第81話 選択、自主的な行動

 俺が創ったストーリーの結末は俺自身が考えることになった。


 その日の夜、1人で結末を決めきれなかった俺は紫音に電話をしてどうするかを相談していた。


「どうするべきなんだろ。結末は俺に一任されたわけだけど、だからって白太と蒼乃ちゃんが結ばれる展開にするのはあからさますぎるかなぁ」

「決定権は玄人くんにあるんだし好きなようにしていいんじゃない? まぁ私としては蒼乃と白石先輩が結ばれる結末の方がありがたいけど」


 俺と紫音はこれまでも白太と蒼乃ちゃんを応援してきた。


 だから思い入れもあるし、白太と蒼乃ちゃんがこのまま恋愛関係に戻れないのは心苦しい。


 かと言って、緑彩先輩の邪魔をしたいわけでもないので選択に苦しんでいた。


「そうだよなぁ。みんなは俺が決めて良いって言ってたしな」

「そうそう。だから深く考える必要無いと思う。まぁあえて紅梨先輩と結ばれる結末にするってのも面白そうだけど」


 紫音がクスクスと笑いながら冗談で言ったことにも一理ある。


 実際問題紅梨も白太のことが……。


「ああぁぁぁぁ決めきれねぇよこんなの……」

「そう深く考えることないよ。この演劇が誰かの気持ちに影響を与える可能性はあっても、この演劇で結ばれた2人が本当に結ばれるって決まったわけじゃないんだしさ」

「……それもそうだな。深く考えすぎは良くないよな」


 そうだ、そもそも俺がこのストーリーを創ったのは白太と蒼乃ちゃんが仲直りをして、白太に蒼乃ちゃんと言う存在をもう一度考えさせるためだ。


 そう思えば最初から悩むことは無かったのかもしれない。


「――よし、やっぱり最後は白太と蒼乃ちゃんが結ばれる展開にするよ」


 俺は心を決め、最後の結末を紫音に伝えた。


 紫音は俺の好きなようにしたらいいと言ってくれている。その言葉のおかげで大分心が楽になった。


「……いや、やっぱり最後に蒼乃と白石先輩が結ばれるのは違う」

「……は?」


 先ほどまでは俺の意見を尊重するかのような発言をしておきながら、俺が決心した結末に反発する紫音。


「それじゃあ本当に蒼乃と白石先輩が結ばれることはないと思う」

「……というと?」

「そもそも白石先輩と緑川先輩が今両思いだって言うのに、第3者である私たちが横から口を挟むのは違う気がする」

「それはもう今更なような気もするけど」

「仮に演劇で蒼乃と白石先輩が結ばれたからってその2人の気持ちに変化は全くないと思うの。白石先輩は緑彩先輩が好きだって言ってるけど、その気持ちを蒼乃に面と向かって伝えてないうえに、仮の関係は終わらせてないわけでしょ? それなら演技とはいえ、白石先輩が蒼乃に別れの言葉を告げれば自分の中で蒼乃の存在がどう言うものかって嫌でも考えると思う」


 ……紫音の言う通りかもしれないな。


 演技は演技だ。そこに本物の感情は芽生えない。


 それなら、演技の中で白太にはっきりと蒼乃ちゃんに別れを告げさせることで白太の気持ちに変化が現れるかもしれない。


「そうだな。やっぱ最後はあいつら次第だ」


 結末も決まり、心が晴れた俺は紫音におやすみと伝えて電話を切り倒れるように眠りについた。

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