アンデッドとイモータル、その違い
※はじめに※
当連載では、第1回で述べたとおり、アンデッドをあくまで「曖昧な存在」として扱っております。
そして当連載は、あくまで私の独断と偏見、主観が入った考察になります。ファンタジーとしての正当性よりも、自分の納得のいく内容を優先しているのでご了承下さい。
今回の考察は
イモータルとは、「生きながら不死のもの」、要は不死身の存在です。仙人などが当てはまります。
キャッチコピーの「八百比丘尼はアンデッドに入りますか?」も「八百比丘尼はイモータルなのでアンデッドではありません」と答えるのが正しいです。
なので、アンデッドとイモータルは本来別のものです。まあ人型の死なない存在という意味では似たようなもんですが。
アンデッドとイモータルは大まかに分けると、
アンデッド
・ゾンビ
・スケルトン
・キョンシー
イモータル
・八百比丘尼
・一部の神
(一部の神、と表記した理由は、神話によっては普通に神が死ぬものもあるので、この表記にしました)
それ以外
・ミイラ
・ヴァンパイア
・仙人
問題はそのアンデッドとイモータルの区別がなかなか曖昧なところです。
言葉尻だけとらえれば本来の
幽霊に至っては死者の肉体が勝手に動いてるとかですらなく、ただの残留思念です。
アンデッドとイモータル、その線引きを大きく崩しているのが主に仙人と吸血鬼です。ミイラはまた異なった事情なので、今は置いておきます。
吸血鬼はなんとなくその複雑さがわかると思うので、先に仙人の方を説明していきましょう。
仙人は主に
天仙(肉体を持ったまま仙人になった)
地仙(天仙になりかけ・名山を徘徊中)
尸解仙(死んで魂魄が抜け出し仙人になった)
……この三つに分けられます。
その中で尸解仙は、
しかし完全に死んでいる、という意味ではアンデッドに近しい存在です。
有名な「封神演義」に出てくる
ヴァンパイアもまた曖昧な存在で、元は説明回で説明したとおりブヨブヨの血の塊だったりしたんですが、いまや種族:ヴァンパイアになりつつあります。
わかりやすく言うとラノベやエロ漫画とかに出てくる「わらわは真祖の血を引く純血の吸血鬼!」とか言ってるロリババアみたいなやつのことです。
他にも菊池秀行の「
こういった種族的なヴァンパイアは、言うなれば生まれついて不死なので、アンデッドと言うよりはイモータルと言った方が正確なのではないでしょうか。
しかし、実際のところ、尸解仙はイモータルであり、ダンピールは半アンデッドとでも言うべき存在になります。
この違いこそ、
ではそのアンデッドとイモータルを分ける線引きとは何か?
例えるなら、「バナナはおやつに入りますか」と聞かれて、「入らない」と答えるための根拠、それが線引きです。
そのアンデッドとイモータルの違いとは何か?
そこをはっきりさせないことには考察にはなりません。「虎が強いのは元々強いから」なんて言って許されるのは前田慶次だけです。
本来なら「死体が動いてる」「死んでも生きている」と言ったところでしょうが、「死体が動いてる」の場合肉体を持たない幽霊がアンデッドから弾かれますし、「死んでも生きている」の場合今度は必ずしも死者ではないヴァンパイアや、グール(※1)が弾かれます。
では「イモータルは本物の不死、死なない」という理由は。これも理由としては一理ありますが、決定的ではありません。
上述している「封神演義」では、イモータルに当てはまる仙人たちが何人も死んでいますし、ギリシャ神話の不死で知られる英雄アキレスは死んでしまったが故にその名が永遠に残りました。
逆に「弱点だらけの怪物」と呼ばれることすらあるヴァンパイアは、逆説的に言えば「弱点以外はほとんど攻撃が通らない」存在です。
でなければ、創作のヴァンパイアハンターたちは弱点だらけの怪物相手にあんなに苦労しません。
幽霊に至っては物理攻撃が通りませんし。ゴーストバスターズは例外(※2)として。
「イモータルは死なない、アンデッドは死ぬ(壊せる)」ということは絶対にありません。
イモータルでも死ぬ時は死にますし、逆にアンデッドはアンデッドだからこそ何度でも再生するものもいます。
英雄アキレスは弱点である踵を射抜かれて死にましたし、逆にファンタジーに出てくるスケルトンを完全に倒すにはスケルトンを操る死霊魔術師を倒すのが重要です。
実際、創作作品ではイモータルが死ぬシーンが描かれたり、逆にアンデッドが何をやっても死なないことで恐怖されるシーンが多くあります。
ここまで書いたらお分かりでしょうが、実のところ、アンデッドとイモータルの線引きはとても曖昧です。
イモータルは必ずしも不死ではありませんし、アンデッドもまた全てが死者というわけではありません。
その中に尸解仙やヴァンパイアのような、線引きを大きく崩す存在がいるのです。
では、そのアンデッドとイモータルを分ける線引きとは何か?
それは、恐怖と畏敬です。
アンデッドも、イモータルも、共に恐れられる存在でありますが、恐怖されるだけのアンデッドとは違い、イモータルは畏敬の念を持って接される存在です。
イモータルになんだか偉そうな存在が多いのもそのためです。
中国の仙人たちやギリシャの英雄はもちろん、八百比丘尼はその名の通り出家した女性です。
畏れ、敬われる存在こそイモータル。
恐れ、怖がられる存在こそアンデッド。
これはミイラが分かりやすいでしょう。
ミイラは元を辿ればファラオの肉体、いわばいずれ復活する時のための体として作られました。
この辺はエジプト神話の、オシリス神の逸話を元にしています。
そのため、ミイラは本来、神聖なるファラオの体であり、畏敬されるべきイモータルでした。
それがツタンカーメンのミイラ発掘を発端とする「王家の呪い」事件(※3)によって一変します。
エジプトのミイラは、人を呪い殺す存在として恐れられるようになり、それを題材とする様々な作品が作られるようになりました。
いわばミイラは、恐怖されるアンデッドになってしまったのです。
以上が、アンデッドとイモータルの違いだと私は考えます。
この考察は本来、もう少しアンデッドについて考察したのちに書く予定でした。
イモータルはイレギュラーな存在ですし。
しかし、諸般の事情によりこちらを先に書かせていただきました。
(※1)一般的にグールはゾンビのそっくりさん的アンデッドですが、有名なクトゥルフ神話のグールは「そういう種族」であり、アンデッドではありません。
(※2)そもそもゴーストバスターズの持つプロトンパックは幽霊を捕獲するための装置であり、捕獲された幽霊はバスターズ本部の格納庫に保管されている。
(※3)ツタンカーメンのミイラ発掘に関わった人物が次々と亡くなったとされる事件。実のところ、一年以内に亡くなったのはカーナヴォン卿だけであり、彼と共に発掘していたハワード・カーター(当時48歳)は64歳で亡くなった。
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