親の井戸端、子の約束
「やーねぇー本当、最近は物騒な事で」
「ねー、商品泥棒だなんて。お互い主人が店を営んでますし気をつけましょ」
「ねー」
おーおー、奥様同士盛り上がってる事で。まぁアイスクリーム1つで大人しくさせられてる俺達も俺達だが。
「アイスクリームおいしーね。千代ちゃん」
「ねー。あ、礼二礼二」
「千代ちゃんなぁにー?」
「私の1口あげるから礼二の1口ちょーだい」
「いいよー」
ジワジワジワとセミも本格的に鳴きだし、あちこちで風鈴のチリンチリンという音が聞こえるようになりいよいよ夏本番となった頃、俺はというと────
ん〜!やっぱりバニラもいいけどチョコも美味しいよね!
「おーいーしーいー!ねぇねぇ!もう一口いい?私のももう一口あげるから!」
「う、うん。はいどーぞ」
「ありがとー!」
持つべき物はやはり友よ!
「千代、そんなに礼二君のをねだらないの。それに足パタパタしない、パンツ見えちゃうでしょ」
麦わら帽に白のワンピースという、見事なまでに夏の幼女の格好に変わった俺は、礼二と共に他愛もない世間話に花を咲かせる母様達の横でアイスを分け合っていた。
「それにしても、礼二に千代ちゃんみたいな可愛いお友達が出来てよかったわ」
「うちも礼二君みたいな優しい子が千代の友達になってくれて嬉しいわ」
それだけは本当に、結局春のお祭りの時はお姉ちゃん達と話してて女の子の友達は出来なかったからね、尚更礼二が友達でよかったよ。
「私も礼二好きだよ〜♪」
「わわわっ!千代ちゃんおもーい!」
「こら礼二、女の子に重いだなんて言っちゃダメよ」
「千代もほら、好きだからっていきなり抱きついたりしたらダメでしょ」
「「はーい」」
アイス一つで釣られた母様と一緒の買い物帰りの最中、相変わらず仲のいい礼二と俺がそんな風にきゃっきゃと戯れながら帰っていると、母様がふと何かを思い出して話し始める。
「そうそう優美さん、来週お盆前に夏の夜祭りあるじゃない?」
「あらもうそんな時期!早いもんですねぇ」
そういやそんなお祭りがあるんだっけか、この街はお祭り大好きだなぁ……
「ですね〜。それで祭りの時に上の子達は浩さんが見てくれるので、良ければ当日礼二くんも千代と一緒にお祭り回って貰えないかなと思いまして」
「あら!丁度うちも礼二と一緒に千代ちゃんもどうかって考えてたんですよー!千代ちゃん、礼二も一緒にお祭り行っていい?」
おぉ!それはありがたい!母様と俺だけで行くのも悪くは無いんだけど、礼二がいた方が色々と楽しめるからね!
「うん!もちろんだよ!」
「あらそう!よかったわね礼二ー」
「う、うん!千代ちゃん、お祭り一緒にいこーね、約束」
「はい!約束っ!」
まだ暑い暑い夏の昼下がり、にこにこと俺達は笑い合いながら無邪気にそんな約束を結んだのだった。
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