにふさわしい完璧な選手宣誓だったな。普段の家事とかのポンコツさが嘘のようだ。


『花宮千胡さん、猪口和樹さん、ありがとうございました。これにて開会式を終了致します。選手の皆さんは、退場してください』


 見事な秋晴れの空の元、見事という程綺麗に選手宣誓を決めた団長達に割れんばかりの拍手が送られる中、そんな事を考えていた俺は笛の合図と共に退場門へとかけていく。


「千代ちゃん、嬉しそうだね」


「ふふっ、まぁね」


 なんてったって俺の自慢の姉ですから!


「さぁて、それじゃあ今日はがんばるぞー!」


 こうして、待ちに待った運動会の幕は開かれたのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


「お!千代!」


「千代やーい!」


「父様ー!お爺ちゃーん!」


 大きく手を振って俺を呼ぶ父様とお爺ちゃんを見つけ、ぱぁっと笑顔を浮かべ猛ダッシュで近づき飛びついた相変わらずのブルマ姿に紅白帽の俺を、父様は抱き上げてくれる。


「ねぇねぇ!見た!?見てくれた!?私の百メートル走!一位だったよ!」


 この体にしては全力で頑張ったんだ!褒めて褒めてー!


「見てたぞ千代ー!凄かった!」


「あぁ!他の子も早かった中でよく頑張った!ほら、よしよししてあげるからお爺ちゃんの方にもおいで」


 よしよしですと!?


「とう!」


「うおぉっ!ははっ、千代も重くなったなぁ」


「いひひひひ」


「こらこら、危ないからもう飛び移ったりするんじゃないぞ千代」


「はーい」


 ついテンション上がりに上がって年相応に甘えてしまった。後悔はしていない。というか久しく忘れてたけど、やっぱ運動会ってなんかテンション上がるんだよなぁ。


『では次の項目に移る前にお昼休憩です。しっかり水分と食事を取り、午後の部も頑張って行きましょう』


 父様やお爺ちゃんにぎゅうっと引っ付いて満足気な表情を浮かべていた俺は、その放送を耳にした事で丁度自分の競技の後がお昼休憩である事を思い出す。


「そういやもうお昼休憩だったか……それじゃあ丁度いいし千代、父さん、取っておいた場所に戻ってお弁当でも食べようか」


「わーい!お弁当ー!」


 運動会のお弁当はとびっきり豪華だからね!唐揚げとか入ってたりしないかな〜♪


「ウキウキじゃのう千代」


「うん!お弁当楽しみ〜♪」


「そうかそうか、それなら早く行かねば、なっ!」


「うぉおっ!?」


 はやっ、はやぁっ!?お爺ちゃん脚はっや!


「父様また張り切っちゃって……本当に千代が大好きだな。んじゃ、俺は千胡と千保を拾ってきてあげるとしますかね」


 俺を肩車し爆速で走るお爺ちゃんの背中を呆れ半分で見つめながら見送った父様はそう言うと、団席付近にいるであろう姉達を迎えに行くのだった。

 しかしこの時の父様はまだ知らなかったのだ、この学校の運動会は午後からが本番だということを……

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