子供と大人の違い(生物学)
「はーい晩御飯できましたよー」
晩御飯だー、今日のメニューは何かなー?
「お、できたか。それで一恵さん、今日の晩御飯はなんだい?」
「お吸い物に白米、それと今日はピーマンが手に入りましたので子供達も食べれるよう、ピーマンの肉詰めを」
うむ、いつもの健康的な食事だ。令和に居た頃はジャンクフードばっかりの不健康な生活だったからなぁ……
シャチのぬいぐるみに抱きつくというより乗りながら絵を描いていた俺は、しみじみとそう思いつつ兄姉達の方へ目を向ける。
するとそこには────
でもまぁ自我のある転生者の俺はともかく────
「「「えー!」」」
おーおーおー、嫌がってる嫌がってる。
予想通り凄い嫌そうな顔をしたまま全力で嫌がっている兄姉達がそこには居た。
「ピーマンやだぁ!」
「俺もピーマン嫌い!」
「ピーマンかぁ……」
まぁ小さい子はピーマン嫌いだよなぁ。確か子供の方が味蕾がどうたらこうたらで苦味を強く感じるんだったかな?
「はいはい、わがままいう子は食べなくてもいいですよー……ってあら?千代は平気そうね……と思ったけど、そういや千代はまだピーマン食べた事無かったですね」
言われて見れば確かに、まだこの姿になってからピーマン食べた事ないな。
ぬいぐるみから離れ、しみじみとそんな事を思いながらピーマンの肉詰めを見ていた俺は、母様の問いかけにこくんと頷く。
「お、そうか千代は初ピーマンか」
「にがいよ?」「まずいよ?」「美味しくないよ?」
「出された物はちゃんと食べんか馬鹿者。すまんな遅れて」
「いえいえ、それじゃあ────」
「「「「「「頂きます」」」」」」
さてまずはいつも通りご飯を1口食べて……っと、そしたらお味噌汁でほうと体を温めて〜、最後にメインのおかずをー────
「どうかした?」
「いや、千代がちゃんと食べれるかなぁって」
「どうしてもダメだったらペってしていいからな?」
「お義父さんはまた千代に甘く……でも初めてだし今日くらいは多めにみてあげましょう」
おぉぉ……保護者の皆様の暖かい目線が…………いやまぁとりあえず食べさせてもらおう。まぁ前世は苦い物大好きだったし、美味しく食べ────
「にぎゃっ!」
あむっとピーマンを噛んだ瞬間、口の中にぶわっと拡がった苦味を俺は我慢できず、反射的にピーマンを口の中から落としてしまう。
「あらららら、ほら千代。ホットミルク」
「んきゅ……んきゅ……んきゅ……ぱふぁ!」
前世の記憶にあるピーマンの何倍も苦かったんだが!?
子供の味覚ってここまで苦さを感じ取れたのか……こりゃ、子供がピーマン嫌いなのも頷けるわ。
「大丈夫か千代?思ってたよりも凄い反応してたが……」
「無理ならおじいちゃんが食べてあげるぞ?」
「ううん、大丈夫。もう1回食べてみるね」
「偉いですよ千代」
「千代、無理しちゃダメだよ?」
とうとう姉達にまで心配され始めてしまった……でもまぁ…………
「あー……んむっ」
うーんやっぱりえぐいくらい苦い、出来れば食べたくないけど中身が大人で良かった、苦いけどこれなら耐えられない事はないしね。
「たべれたよ!」
でも耐えたから褒めて貰いたい!だって子供だもーん。
「「「おぉ!」」」
「偉いぞ千代ー!」
「初めてなのに偉いわ千代。じゃあ千代には後でプリンをあげましょう」
「ほんと!?」
ピーマンをゴクリと飲み込み、俺はデザートを貰えると聞いて母様の方へと振り向くと、母様は微笑みを浮かべて俺の頭を撫でてくれる。
「えー!千代だけずるい!」
「ずーるーいー!!」
「ウチらもプリンほしいー!」
「わがまま言うならまずピーマンを残すこと無く食べてから言え、食えないなら諦めろ」
「「「うぅぅー……」」」
悪いな我が兄姉達よ、プリンは俺の物だ。にがっ。
ふふんとドヤ顔を浮かべつつ、俺は落ち込む兄姉達を前にそそくさとご飯を食べてしまうのだった。
その後、ピーマンは食べれなかったがどうしてもプリンが食べたいようで、こちらをじっと見てた姉達に一口ずつプリンを分けてあげたのは母様には内緒だ。
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