第4話 カルデラ道中

 トウとブータはカルデラ屈斜路湖まで歩いていた。二人は自分達がカルデラ屈斜路湖に向かっていることは知らず、マクートを乗せたソリとコンをひたすら追い掛けていた。

 しかしやがて、追っかけていたソリもコンも見失った。辺りは強い吹雪が吹いていて視界がまったく見えていなかった。

「ねぇ、待ってよー‼お兄ちゃん‼」

 ブータは吹雪の影響で遅れを取っていた。トウはブータの呼び掛けに気付いて後ろを振り向き止まった。

 トウはこれ以上先に行くのは危険だと判断し、かまくらを作って吹雪が止むのを待つことにした。二人はかまくらの中に入って寒さを凌いでいた。

「しばらくここで待機だな」

「……お爺ちゃんはいったいどうやって進んだんだろう?」

「お爺ちゃんは不思議な力を持っているからな。もしかしたらそれで進んだんじゃないか?」

 二人はしばらく話していると、時間はあっという間に経ち、吹雪は止んでいた。二人はかまくらから出た。

「ねぇ外を見てみて。外にペンギンが歩いているよ」

 トウはブータに言われるとたくさんのペンギンが列になって歩いている姿を見た。かまくらに長い時間いたため、辺りはオレンジ色となり夕日は沈んでいった。

 辺りは静かだったが突然ブータの腹の音が鳴った。ブータは「あっ!」っと言ってしまった。

「お兄ちゃん、お腹空いたよ」

「食料でも採りにいくか」

「うん」

 二人は冬でも実のなる木を探しに森の方へ移動した。二人は人が通ったことのなく、雪が積もっている所を通った。

「コロッケの木ないね」

「仕方ないさ。食べれそうなものを採ろうよ」

 しばらく歩くと普通の木の実を見つけた。

ブータはアイスガンを利用して実を採った。ある程度採れたら二人はかまくらに戻ることにした。二人が帰る頃には辺りはすっかり暗くなっていた。空には満点の星とオーロラが見えた。

「うわぁ‼」

 二人は空を見上げて美しい景色に感激した。

「キレイだね」

「そうだな」

 トウは過酷な旅の中でふと楽しむことを忘れてしまっていた。

「……なぁ、ブータ楽しいか?」

「えっ、楽しいよ?キャンプしているみたいだし」

「キャンプか……そういえば今年はキャンプ行ってなかったな……」

「僕ね、もっと色んな所に行けたらなって思うんだ。僕もお兄ちゃんも遠くまで行ったことないからさ!」

「……そうだな。俺も行きたいな」

 しばらく見たあと二人はかまくらの中に入った。そして採った実を食べながら話した。

「……今夜はここで泊まりだな」

「うん」

「……あいつ、凄く強かった」

 突然トウはマクートの話をした。

「雷の技を使っていたよ」

「きっとあいつがボスなんだ。雷の技を使って部下を従わせているんだよ」

「どうするの?僕達またあんな強い奴に出くわしても敵わないよ」

「明日になったらまずはコンを探そう。仲間が多いほうがブラックサンタクロースに太刀打ちできる」

「うん!」

 二人は食事を食べてからもしばらく話をしていた。そしてある程度話すと身を寄せあって就寝した。


 次の日の朝日が出た頃、かまくらで二人はぐっすりと眠っていた。その二人のいるかまくらの方に歩いて近付いてくる者がいた。一人の男と一匹のトナカイで、トナカイの方はルドルフであった。ルドルフはトウのソリを引いていた。二人はかまくらの所まで歩いている。

