第8話 目撃、振られた翌日のお話
緑彩先輩に振られた次の日、俺は終業式に出席するため学校に登校していた。
教室ではいつも通り玄人と2人で会話をしている。
「……まぁあれだ。元気出せよ」
「もうちょっと上手い慰めの言葉無かった? あからさまに気まずくされると余計傷つくよ?」
「ご、ごめん」
「……いや、俺の方こそごめん。まだ気持ちの整理がついてなくて」
「そうだよな。そんじゃあ今日はパァーッと飯でも行くか! 奢るぜ!」
「ありがとな。慰め方は下手でも気持ちは十分に伝わってくるよ」
どれだけ控えめに言おうが玄人は馬鹿だ。テストの学年順位は最下位に近い。
それでも妙なところで頭が働いたり、こうして人の気持ちを察して優しくしようと出来るやつだ。
「お、見事に緑川先輩に振られた白太君じゃありませんか」
「よっ! 身の程知らず!」
な、何故だ⁉︎ 何故こいつらは俺が緑彩先輩に告白して振られたことを知っているんだ⁉︎
「昨日たまたま見ちゃったんだよねー。隣の席に座ってたからさ」
そういうことか……。
文芸部のクリスマスパーティーが行われたのは地元のファミレス。
クリスマスパーティーとは言ってもただ一緒にご飯を食べてプレゼント交換をするくらいなのだが、まさか隣の席に同級生が座っていたとは。
そいつらが大声で俺を馬鹿にしたことによってクラス中にその雰囲気が伝播する。
「え、緑川先輩に告白したの? あいつじゃ無理に決まってんじゃん」
「自分の顔よく見てから告白しろよな」
そういう類の罵倒の数々が俺に浴びせられる。
それを聞いた玄人が俺を馬鹿にした奴らに詰め寄る。
「お前らなぁ‼︎」
「だ、大丈夫だから。何にも気にして無いから」
「白太……」
「ありがとな。俺のために怒ってくれて」
「そりゃ怒るよ。別に誰が誰に告白しようがそれはその人の自由だし、失敗したからってその人を馬鹿にするなんておかしな話だろ?」
そう、玄人のこういうところが俺は好きなんだ。
馬鹿だけど他人思いで相手の心の辛さとかを理解できる奴なんだよ。
ただ、俺が緑彩先輩に告白したことが知れ渡ってしまった以上、青木と付き合っているということは誰にも言えない。玄人にも言わない方が賢明だろう。
申し訳ないが、青木には我慢をさせてしまうことになりそうだな……。
緑彩先輩に振られ、これほどまでに罵倒されている男の彼女になる青木のことを考えると、青木と付き合うという判断が正しかったのかどうか心底不安になった。
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