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 都内の広告会社の同僚の間で、ひどいあだ名について取り決めがなされていた頃。Aの生みの親で、Aの父親の妻である女は、ついにある決心を固めた。

「よし、わたしは、Aの父と離婚しよう」

 続けて、Aの母親は言った。

「わたしは、Aの父の長男の親権は、彼のもとに残して、Aの親権は、わたしのものにして、Aの父と離婚して、わたしはAと二人で暮らそう。Aの父の長男は、放蕩息子だから」

 さて、Aには妹があって、彼女はAの母親の実の娘であるが、Aの妹はふしだらであった。

 Aの母親は言った。

「Aの妹の親権は、どうしたらよいだろうか?」

 その夜、Aの父親と母親は、Aの妹の親権について話し合った。

 Aの父親は言った。

「よし、わたしはAの妹の親権をもって、あなたと離婚しよう。だが、それには条件がある。あなたは、Aの兄をあなたと一緒に連れて行って、面倒を見なければならない。そうすれば、わたしはあなたと離婚し、あなたは、わたしの財産から半分をとって、あなたの父母の家に帰ることができる。そして、Aの親権は、あなたの望みどおり、あなたに帰属するであろう」

 Aの母親は言った。

「ばかなことをおっしゃいますな! Aの兄は、あなたが引き取って、面倒を見るべきでしょう。それが世のことわりというものです。わたしは、Aの親権をもって、Aだけを連れて、わたしの父母のもとに帰ります!」

 Aの父親は言った。

「ばかなことを言っているのは、あなたのほうだ! あなたは、Aの親権だけをもって、わたしと離婚することはできない。あなたが、Aだけを連れて、あなたの父母のもとに帰るなど、そんな虫のいい話があろうか。あなたは、わたしと離婚するのであれば、Aとともに、Aの兄も引き取って、面倒を見なければならない」


 Aの父親と母親が、Aの兄の親権の帰属をめぐって争っていた頃。Aのふしだらな妹は、彼女がAの兄に貸した金の件で、Aに頼みごとをしていた。

 Aの妹はAの前に跪いて言った。

「ああ、お兄さま! わたしは途方に暮れています。どうか、兄のところに行って、わたしが貸した金を返してくれるよう、兄に頼んでください」

 Aはふしだらな妹に言った。

「妹よ、どうか兄さんに貸した金のことはあきらめてください。わたしが頼んでも、兄さんがあなたに金を返すことはないでしょう。わたしも、兄さんにいくらか金を貸しているのです。何度も返してくれるよう頼みましたが、兄さんは金をわたしに返そうとはしません。わたしはもう、兄さんから金を返してもらうのをあきらめました。あなたも、兄さんに貸した金は、もう返ってこないと思って、どうかあきらめてください」

 Aの妹は泣いて、Aにすがりついた。

「お兄さま、そんなことは言わないでください! どうしてわたしが兄に貸した金をあきらめなければならないのでしょうか。わたしは納得いきません。お兄さま、どうか妹の切なる願いを聞き入れてください。どうか兄のところに行って、わたしが貸した金を返してくれるよう、兄に頼んでください! 金が戻るまでは、わたしはこうして泣き続けるでしょう!」

 Aは妹に言った。

「妹よ、よく聞きなさい。わたしは先ほど、わたしたちが食事をする部屋で、わたしたちの両親が、兄の親権の帰属をめぐって、言い争っているのを聞きました。わたしたちの両親は、もうすぐ離婚するでしょう。そして、わたしの見立てでは、あなたは母の実家に引き取られ、わたしは父のもとに残ることになるでしょう。兄が母の実家に引き取られていくか、それともわたしとともに父のもとにとどまるかは、これからわたしの両親が話し合って決めるでしょう。どちらにしろ、あなたの母は、あなたを連れて、父の財産から半分をとって、母の実家に帰ることになります。あなたが兄に貸した金は、母に頼んで、母から返してもらって下さい。あなたの母は、父の財産から半分をとって、母の実家に帰るのですから」

 妹はAに言った。

「わかりました。わたしは、母に頼んで、わたしが兄に貸した金は、母に肩代わりしてもらうことにします」

 そう言って、妹はAのもとを去った。

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