第六章 エピローグ ~妹の決心~

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 戦いが終わると、Aの妹はすぐさま兄のもとに駆け寄った。

「お兄さま、大丈夫ですか? お怪我はない?」

 Aは妹に答えて言った。

「ああ、助かったよ。祖父に助けられた。妹よ、おまえが祖父をここに連れてきてくれたのか?」

 妹は答えて言った。

「はい、わたくしがおじいさまを連れてきました。これは男の決闘だとか、お兄さまにとって試練だとか、へりくつをこねて嫌がるおじいさまの手を引いて、お兄さまのもとにおじいさまを連れてきたのは、このわたくしです。そうです。わたくしがおじいさまをここに連れてきました」

 Aは言った。

「ああ、そう……。それは、よかった。おかげで命拾いしたよ。しかし、兄さんは、わたしをかばって」

 Aと、妹と祖父、それからマーカスとその部隊の者は、全員目を閉じて、戦死したAの兄に黙とうをささげた。

 魔女の兵の者は、とっくの昔に逃げて、その場にいなかった。Aはマーカスとその部隊に命じて、本隊に合流するよう言った。

 マーカスはAにお辞儀をして、部下を連れて引き上げて行った。こうして、その場には、Aの祖父と孫たちだけがとどまった。

 しばしの沈黙の後、Aの妹が言った。

「お兄さまにお伝えしたいことがありまして。妹の話を聞いていただけないでしょうか」

「いいよ。話してごらん」

 妹はこう話し始めた。

「魔女って、わたくし、生まれて初めて見たのですけれど。ああいう感じなんですね。見た目では、わたくしたちと、大差ないように見受けられます。わたくしはそう思いました。もちろん、わたくしは、あの魔女がどういうことをしたか、知っています。わたくしはそれをネットの掲示板で見ました。魔女って、ふしだらなんですね……。わたくしの二倍ないし三倍と言わず、十倍、百倍、千倍ほどふしだらな人です。わたくしはそう、ネットの掲示板に書かれていることを見て思いました。そして今日、わたくしは、あの魔女である女が、おじいさまの火で、焼かれるのを見ました。お兄さまもご存じのように、わたくしも、あの女と別の意味で、炎上した女ですが、あの魔女である女は、本物の火で焼かれたのです」

 そして、妹はこう続けた。

「お兄さま。わたくしは、いまもなお、お兄さまから絶交された身です。ですが、わたくしは今日、おじいさまに焼かれたあの魔女である女を見て、さとりました。正直に申しますと、わたくしはお兄さまが、なぜあれほどわたしに激怒し、わたくしと絶交なされたのか、あのときは、わかりませんでした。しかし、わたくしは今日、おじいさまに焼かれたあの魔女である女を見て、はっきりさとったのです。わたくしも、ことによると、あの魔女である女のように、魔女の身と化して、おじいさまがあの女になされたように、本物の火でもって、焼かれ、地獄に落とされたかもしれません。そう思うと、わたくしは、これまでの自分をあらためようと、決心できたのです。わたくしは、今日かぎりで、ふしだらな行いをあらためます。わたくしは、自分の未来に思いをはせ、わたくしが妻として、生涯にわたって連れ添うであろう、まだ見ぬ殿方と、その殿方とのあいだにできるであろう、わたくしの子供たちのためを思って、わたくしは、今日かぎりで、ふしだらな行いを慎むと、お兄さまとおじいさまの前で、固く誓います。お兄さま、わたくしの眼を覚まさせてくださいまして、本当に感謝いたします。おじいさまも、本当にありがとうございました」

 祖父はAに言った。

「Aよ、聞いたであろう。妹のことを、ゆるしてあげなさい。そして、絶交なんて子供じみた真似は、今日かぎりにしなさい」

 Aは言った。

「祖父よ、わかりました。あなたのおっしゃるとおりにいたします。妹よ、あなたとの絶交は、たったいま解消しました。あなたはわたしにとって、たった一人の妹です。あなたと死ぬまで縁を切るなどと言ったことを、わたしはあなたに謝罪します。勝手な言い分ですが、あなたさえよければ、どうか、わたしのことをゆるしてください。そして、もとの仲の良いきょうだいに戻りましょう」

「お兄さま、本当に、わたしのことをゆるしてくださいますか?」

「はい。もとのきょうだいに戻りましょう。そうです。あなたは死ぬまでわたしの妹です。あなたはいつだって、わたしのかわいい妹でした。多少、金にがめついところはありますが、それさえ目をつぶれば、わたしたちはきっとうまくやっていけるでしょう」

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