とある時代の身体測定
くきゅるるるるる
ん?この音は……
「……さては貴様ら、朝ご飯を抜いてきたな!」
「「ぎくぅ!」」
移動中可愛らしい音を耳ざとく聞き取った俺がずびしと指を指しながら二人にそう言うと、二人は俺の期待したとおりのリアクションを取ってくれる。
「いかんぞ貴様ら、小学生なんだから朝昼晩ちゃんとバランス良く食べないと。背も伸びないよ?後お胸も」
なんか前世のどこかでそんなの読んだ気がする。
「き、今日だけ、今日だけだから大丈夫だぞ。ちよよん」
「そ、そうだよー。それに、やっぱり体重……気になるじゃん?」
うーむ、流石女子。こんな幼い時から既に体重と戦っていたか。正直まだ25キロあるかないか位の歳なんだし、気にしない方がいいと思うんだけどなぁ。
「というか、一食抜かしたくらいじゃ変わんないでしょ。ほら、さっさと済ませちゃお」
「「はーい」」
俺がそう言うと渋々と言った様子で綺月ちゃんと叶奈ちゃんも覚悟を決め、大人しく体重測定の列に並ぶのだった。
そう、今日は一年に三度の女子男子共にドキドキの日、身体測定の日なのである。
「はぁう〜」
「おかえりー、綺月ちゃんはどうだった?」
「26キロー、やっぱりちょっと太ってたー」
小学生、それも低学年の内は35キロ行かなきゃいいくらいな気がするけどなぁ。でも落ち込む綺月ちゃん、可愛い。
「はーい次、花宮さーん」
「はーい。行ってくるね」
「ん、行ってらっしゃーい」
「ちよよん!信じてるからな!」
なんだい叶奈ちゃん?その信じてるって言うのは俺も25キロオーバー組って事か?
「はーい、乗ったらじっとしててねー」
「はーい」
ギシッと学校の少し古い機材特有の軋む音を上げながら、俺は体重計に乗り、少しの間じっと耐える。
にしても、お姉ちゃん達で知ってて、自分自身去年一年間体育の授業で着てたけど……やっぱりこの体育服、色々とやばいよなぁ。
存在だけは知ってたけど本当に実在した上に、まさか俺自身が着ることになるとは……そうこの────
「はい、花宮さんは23キロねー」
「ありがとうございましたー」
「あ、花宮さん」
「はい?」
「パンツ少しはみ出しちゃってるよ」
「……ほわっ!あっ、ありがとうございます!」
ひー!恥ずかしかったー!もーこれだから嫌なんだよ「ブルマ」!
小体重を測ってくれた先生に小声でそう教えて貰った俺は、耳を赤くしながら体重計から降りる時にちょちょっと治して元の場所へと戻る。
「恥ずかしかったー」
「みんなの前で体重計られるの恥ずかしいよねー」
んー、まぁそういう意味じゃないけどそういう事にしておこう。
「それで、ちよよん体重幾つだった?」
「23キロだったよー」
「「いーなー!」」
「ふふふ、これも日頃の鍛錬の成果なのだよ」
そう、相変わらず意地悪な兄から逃げ回るという鍛錬のな!後お姉ちゃん達のむぎゅうからも!
どやぁと言わんばかりに胸を張り、羨ましそうにこちらを見る二人に俺はそう言うのだった。
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