この時代と俺の目標
「んく……んく……んく……はうー……」
おしるこの暖かさが体に染み渡る…………アニメでしか見た事無かったけどおしるこ缶が本当に実在していたとは……
「千代、温まったかい?」
「うん、とーさまありがとー」
空いた口からほわーっと白い湯気を上げながら、何とか父様にお弁当を渡した俺はやり切ったとばかりに畳の上に座り、壁にもたれかかっていた。
「寒いのによく頑張ったな。それにしても…………すごい量だな、これ」
「まちのひとがくれたのー」
まさかあんなに貰えるとは思わなかったけどね、最終的には前が見えなかったもん。
「はははっ、千代は人気者だな。お昼ご飯食べた後は父様お昼休みだから、その間に千代は父様と一緒にお家に戻ろうな」
「はーい!」
「よしよし、それじゃあ父様がお昼ご飯食べたりしてる間、お店の中で好きにしてなさい。でも勝手に商品を食べたりしたらダメだよ?」
「うん!わかった!」
いよっしゃい!自由に店の中を見て回れるとはラッキー!裏口から入った事しかなかったから1度どんな店か見てみたかったんだよなー。
俺は飲んでいたお汁粉の缶を持ったまま元気よく父様に返事を返し、そんな事を考えながら父様にお店の裏方から表へと連れて行って貰う。
するとそこには────────
「おぉー……!」
これはすごい!こじんまりとしたお店だと思ってたけど、思ってたよりも広いし、何より品揃えが凄い!
確かに雑貨屋兼駄菓子屋って感じだけど、缶詰めとか干物とかの長持ちする加工食品と、調味料のレパートリーが凄い!
そこらのスーパーより断然凄いぞこれ、なんなら見た事がないのがごろごろある。
「色々あって凄いだろ千代ー?」
「はいっ!うわぁー!すごいっ!すごいすごいすごーいっ!」
思ってたよりも1つのお店として完成していた店内に、店内を見てはしゃぎながら顔をあちらこちらへと向けていた俺は父様に勢い良く返事をする。
「はははっ!他の3人が初めて店に来た時とは大違いだ、千代は商才があるのかもしれんなぁ」
「はわぁ〜!」
「それじゃあ父様はご飯食べてるから、大人しくしてるんだよ?」
「はいっ!」
ガラガラガラガラ………パタン。
「……よし」
父様は裏方の方に戻ったね、さてそれじゃあ改めて店内を見て回るとするか。
「えーせーよーひんにせんざいるい、すぽんじとからっぷみたいなだいどころよーひん、けしょうひんとかかんでんち……」
日用品はほぼオールコンプって所か、大きい所ばかりで細かい所には届かないけど、充分店としてはやって行ける。
それに……
「みたことがないおかしがたくさん……いや、いちぶはみたことあるけど」
うますぎ棒とかロールチョコとか……わっ!輪っか投げチョコまである!
これは〜……キャラ消しかな?んでこっちは……スーパーボール大当り?クジ引いて当てるんだろうけどこんなのもあるのか、すげぇな昭和……
そんな事を考えながらあちらこちらを見ている内に、俺はふとひとつの事を思いついた。
そうだ、この店を俺が継がせて貰おう。
そして前世の大学で学び培った全てを使って、立派にこの店を経営してこの街一番のお店にしよう!そしてこの姿になる前からの俺の夢を叶えるんだ!
「そうときまれば!」
「決まればどうするんだ?」
「ひゃわっ!?と、とおさま!?」
いつの間に!?
「何を企んでたか知らないけどダメだぞ勝手な事したら。さ、帰ろうか千代」
「は、はーい」
冷や汗をかきつつもよいしょっと言って父様に抱っこされた俺は、家へと帰りながら前の体からの、そしてこの体で目指す目標を噛み締め、強い意志をそのゆったりとした少し眠たげな目付きの目に宿したのだった。
そして時は流れ、厚く積もっていた雪は溶けさり────
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