第五章 魔女である女との戦い

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 魔女のサバトの当日。作戦決行の日。

 昼。荒野のはずれにあるA軍団前線基地の作戦司令部では、作戦の最終調整が行われた。

「魔女の兵は、推定で三千名前後と思われます」

「ご苦労。さがってよし」

 報告を聞いて、ユキトはAに言った。

「主よ。敵の数は、われわれの想定より多いです。大丈夫でしょうか……」

「ユキトよ、おまえは自分が立てた策に、もっと自信をもて。三千人前後なら予測の範囲内だ。余の見立てでは、敵の大部分が、おまえの仕掛けた罠にはまり、敗走するだろう。難しいのは、そこから先だ。剣士マーカスよ」

「はっ」

「先ほどそちが言ってきた件だが、余はそちの提案を受け入れよう」

「ありがとうございます」

「なんですか?」

 ユキトが聞いたが、マーカスは、

「戦術上のことです。あなたが感知することではございません」

「なにをおっしゃいます! わたしは作戦本部長として……」

「よさんか。身内で争ってどうする。余計なことでエネルギーを消費するな。いまは目の前の敵を倒すことだけ考えろ」

 Aは女剣士に言った。

「マーカスよ、期待しておるぞ。魔女を討ちとれるかどうかは、おまえの活躍次第なのだからな」

「はっ」

「ユキトよ、おまえはもうあれこれ考えなくてよい。肝心なときに、頭が回らなくなるぞ」

「心得ました、主よ」

「よし。まだ時間があるから、ちょっと休んでおれ。なにかしていないと落ち着かないのなら、あちらでゲームボーイでもしていなさい。ただし、パズルゲームはダメだ。あれは、あれこれ考えて行うゲームだからである。ポケモンかドンキーコングにしなさい」

「わかりました」

「ガルゴンも、筋トレはやめろ。おまえにはわからないのか? いま筋トレしても、すぐに筋肉がつくわけではない。おまえもちょっと休め。なにかしていないと落ち着かないのなら、いまのうちになにか食べておくとよい。長い戦いになるのだからな」

「そういたしましょう。マーカスどのも、どうだ? わたしと行って、なにか召し上がられるか?」

「わたしはけっこうです。どうぞ、お気遣いなく」

「そうか。じゃあ、行くぞ。ヨーゼフ」

「え? わたしは強制ですか?」

「いいから、来い。ヨーゼフ」

「はい。軍団長どの」


 そうこうするうちに、日が暮れて、夜が来た。

 満月が東の空からのぼると、魔女のしもべたちがやってきて、荒野に群れをなし始めた。かれらはサバトの準備を始めた。

 やがて、魔女をとりまく群衆たちも来て、その数は、合計で三千人前後だった。敵兵の数が三千人前後だという予測は、正しかったのである。

 そのころ、A軍団の兵たちは、すでに荒野の各所に展開していた。かれらは、所定の場について、隠れて、警備が手薄になるのを待った。というのは、群衆たちは、おのおの酒や何かを携えて来るので、サバトが始まる頃には、多数の酔っぱらいが出て、あちこちで乱れて、騒然となるからである。

 そのときを待って、A軍団長ガルガンチュアは、兵から百人ほどとって、サバトの群衆にまぎれこませた。群衆が一人、二人と増えて、三千人が三千百人になっても、誰も気づかなかった。

 これで、すべての布石が整った。ユキトの秘密部隊と、女剣士バーカン・マーカス率いる精鋭部隊は、すでに荒野の外れで待機していた。あとは、サバトが始まるのを待つだけであった。

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