状況整理は食卓で

 前回の俺!


 令和1年産まれの俺「八宮栄紀」はゼミの仲間達との就職祝いの席で酒を飲み家へと帰った!しかし次に目を開けた時、俺は2042年の令和から1960年の昭和の時代へと転生タイムスリップをしていた!

 な…何を言ってるかわかんねぇと思うが、俺もセルフ前回のあらすじするくらいにはわけがわかってない。


 あの後、再び目の覚めた俺は初めて聞く名前が飛び交う食卓の横で、この状況に泣き喚きたい気持ちを男としてのプライドで押さえ込み、そんな事を考えていた。


 よし素数だ、素数を数えて落ち着くんだ………………はい、1回言ってみたかっただけです。一眠りしたら落ち着きました。

 とりあえず現状分かっている事を整理してみて、まず今この状況がどういう事か考えてよう。


 俺はそこまで考えると先程までに得た情報と今視界に広がる情報を元に、今自分がどんな状況なのかを改めて理解しようと頭を回し始める。


 とりあえず今わかっている事をまとめてみよう。

 まず俺が目を覚ましたこの家はやはりと言うべきか、少なくとも令和の時代には珍しくなった木造の、しかも俺の全く知らない家だ。

 そしてこの家には俺を入れて4人の子供とその親が2人、そして顔の怖い爺さんを入れて7人家族が住んでいる事がわかった。

 んで、どうやら俺はその家族の元に産まれた生後数ヶ月の末っ子らしい。

 うむ、完璧だ!我ながら完璧なまとめだ!ってなるかアホウ!何が完璧だ!大穴だらけじゃい!常識的に考えろドアホウ!


 そんな自分で自分にツッコミを入れている俺の心情を表すかのように、こてんとなんとか動かすことが出来る首を動かし目を瞑る。


 というかそもそも目が冷めたら赤ん坊になっているっていう時点でおかしいんだよ!

 しかもさ、そこの壁にかけてあるカレンダーになんかはさ、ご丁寧に1960年昭和35年って書いてあるしさ。転生どころかタイムスリップまでしてるじゃん。

 やったね俺!未来を変えれるよ!いや変えたくねぇ、間違ってもタイムパラドックスなんて起こしたくねぇ。


『さー、バッターここは是非とも打ちたい所だがー……おーっと!打った!打ちました!』


「ねーととさまー、ちほべつのみたーい」


「こら千保、浩さんはお仕事頑張ってきたんですよ。わがまま言っちゃ行けません」


「でも〜」


「我慢なさい」


「まぁまぁ。ほら千保、好きな番組を見ていいよ」


「やったぁ!ととさまありがとー!」


「えー!千保だけずりぃー!俺も面白いの見たいー!」


「やー!ちほがみるのー!」


「ふ、二人ともそんな暴れちゃ……」


「飯くらい落ち着いて食わねぇか阿呆共。おい浩、千保と弘紀を物入れに放り込んでこい」


「まぁまぁ父さん、今日くらい多めに見てやってよ」


「……もう騒ぐんじゃねぇぞ」


「「はい……」」


 お爺さんこえぇぇぇぇ…………


 まだ2歳だろうか、それくらいの歳の千保と呼ばれて居る女の子と、こちらは4歳くらいの歳の弘紀と呼ばれた男の子が強面のお爺さんにそう言われ、一瞬で静かになったのを感じ取り俺はそう思った。


 ーーーーーーーーーー


 カチャカチャカチャカチャ…………


 食器を洗う音ってなんか好きなんだよなぁ…………というかあの味噌汁美味そうだったなぁ………今も味噌のいい匂いがここまでやってきて……あっ。


 きゅころろろろろ…………


 …………腹が減った……1人では飯も食べれないのは恥ずかしいが…………こんななりだし、とりあえずは迷惑をかけないように……できるだけ静かに……………


「むぅあぁぁぁうぅぅぅうぅぅ…………」


「あ、千代が」


「あら、起きちゃったの。お味噌汁の匂いでお腹空いちゃったのでしょうか?」


 おー、流石母様正解でございます。という訳でこのわたくしめにもご飯をお恵み下さい。


 家族揃った夕飯の後、おんぶ紐で皿洗いをしている母さんに背負われていた俺は空腹を感じ、恥を忍びながら少しぐずる事で空腹である事を伝える。


「お乳を上げないといけませんね。とりあえず手を拭いて……」


 そうそう、赤ん坊のご飯と言えばお乳だからね。…………ん?お乳?いやまて!それはダメだろ!

 確かに今俺はこの人の子供で赤ん坊だが!幾らなんでも中身男が人妻の胸にしゃぶりつくっていうのはアウトだ!


「ふまぁうぅぅぅうぅううぅぅ…………」


「ふふふ♪ぐずっちゃって、ちょっと待ってなさいねー」


 違う!そうじゃない!


「母様母様」


「はいはい。何かしら千胡」


「アタシ千代にお乳あげてみたいです!」


 ちょまてぇい!?お姉さん貴女7歳くらいでなんちゅうことを!


「あら本当?それなら……まずはそこの粉ミルクを取ってくれないかしら?」


「はい!」


 ナイスです母様ァ!

 これでいたいけな少女の無垢な体と俺のプライドは守られた。決して、決して俺がDTだからビビってた訳では無い。そう決して。


 ーーーーーーーーーー


「ち〜よ、美味し〜?」


 やべぇ…………ただのミルクなのになんかめっちゃうめぇ……俺今すっげぇ感動してる………………


「沢山飲んで早く大きくなるんだよー?」


「たぁうっ!」


「母様!千代が返事しました!」


「あらあら、良かったわね〜」


 哺乳瓶から口を離して俺は元気に返事をしながら、そんな風に暖かな雰囲気の中で俺はミルクを堪能し終え、満足して眠りへと落ちていったのだった。

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