「おい、本当にここにトウとブータがいるのか?」

 ルドルフは一緒に歩く男に言った。

「俺を誰だと思っているんだ?未来の人間だぜ」

「正確には未来から来ているわけではないだろう」

「あそこに二人の反応があるんだ」

ルドルフと話している者は、茶髪に染めて全体の髪を前髪の所によせ集めた髪型をしている。三十代ぐらいの中年の姿をしている。

 ルドルフと男がかまくらの入り口に来ると、トウとブータが寝ているのが見えた。

「起きろー‼何時だと思っているんだぁ‼」

 男がかまくらの中に入って叫んだ。トウとブータは男の声に驚いて起き上がった。二人が目を開けると知らない男が立っていた。

「よお、初めましてだな、俺」

 男はブータに言った。

「だっ、誰だ⁉」

 トウは男に言った。

「俺はブータだ……未来のな」

ブータと名乗る男がそう言うと、ルドルフがかまくらの中に入ってきた。

「あっ、ルドルフ」

 ブータはルドルフに向かって言った。トウのソリはかまくらの近くに止めてあった。

「……私が説明しよう」

「いいよ、俺が言うよ」

 ブータと名乗る男はルドルフに言った。

「お前の言い方だと誤解を招く。こいつはなブータの未来型のクローンだ!」

「ん⁉」

 トウとブータはルドルフに説明されたが理解は出来なかった。

「……クローンって何?」

 ブータはルドルフに言った。

「クローンとは分身のような存在のことだ。こいつはな、ブータの細胞のデータを基に作った未来型のクローンだ!」

「……」

 ルドルフはわかりやすく説明したつもりだったが、それでも二人は理解することが出来なかった。

「……俺さ、クローンはわかるんだけど、その未来型ってのがよくわからないんだけど」

「クローンにも色々あってな。主体を軸にあらゆる部分で活躍することができる」

 ルドルフはトウに言った。

「ふーん」

 トウはよくわからなすぎて興味がなくなってしまった。ルドルフもこれ以上は言っても理解してくれないと思い、多くを語ることを止めてしまった。

「……っと言うわけで、よろしくな!」

 ブータ(未来人)はブータに言った。

「……僕、おじさんのことなんて知らないよ」

「そりゃそうだろうな。俺も主人に会うのは初めてだ。俺はな、お前がピンチの時に登場する」

「おじさんは救いのヒーローなの?」

「まぁ、そんなところだな……俺はな、アナン叔母さんに言われてお前達を助けに来たのよ」

「……僕、将来こんな髪型にはなりたくない」

 ブータはブータ(未来人)の髪型を見て言った。

「おいおい、この髪型はな、俺の職場では流行なんだぜ。あっ、ちなみに俺は普段は美幌の工場で働いている」

「えっ、おじさんの仕事はサンタクロースじゃないの?僕ね、将来はサンタクロースがやりたいんだよ。なんで叔父さんはサンタクロースじゃないの?」

「……まぁ、俺は主人を主体に動いているわけでな……まぁ、こんな話してもわからないか」

「おい、そろそろ本題に入れ!」

 ルドルフはブータ(未来人)に言った。

「おっと、そうだったな……お前達、これからどこに行く予定なんだ?」

「俺達はブラックサンタクロースのマクートを追っているんだ」

「マクートって、今のブラックサンタクロースのリーダーをやっているやつのことか?」「おじさん知ってるの?」

 ブータはブータ(未来人)に言った。

「トントン・マクートがブラックサンタクロースのリーダーになったのはつい最近のことだ。マクートのことについては俺もそれ以上はよくわからない」

「そうなんだ」

「……ただここ最近、美幌ではブラックサンタクロースの動きが妙に活発だった。俺も警戒をして奴等の動きを観察していた。どうやら奴等はカルデラ屈斜路湖に人を入れないようにしているのかもな」

