阿呆的衝撃事実

 やぁ皆!元気にしてたかな?元気ならば結構!それで俺の方はどうかと言うと─────


「これでオムツの交換おしまいっと、千代は大人しくて本当に助かるわー……ってあら?泣いてる?」


 やけっぱちだぜベイベー!


「うぅうぅ………うぇうぅぅ…………」


 もはや驚きや絶望などを通り越し、朝も早いこの時間に俺はよく分からないテンションでそんな事を思っていた。

 なぜこのようなことになっているのか、それは遡ること数分前────────


 ーーーーーーーーーー


 すごく、気持ち悪いです。


「んんぅぅぅうぅぅうぅぅぅぅ……」


「あら?この匂いは…………あらあらやっぱり、少し待ってなさいね千代」


 横で縫い物をしていた母さんはそう言うと部屋を出ていき、取り替えようの布オムツを取りにトタトタと歩いて行った。

 そう、きっとすぐに来るだろうと覚悟はしていたが、つまりはそう…………出してしまったのである。


 どう足掻いてもまだ立って歩くことすら出来ない赤ん坊だからね、仕方ないんだけどね、それでも中身がこれだからすっげぇ恥ずかしい!


「はーい持ってきたわよー。さっ、早く替えてすっきりしましょうねー」


 まぁ本当に仕方の無い事だからね、今は恥を忍んで耐えるしか────


「たぁう?」


 無い…………だと………………?


 ーーーーーーーーーー


 そして今に至るというわけである。


 いやまぁね、千代って呼ばれてたのは俺だしね?

 その千代って名前自体も女の子の名前だから、考えなくても自分が女だって気がつくだろって思うじゃん?

 そんな名前なんかに気を回す余裕なんてなかったんだよコンチクショウ!


「よーしよし、千代はいい子いい子、お母さんはいつも貴女と一緒だから安心して、今はゆっくりおやすみなさい」


「たうぅぅぅうぅぅ……」


 オムツを替えられた後、俺は母さんに抱き抱えられてあやされながら、この姿になって今まで自分が女であると気が付かなかった事にセルフツッコミを入れていた。


 ま、まぁまだこの姿になってから2日目なんだ、気を回す余裕が無かったのも含め気が付かなくても仕方ないさ、うん。

 それに今は赤ん坊なんだ、女だからどうこうってことも無いだろうし、それよりも…………この暇過ぎる現状を何とかしないとだな。


「うぅうぅぅぅあぁうぅ〜」


「あら、お母さんと遊びたいの?」


「あうぅ!」


 暇を潰せるだろうから勿論ウェルカムです母様!現実逃避ではないぞ!


「でも今は浩さんの浴衣のほつれを直してるから、もう少しいい子にしてなさいね」


「たぅあぁ〜」


 そういえば縫い物してたか、それなら仕方ないか。さてそれじゃあ俺一人で何かしら暇を潰せるような事でも──────


 母さんが縫い物へと戻るのを見て、俺は仕方ないと言わんばかりにふすーと鼻息を立て、さてどうするかと顔を横へ向けると、そこにはこちらをじーっと見てくる目が2つあった。


「おうっ!?」


 うおぉっ!?びっくりしたぁ……ってなんだ、千保って呼ばれてた子か、あーびっくりした。


「………………」


「………………」


 え、何この子、じーっとこっちみてくるんだけど。なんか怖いんだけど……とか思ってたらベビーベッドの隙間から腕突っ込んできたぞおい!?


「ちよのほっぺさわりたいのにー」


 なんだ、そういう事だったのか。良かった良かった、てっきり幼心の好奇心でとんでもないことして来るのかと。

 よし、せっかくだからこっちから近づいて───くっ!寝返り打つのが……!きつい!ってお?おおー?


 なんとか寝返りを打って千保の方へと近づこうとしていた俺は、いきなりひょいっと持ち上げられ、突如来た浮遊感に目を丸くする。


「ダメですよ千保、千代と遊ぶ時は母様に一言言ってから同じ部屋でって約束でしょう?」


「でもかかさまぬいぬいしてた……」


「ぬいぬいしてる時でもちゃんと言いなさい、いいですね?」


「はい……」


 ありゃ、しゅんとなってしまわれた……くっ!今我が身を自由に動かすことができたのなら、今すぐにでもその頭をなでなでしてさし上げるのに……!


「じゃあ千保、千代のことよろしくね」


「…!はいっ!ちよー、おままごとしてあそぼー!」


 お、元気になった。流石母様、子供の扱いには慣れてらっしゃった。さて、それじゃあ俺はこの子の相手をして暇を潰すとしましょうか!


「たうぁあ!」


 そうして俺は2日目にして早くも順応してきたこの状況の中、勘違いされながらもそうやって過ごしていくのだった。

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