第7話 親友、紫倉紫音

「あんた、最近ずっとニコニコしてるわよね」


 そう私に指摘して来たのは親友の紫倉紫音しくらしのん


 私は紫音の指摘通り、最近ずっとニコニコしている。

 いや、ニコニコというよりもニヤニヤという表現が正しいかもしれない。


「いやー分かる? やっぱ分かっちゃうかー」

「分かりやすすぎよ。この前までは痴漢だのストーカーだのって落ち込んでたのに、急に元気になられても気持ち悪いわ」

「えー気持ち悪いとか酷くない? 私たち親友でしょ?」

「こういう本音を素直に言えるから親友なのよ」


 紫音とは中学校に入学してから3年間ずっと同じクラス。

 中学校に入学してから初めて会話をしたのが紫音だった。

 今みたいに、思ったことを直ぐに口に出すところが好きで私から声をかけた。


「それで、なんでそんなにニコニコしてるの?」

「実はねー。私、彼氏ができました」

「えっ⁉︎ 嘘、彼氏⁉︎」

「うん。彼氏」

「同じ学校の人? 別の学校の人?」

「別の学校だよ。というか、私と紫音が入学する高校の先輩なんだ」


 私の急な告白に驚きを隠せない様子の紫音。


 紫音は親友でもあり、姉のような存在だ。私のことを気にかけてくれるし、何かあれば心配してくれる。

 ストーカー被害に遭っていたときも紫音だけは親身になって私の話を聞いてくれた。

 だから私に彼氏が出来たと聞いて心配してくれているのだろう。


「どんな人なの? 変な人じゃない? 大丈夫? 襲われたりしない?」

「大丈夫だよっ。白太先輩はそんなことするような人じゃないから」

「なんの根拠があるのよ……」

「白太先輩は私に付き纏っていたストーカーを退治してくれたの。追いかけまわされていた私を悪漢から助けだしてくれた白太先輩は王子様なんだ」

「へぇ。見ず知らずのあんたを助けてくれるなんて確かにすごいわね。まああんた可愛いし、それで助けたくなったんじゃない?」

「いや、私の顔とかを見る前に助けてくれたんだよ⁉︎ほんとにすごいよね。というか私、そんなに可愛くないし」

「まぁ高校に入ったら紹介してよ。どんな人が私も気になるし」

「分かった。でも、高校ではあんまり話しかけないように言われてるから、休日にね」


 そういうと、疑問符を浮かべ首を傾げる紫音。


 まあ今の話だけ聞いたら不思議に思うのも無理ないよね……。


「なんで学校では話しかけちゃダメなの?」

「白太先輩、私と付き合った日に別の女の人に告白して振られてるの」

「は? 何それ軽薄男じゃん」

「いや、むしろ誠実なの‼︎ 私が付き合ってくださいってお願いしたら、今振られたばっかりだけどそれでもいいの? ってちゃんと聞いてくれたの」

「うーん。なんか誠実なのか不誠実なのか微妙なところだね」

「えー誠実だよー」

「まあ高校入学に加えて新たな楽しみが出来たわ」 

「でしょ? 楽しみにしといてね‼︎」


 私も白太先輩を紫音に紹介するのが楽しみでならない。早く来ないかなぁ。入学式。

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