霄の龍

@wellington2

第1話

「ここが…ロ・ゼエアレース会場!!」

周囲の男達に混じろうとしながらも、年相応の興奮を隠しきれずにいる少女ラフィールは、会場に着くや否や真っ先に受付嬢の元へと突っ込んで行った。

「あの!今からでも受付は可能ですか!!」

「え、えぇ…出来ますが」

「じゃあお願いします!」

「畏まりました…ですがエアレース用の飛行機はお持ちで?あと年齢確認を」

「年は15!飛行機はあります!」

「は、はぁ…ではこちらの書類に必要事項をお書き下さい。」

「はい!」

(…不思議な子ねぇ)

受付嬢は最後まで彼女に振り回されっぱなしだった。

「書き終わりました!」

「なっ?!は…はい、確か承りました。ではあちらの待合室でお待ちください。」

「はい!!」

そう言うと彼女は素直に待合室へと向かった。

(あの歳でエアレースなんて…)

そう思いつつ受付嬢は渡された受付用紙に目を通す。

(ディッソー・ラフィール…ディッソー……まさかディッソーってあの!?)

ラフィール、本名ディッソー・ラフィールはウェリン空軍随一のエースパイロットの父と、ロ・ゼエアレース大会10連勝の偉業を持つ母との間に生まれた、正に飛行機の申し子と呼ぶべき神童であり、その才能の片鱗を見せ始めたのは彼女が5歳の時、父が基地へ連れていった日のこと

「よしラフィール!試しにこいつを飛ばしてみろ!」

「えぇ!?パパ、私今まで1度もこの棒持ったことないよ?」

「大丈夫!パパが後ろにいるからな!」

「じゃあやってみる!」

「それでこそ我が娘だ!」

その場の流れで彼女は初めて飛行機を操縦することになった。しかも時速700キロは出る戦闘機。普通は飛ばせるようになるまで最低半年はかかるものだか…

「パパ見て!私空飛んでる!」

「おぉ!凄いじゃないか!!」

「えへへ」

彼女は戦闘機の離陸のみならず、宙返りやスピンなど曲芸飛行までやってのけた。

その日から彼女は飛行機の虜になり、いつしか自分で飛行機を整備出来るまでになっていた……

そして10歳になる年、彼女は両親から飛行機のプレゼントを貰った。飛行機の前後を逆にしたようなプロペラ推進式に水色の塗装、飛行機にして珍しい形だった。

「ありがとう!お父さん、お母さん!」

「大切にするのよ」

「うん!」

「ところで、名前は付けないのか?」

「んん〜〜スランカー!!」

「スランカーか、いい名前じゃないか!!」

それからというもの、彼女は学校から帰ってるく度にスランカーと空を駆け巡っていた。…

「一体どんな人達と空を飛べるのかなぁ」

彼女は期待を胸に、ただよばれるのを待っていた。この先の修羅場など、考えるはずもなかった。

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