刈り取る形をしているだろう?

 ガタガタガタガタガタガタ……


「とーさまー!皆のお茶持ってきたよー!」


「おっ!茶を持ってきてくれたとよ!でもありゃあ一恵ちゃんとこの末娘ちゃんじゃねぇか?」


「おぉ!千代ちゃんまだみっつだろう?お使い出来るなんて偉いじゃないか。浩さんいい娘を持ったなぁ」


「はい、もう本当にいい娘を……でも手がかからない子なのは親としては嬉しいのか、もっと手を焼かせて欲しいのか……」


「はっはっはっ!親としては難しい所だよなぁ。とりあえずせっかく持ってきてくれたんだ、皆!ちょいと休憩するぞ!」


「「「「「おう!」」」」」


「「「「「はーい」」」」」


 ーーーーーーーーーー


「千代ちゃーん、おじちゃんにもお茶おくれー」


「はーい!」


 ひー!一リットルくらいありそうだったお茶がもう半分に!


「おーい、こっちにも頼むよ千代ちゃん」


「はいはーい!」


 ちゃぷちゃぷと音が立つ程いっぱいいっぱいにお茶の入ったヤカンを抱え、俺はぽてぽてと服の裾を揺らしてお茶を一生懸命おじちゃん達のコップへと注いで回っていた。


「つ、つかれたぁー……」


「お疲れ千代、でもそこに寝転ぶとお洋服が汚れちゃうよ」


「はーい」


 でも正直立ってるのすらきついし……そうだっ!


「父様のお膝のうえー」


「も、今はダメだぞ千代ー」


「えー」


 父様の膝に座ろうとしてひょいっと脇を持たれた俺は、足をぷらーんとさせながら不服そうな声をあげて父様に抗議する。


「なんでダメなのー?」


「今父様は稲刈りで出た藁とかのゴミまみれだから、もし座ったら千代のお洋服にもゴミが着いちゃってお尻がチクチクするぞー」


 うげっ、それは嫌だ。でもそんな言うほどチクチクするのか?父様達は平気そうだけど……


「でも父様、お兄ちゃん達藁だらけになって遊んでるけど平気そうだよ?」


「あれはな?若かりし頃の誤ちと言うやつだ。今は夢中になってるから気付かないけど、後で死ぬほど全身ヂガヂガして痒くなるから。真似しちゃダメだぞ?」


「はーい」


 まぁ子供だしそんなもんだよな。かという俺もちょっと、いやかなり遊んでみたいが。

 特にあの鎌を持って「稲を刈り取る形をしてるだろう?」って言ってみたい。


「それにお洋服汚したら一恵さん、母様が怖いぞー?」


「うげっ、それはやだー」


 前に姉妹揃って母様に怒られた時の事を思い出し、俺は心から嫌だといった顔で父様に返事をする。

 母様は俺のお兄には基本何も言わないが、正直俺達姉妹三人には厳しい、父様曰く母様のお父さん、つまりはもう一人のお爺ちゃんがそういった男尊女卑な人だったからだそうだ。


 やっぱりまだこの時代が男尊女卑の風潮が強いからなんだろうけど、もう少し母様は優しくてもいいと思うんだけどなぁ……さてと。


「私そろそろ帰るー」


「お?帰るのか?もう少し居てもいいんだぞ?」


「母様に「早く戻りなさい」って言われてるからー」


「おっとそうだったか。それなら早く戻らないとね」


「うんー。それじゃあ父様におじちゃんおばちゃん達頑張ってねー!」


「「「「「はーい」」」」」


 元気な声でおじちゃん達にそういい手をブンブンと振りながら、俺は再び動き出した稲刈り機の音を聞きつつ元来た道を歩いて帰るのだった。

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