第84話 決着、ケジメをつけよう
いつも通り、ピッピッと鳴り響く目覚まし時計の音で目を覚ます。
一度はうるさいと目覚まし時計のボタンを押すが、再び甲高い音が鳴り響いて完全に目が覚めた。
昨晩、蒼乃からの電話で予定よりも就寝時間が遅くなったので寝坊しないか心配していたが、なんとか寝坊せずに目覚めることが出来たようだ。
蒼乃からLINEで『起きてますか?』と送られて来ていたので、『今起きた。ありがとう』と返信する。
あ、でも返信しなかったら蒼乃から電話をもらえたのかな……なんて悠長に考えてから、何を言っているんだと首を横に振る。
それからやや急いで身支度を済ませて鏡の前に立った俺は大きく息を吐いてから鏡に映った自分に声をかける。
「ビビるなよ。今日でけじめをつけるんだからな」
俺は今日、蒼乃との仮の関係を終わらせて緑彩先輩と付き合うということを決めていた。
だから、蒼乃に別れを告げた後で緑彩先輩に告白をしに行く予定なのだ。
すでに両思いだと分かっている緑彩先輩に告白するのは容易なことだ。それに告白も3回目ともなれば緊張も殆ど無い。
しかし、蒼乃に別れを告げなければならないということが俺の心を苦しめていた。
蒼乃はこんな状況になってと諦めないと言ってくれた。仮に俺が今日勇気を出して蒼乃に別れを告げたとしても、蒼乃はそれでも諦めないと言って俺のそばにいてくれそうな気がする。
それでも、これまでずっと俺の横にいてくれた蒼乃に別れを告げるのは断腸の思いだった。
贅沢な話だよなぁ。蒼乃みたいなピカイチで可愛い女の子が俺のことを好きだって言ってくれてるのに、俺はその子を選ばずに緑彩先輩と付き合おうってんだから。
去年のクリスマス、緑彩先輩に振られてやさぐれていた状態の俺からは考えられない状況になっている。
思えばあれから、俺のそばにはずっと蒼乃がいた。時にはうるさいと思うこともあったがなんだかんだ言いながらも賑やかで楽しい時間を過ごさせてもらった。
とにもかくにも、俺は今日でけじめをつけるんだ。
そう決意してから家の玄関の扉を開けた。
「おはよ」
「――え? なんでここに?」
俺が家を出た瞬間、扉の前には紅梨が立っていた。
「なんでって言われても、特に理由はないけど」
「いや、いつもわざわざ家まで来ないのに俺の家の前まで来てるんだから何かしら理由はあるだろ」
「しいていうなら気分ってとこかな」
紅梨の返答が曖昧で疑問ではあったが、時間に余裕があるわけでもないのでとりあえず俺は紅梨と一緒に登校することにした。
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