親の居ぬ間に探検
春祭りから少し経ち、とうとう1番上の姉と兄が小学校へと通い出して暫く経った頃、未だに家を出る際は基本親同伴の俺は──────────
「あーもう、また引っかかったー」
これだからやっぱりスカートは嫌なんだよ、すーぐ引っかかる。でもこれしか動き易い外で着れる服ないんだよなぁ。でもまぁ──────
「だ、大丈夫?お洋服破れてない?」
「大丈夫!それにここまで来たんだ!今更引き下がれないよ!」
俺は少し興奮気味にそう言うと、少し弱気な所が可愛い幼馴染である礼二に手を引っ張ってもらい生垣からずぼっと引き抜かれる。
そう、元男だった俺は大人しい人形やごっこ遊びが好きな可愛い女の子になどなる訳はなく、親に隠れて遊び回るやんちゃなお転婆娘になっていたのだった。
「やっぱりだめだよ千代ちゃん、おかあさんに怒られちゃうよ」
「礼二ぃー、もしかして怖いの?」
「うっ……だっ、だって……勝手に1人でお外に出たらだめって……」
「だから行ってきますって書き置きしたじゃん。それに私も居るから1人じゃないし、大丈夫だよ」
まぁ一応行く所は表通りの中でも人通りがある大通りだけだし、大人の目もある所だから多分大丈夫だろう。もし母様に見つかったら?
……その時はダンボールでも被ってやり過ごそう。
「で、でもぉ……」
「ほーら!グズグズ言わない!あんまり弱気だと女の子にも好かれないよ!」
「ふぇっ!?そ、それは千代ちゃんも……?」
え、なに、礼二って俺に気があるのか?いやいや、んなまさか……というか仮にそうだとしても礼二には申し訳ないが、俺にはそういう男との恋愛事は無理だ。
「私はそんな事ないよ?お姉ちゃんが言ってただけだから」
なんせ中身はノーマルな男だからな、ちょっと遠慮願いたい。
「そ、そうなんだ……よかった。それで千代ちゃん、どこに行くの?」
「街をお散歩してみようかなぁって思ってさ、ほら母様と一緒に出てもお店とお家の間だけしか行けないじゃない?」
「うん」
「だから行った事がない場所に行ってみよっ!」
「で、でも危ない場所はやだよ?」
「そこは大人の人が多い大きい道だけしか行かないから安心して!」
「千代ちゃんがそう言うなら……いこ!」
お、やっと乗り気になったな?
「ふふふっ、ちゃんと私に着いてくるんだよ?勝手にどっかに行って迷子になっても知らないんだから」
「ち、千代ちゃんこそ、僕から離れて泣いたって知らないからね!」
「そんな事ないから安心せい」
俺はそう言うと礼二と繋いでいる手をきゅっと強く握り、短い足で2人仲良く走って行ったのだった。
その後、夕方頃に汚れに汚れた俺達が家を出た時と同じように生垣を通って帰って来た所で、待ち構えていた俺と礼二の母様にお説教されたのは言うまでもあるまい。
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