第28話 進展、悩みの答え

「ほら、昼間は暑くなってきてるとはいえ夜は冷えるだろ」


 そう言って白太は自分が羽織っていた上着を私の肩にそっとかけてくれた。

 ……なにこいつイケメンなのなんなの普段そんなキャラじゃないじゃん。


「……ありがと」


 街灯に照らされている白太がいつもより余計にカッコよく見えてしまい、頬が赤くなって行くのが分かる。


 同じ部屋の女の子との話に馴染めず、散歩にでも行こうかと思い部屋の扉を開けた。

 普段一緒にいるのが白太と玄人だし、緑彩先輩は女の子と言っても先輩だし、少し特殊な人だから普通の女の子との会話は未だに慣れない。


 ただ、この居心地の悪い空間から抜け出して散歩に行くというのは口実で、部屋の扉を開けたら目の前に白太がいないかなぁ、なんて夢のようなことを考えていた。


 白太のことをどう思っているのか、私にとって白太はどんな存在なのか。

 その悩みの答えはもう出ているのかもしれない。


 流石に私が部屋を出るのと同じタイミングで白太が部屋から出てくるわけないだろう、いくらなんだも夢の見過ぎだ。


 そう苦笑しながら部屋の扉を開けた。


 しかしそこには、いるはずがないと思っていた白太がいた。


 ありえない偶然に驚き一瞬硬直したがこれはチャンスだ。


 1人でどこかへ行こうとしている白太の邪魔になるかもしれないと一度は声をかけることを躊躇ったが、勇気を出して声をかけた。

 そして白太と散歩に行くことになって、外に出て上着を肩にかけてもらったところだ。


 白太は昔から自分のことよりも周囲のことを優先するところがある。

 ただ、その優しさに白太本人は気づいておらず、側から見ていると危なっしいと思うこととなんどかあった。


 だが、これまで白太の優しさに幾度となく助けられてきた私はその優しさに触れるたびに胸が躍り、いつのまにか白太を目で追うようになっていた。


 白太に渡された上着は物理的な暖かさと、それとは別の温もりを感じさせてくれる。

 それに、男の子ならではの匂いが私の心を落ち着かせてくれる。気づかれないようにずっと、上着の匂いを嗅いでいる。


 なんで私は今まで自分に嘘をついていたのだろう。こんな簡単なこと、ちょっと考えれば、いや、感覚でわかるはずなのに。

 緑彩先輩に遠慮して自分の気持ちを蔑ろにしてたんだ。


 外は夜風が吹いて肌寒いはずなのに、身体中が芯から末端まで余すとこなく暖かくなっていく。


「白太……」

「どうした?」


 そして私の体が白太に近づいていく。


 そして私は無意識のうちに、白太の背後から肩を持ち、白太に身を寄せてしまっていた。

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