第27話 臆病、隠し事をする腰抜け
「……」
「どーした?」
青木と付き合っていることを言う直前になって、俺の中のチキンな俺が姿を見せる。
逃げるな、言うんだ俺。親友である玄人に隠し事をしたくないだろ。
「あ、青……」
「青……?」
「あお……青……」
「……?」
「……青のりが歯についてる奴みると気になって仕方がないんだよなぁ」
「え、嘘、俺歯に青のりついてる?」
――って俺のバカァァァァァ‼︎
意気地無し、腰抜け、臆病者‼︎
自分が意気地無しなのは知っていたがまさかここまでとは。呆れるを通り越して自分が嫌になる……。
今ここで玄人に俺が青木と付き合っていることを伝えなければ、俺は玄人に隠しごとをしていることになってしまう。
それなのに、俺ときたら本当にもう……。
玄人の歯に青のりがついてるって言うのも、青木って言おうとして、青まで口にしてしまったから他にいい単語はないかと考えて咄嗟に出てきた嘘だ。
玄人は自分の歯に青のりがついていないかどうかを鏡の前で入念に確認しており、俺が言っていたことが嘘だと言うことはすぐにバレてしまう。
「あ、本当だ、青のりついてるわ」
……マジかよ。
確かに、俺が青のりと言う単語を思いついたのは夜食にたこ焼きを食べていたからだ。
だが、まさか本当に玄人の歯に青のりがついているとは思わなかった。
運は俺の味方をしてくれたようだ。
その後、玄人の惚気話なんかを聞かされ、こいつさては惚気話を俺にしたかっただけだなと思ったことで、俺が玄人に青木と付き合っていることを隠していても問題ないなと割り切ることができた。
そして玄人は惚気話をしながら俺を残して1人で眠りについた。
俺も眠りにつこうとするが、玄人のいびきがあまりにすごい。
眠ろうと何度もチャレンジするが、中々眠りにつけない俺は先生にバレないよう、軽く外を散歩しようと部屋を出ることにした。
辺りを見渡し、先生の姿が見えないことを確認してから部屋を出る。
「あれ、どうしたのこんな時間に」
え、もしかして先生⁉︎ 急に後ろから聞こえた声に動揺を隠せない。
ゆっくりと振り返ると、そこには紅梨が立っていた。
「な、なんだ紅梨か」
「緑彩先輩の方が良かった?」
「だから、もう好きじゃないって言ってるだろ」
「ふーん。どこ行くの?」
「俺は寝付きが悪いから散歩に行くだけだよ。紅梨こそ、こんな時間にどこに行くんだ?」
「私も散歩」
「そうか」
……。
あれ、なんだろうこの間は。俺の相槌に対して紅梨からの返答が無い。
修学旅行で男女が2人、たまたま同じタイミングで散歩に行こうとしている。
これってもしかして、紅梨を誘った方がいいのか?
「……一緒に行くか?」
「……うん」
俺の誘いに対していつものクールな様子で返事をしたように見えるが、その返事のトーンが若干高いような気がして、なぜか俺の胸の鼓動は少し早くなった。
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