第16話 体験、新たな問題
「よっ。白太」
「……おはよ」
「なんか元気ないな。どうした?」
通学中に挨拶をしてきた親友の玄人への返事は気のない返事となっていた。
休日の青木とのデートで心身ともに疲弊し、学校が始まる月曜までに回復しなかったのだ。
慣れないことはやるもんじゃないな……。
「土日で色々あってさ。まぁ心配すんな」
緑彩先輩に匹敵するかそれ以上の可愛さの青木とのデートは楽しいものだったが、女の子と初めてまともなデートをした俺は疲れ切っている。
「白太、この前は本当運が良かったよな。なんせ新入生で1番可愛いって噂の青木蒼乃ちゃんにぬいぐるみ越しとは言え抱きつかれたんだから」
「……たしかに運が良かったかもな」
側から見れば羨ましいと思われる状況なのかもしれないが、俺から見れば青木と緑彩先輩が同じ場所にいたのだからそれどころではない。
そんな会話をしていると、青木からLINEが送られて来た。
『白太先輩って何部なんですか? そういえばまだ聞いてなかったなーと思って。今日。部活体験があるんです‼︎』
部活体験、それは新入生が自分が入りたいと思っている部活の体験をする日だ。俺も新入生としての部活体験は緑彩先輩がいるからという理由で文芸部に体験に行った。
……どうしよう。
今俺がここで文芸部と言えば、この前抱きついたぬいぐるみの中身が俺だと分かってしまう可能性があるし、俺が未練を残している緑彩先輩と、とりあえず付き合っている仮の彼女の青木に接点が出来てしまう。
『さぁ、私は何部に所属しているでしょうか‼︎ 正解したあなたには素敵なプレゼントがあります‼︎』
よし、これで体験入部までの時間を乗り切れば……。
そう思った瞬間、LINEの電話のコール音が鳴り響いた。
電話をかけてきたのはもちろん青木、俺は直ぐ電話に出た。
「白太先輩は何部なんですか‼︎」
あーもうダメだ。正直に話すしかない。
いや、でもそれは不味い……。
逃げられないな。正直に教えよう。
「文芸部だよ……」
「分かりました‼︎ じゃあ今日は文芸部に体験にいかせていただきます」
「あ、でも文芸部は……」
俺がなんとか青木を文芸部に体験に来させまいと話をしようとした瞬間に電話は切られた。
電話を切った青木の雰囲気から察するに、青木は自分が抱きついた文芸部のぬいぐるみの中身が俺だとは気付いていない様子。
それは良かったが、今日の放課後、緑彩先輩と青木が相見えると考えると頭が痛い。
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