お姫様な春祭り

「はーいもう目を開けて大丈夫よー」


「ん…………おぉー」


 確かになんかいつもと少し違う気がする、これが化粧の力ってやつなのか。


「綺麗に出来たわ、それじゃあ私は次の子の整えて来るからね」


「はい!おばさんありがとう!」


 さて、それじゃあとりあえず────


「あ!千代終わったんだ!かわいいー!」


「おうっ!?」


「うんうん!すっごいかわいいよ千代!」


「そうかな?ふふふ、ありがと!お姉ちゃん達も可愛いよ!」


 姉達に素直に褒められた俺は思わず顔を綻ばせてから、お祭り用に公民館で更に飾り付けて貰った着物でくるりと回る。


「3人とも、綺麗に着飾って貰えたかしらー……ってあらあら、3人とも本当に仲良しさんですね」


「「むぎゅ〜♪」」


 2人が好いてくれるのは嬉しいけど……ぐるじぃー……あづーい……


「がーざまへるぷー」


「はいはい。2人とも着物が着崩れちゃうし、千代も少し苦しそうだから離れてあげなさい」


「「はーい」」


 ふひぃー……やっと解放された。


「ありがと母様」


「どういたしまして。綺麗ですよ千代、まるでお姫様みたい」


「もー、恥ずかしいよかーさま」


「照れちゃって、でも本当に綺麗だしとっても可愛いわ」


 俺を飾り付けてくれたおばさんと入れ替わりで隣の部屋から出て来た母様はそう言うと、心からそう思っているように頭を優しく撫でてくれる。


「母様あたし達は!?」


「私達も可愛くなった?」


「こらこら飛び跳ねない。二人も千代に負けないくらいとーっても可愛くなってますよ」


「「えへへ〜♪」」


 仲良いなぁこの姉妹、いやまぁ俺の姉達だけどさ。見ていて飽きないくらい可愛くて微笑ましいなぁ……


「さっ、それじゃあ3人とも。ちゃんと大人の人の言うこと聞いて大人しくしてるんですよ?」


「「「はーい」」」


 俺達三姉妹の返事を聞いた母様は満足そうに頷くと、そのまま俺達を置いて部屋を出ていってしまった。

 そしてそのまま俺達姉妹が雑談しながら待つこと十数分、俺達が準備が出来たと大人の人達に連れられていくと──────────


 ーーーーーーーーーー


「「「わぁー!」」」


 街を練り歩く沢山の同年代と思われる女の子達の列の中、他の子達と同じく桜の枝を持って姉達と歩いていた俺は、中央通りに差し掛かった所で姉達と思わず声を上げる。


「すごいねお姉ちゃん!」


「だね!」


「やっぱりきれーい!」


 これは……凄いな…!うん、凄い!


 前から仕込まれていたのではないか、それ程までに綺麗に飾り付けられた中央通りを歩きながら、俺はその景色に心奪われ、ぽてぽてと歩いていた。

 そしてその道中、おばさんの後ろに隠れこちらをじっと礼二が見ていることに気がついた俺は、ニコッと笑顔をうかべ手を振ってやるのだった。

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