第26話 暴露、予想外の状況
紅梨は足をくじいてしまったが、不幸中の幸いで苦手なジェットコースターに乗らずに済んだ。
玄人は楽しみにしていたジェットコースターに乗れたし、全てが丸く収まり無事に修学旅行1日目を終えることが出来た。
そして俺たちは夕食を済ませ、ホテルの部屋で明日に備えて寝る準備をしている。
俺は2人部屋で、玄人と同じ部屋に宿泊する。
「あのさー、俺、紫音と付き合ってるんだわ」
「――は?」
前触れもなく冷静なトーンで発言した玄人の言葉を理解出来ず、口を開けたまま玄人を見つめる。
しかも今なんて呼んだ? 紫音って呼んだよな? 下の名前で呼んでるのか。
「ちょ、も、もう一回言ってもらってもいい?」
「だから、俺、紫音と付き合ってる」
「……マジ? まだ紫倉が入学して来て2ヶ月しか経ってないけど?」
って何言ってるんだ俺は。出会ったその日に付き合った奴の口から出る言葉じゃないだろ。
それにこの前、青木に同じことを突っ込んだばかりじゃないか。
「マジだよ」
「どっちから告ったの?」
「俺から告った」
「え、全然気づかなかったんだけど。そんな素振りあった?」
「いや、恥ずかしかったし素振りとかも見せないようにしてた」
「俺と玄人の仲で今更恥ずかしいとかある?」
「あるんだよ。白太も彼女が出来たら分かるって」
いや、俺彼女いるけど玄人に彼女がいるって伝えようとしたって別に恥ずかしくなんか……。
確かに恥ずかしいな。
「紫音のどこが好きになったの?」
「まぁぶっちゃけ顔だな」
「……正直だな」
「でも、顔だけが好きって訳じゃないぞ。普段から蒼乃ちゃんの面倒見てるだけあって面倒見が良いし、一緒にいると安心するんだわ」
「そうか。まぁおめでと」
「あざっす。白太には隠しておきたくなかったからさ、恥ずかしかったけど修学旅行中ならテンション上がってるし、丁度良いなと思って」
「そっか。ありがとな。教えてくれて」
玄人は本当に紫倉と付き合ってたんだな……。
それに、紫倉と付き合ってることを俺に隠さずに教えてくれた。
友達として、他人には言いづらいことを俺には教えてくれたと思うと素直に嬉しい。
――あれ、待てよ?
じゃあ俺も青木と付き合ってるってことを玄人に教えないと不公平なんじゃないか?
いや、不公平とかそういう類のものではなくて、友達として、隠しごとはしたくないというか……。
それに、しばらくしてから玄人が俺と青木が付き合っていることを知ったら悲しむのではないだろうか。
玄人に言うべきか、言わぬべきか。
答えは決まってる。
「あのさ、俺……」
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