　頂上に到着した俺の目に飛び込んできたのは、先ほど電車の中から見えた街灯や建物の灯りたちが色鮮やかに光り輝く景色。

　電車の中では緑彩先輩に夢中で横目に見る程度だった景色に今は釘付けになっている。

　頂上には俺たち以外人はおらず、俺と緑彩の時間を邪魔する者はいない。

「先輩、着きましたよ」

「そう。それじゃあそろそろ目を開けるわよ」

　緑彩先輩がそう言い放った瞬間、先輩が俺の手を離すことが無性に名残惜しくなる。

「あ、ちょっとこっちに来てください」

　先輩の手を掴み、夜景が一番綺麗に見える場所まで案内する、という程で引っ張った。

「はい、オッケーです。目、開けてください」

　俺の合図に合わせて緑彩先輩はまぶたを持ち上げ、宝石の様に綺麗な瞳が姿を現す。

　うん、やっぱ夜景より緑彩先輩の方がよっぽど綺麗だ。

「すごい……。こんなに綺麗な景色見たことないわ」

　そう発言する緑彩先輩の姿を見た俺は思う。

　今の緑彩先輩は、俺が高校に入学して初めて先輩を目にしたときと同じ気持ちになっているのだと。

　今まで見たとこともない美少女を目の当たりにして、俺の意識は完全にその人に夢中になった。

　入学式の季節に咲き乱れる桜も、緑彩先輩と一緒に映ってしまえば主役は緑彩先輩の方だ。

　緑彩先輩が夜景を見て思っている事を、俺はあなたに初めて出会ったときに思ったんです。

　それ以来、ずっとあなたのことが……。

「ーー俺、緑彩先輩のことが好きです」

瞬間、心地よい風が吹き緑彩先輩の艶やかな髪を揺らした。

　発する気もなかった言葉が無意識に、口から飛び出す。まるで誰かに口を操られているかの様に。

　夜景に照らされる緑彩先輩の姿を見た俺は、蒼乃と付き合っているから、と自制をかけてきた俺の気持ちなど忘れ、正直な思いを口にしていたのだった。

　しかし、その言葉を発した事を疑問に思うことはないし、全く焦ってもいない。

　これが、俺が緑彩先輩に対して抱いている正直な気持ちなのだと。

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