「カルデラ屈斜路湖⁉」

 トウとブータは驚きながら言った。

「なるほど、それだと繁華街にいる人を捕まえていたのも納得いくな。誰にも邪魔されないようにしたかったのかもな」

 ルドルフはブータ(未来人)に言った。

「お爺ちゃんがお父さんにある伝言を残していた。お爺ちゃんはカルデラ屈斜路湖にいる可能性が高いかもしれない」

「いったいマクートはお爺ちゃんとカルデラ屈斜路湖で何をしているの?」

 トウはブータ(未来人)に言った。

「お父さんが言うにはトップスターを探しているらしい」

「トップスター⁉」

 ブータはトップスターという物を知らなかった。

「トップスターって神話に出てくる道具のことだろ?神話だとトップスターを取ると大きくなって悪を倒すとかだよな……」

「……いや、実在する。でも実際に大きくはならない。実在するトップスターと言うのはな、不老不死になれる道具のことなんだよ」

 ブータ(未来人)はトウに言った。

「不老不死⁉」

 トウとブータは驚きながら言った。

「不老不死のいうのはな、一生老いることも病気になったりしない、そして永遠の命が保証されることだ」

 ブータ(未来人)は二人にわかりやすく説明した。

「そっ、そんなことわかってるよ!」

 トウはブータ(未来人)に言った。

「マクートはトップスターを探すのに繁華街の人がいると邪魔なんだろう。それだけ必死なのかもな。だからお爺ちゃんの力を借りたのかもしれない」

「そんなの断ればいいじゃないか」

 トウはブータ(未来人)に言った。

「……恐らくシャクシャクは脅されたんだろう。カルデラに行かないと家族を殺すなどとでも言ったのではないか?」

 ルドルフはトウに言った。

「じゃあお爺ちゃんはまだトップスターを探しているから帰ってこないって言うの?」

 トウはブータ(未来人)に言った。

「たぶんな……」

「……行こうよ、カルデラ屈斜路湖に‼」

 ブータは決意を固めながら言った。

「あぁ、そうだな。このまま黙って何もしないわけには行かないからな」

 トウはブータに言った。

「ふっ、どうやら俺が来た甲斐ががありそうだな」

トウ達はさっそくカルデラ屈斜路湖に行く準備をすることにした。


 四人はかまくらを出てカルデラ屈斜路湖に向かうことにした。

ルドルフはトウのソリを使って三人を乗せて移動した。

「なぁ、もっと簡単に行ける方法があるだろう。なんで飛んで行かないんだ?」

 ブータ(未来人)はルドルフに言った。

「ここまで夜通しで休むことなく活動していたからな。いつでも敵を倒せるように体力を温存させときたいんだ」

「大丈夫?休んだほうがいいんじゃないかな?」

 ブータはルドルフに言った。

「心配ない。カルデラ屈斜路湖までなら移動できる。それに、私にもしものことがあればこいつに頼れ。そのためにこいつを呼んだんだ」

「この俺を頼りにしてくれよ!」

 ブータ(未来人)は言った。

「ねぇ、前から気になってたんだけど、なんでルドルフは喋れるのに他のトナカイは喋れないの?」

「私は特別なのだよ」

「……それってコンの言ってた特別な存在のこと?」

「いや……そう言うわけではない。私はシャクシャクの力のおかげで知性が高くなっているのだ。そういう意味で特別だということだ。コンの言っているものとは少し違う」

「……なんかよくわからないや」

しばらくソリで移動していると、寛大な雪の景色には相応しくないロボットがたくさんいた。

 ロボットはトウ達が進む道に無数にいた。

「……ねぇ、あれってお爺ちゃん?」

 ブータはロボットの身体を見てトウに言った。

「そうみたいだな……。でも何であんなにメカっぽくなっているんだ?……てゆうかなんであんなにいっぱいいるんだ⁉」

「あれはロボ人と言ってロボ型のクローンさ」

 ブータ(未来人)はトウとブータに言った。

 ロボットの正体はシャクシャクのロボットでロボ型のクローンである。シャクシャクと同様に大きさは巨体である。

「ロボ人のクローンは作るのが簡単だから大量に生み出すことが出来るのさ」

「そんなこと悠長に話している場合じゃないぞ‼逃げるから大人しく捕まってろ‼」

 ルドルフはブータ(未来人)に言うと、全力でソリを引いて走って駆け抜けようとした。それを見ていた無数のシャクシャク(ロボ人)は、ソリを追い掛けて来た。しかし歩くスピードは遅くて追い付けなかった。

「排除する」

「お前達を消す」

「始末する」

 シャクシャク(ロボ人)はそれぞれ言うと、口からビームのようなものを出したり、手から大砲を出したりしてソリを攻撃した。

「うわぁ⁉」

 ソリに乗っている三人は衝撃に驚いた。ソリは攻撃されて破損していった。

「大丈夫か⁉」

 ルドルフはソリに乗っている三人に言った。

「なっ、なんとか……」

 トウはルドルフに言った。

「ねぇ、お爺ちゃんでしょ⁉僕達だよ。攻撃しないで‼」

ブータはシャクシャク(ロボ人)に向かって叫んだが話が通じなかった。それからもシャクシャク(ロボ人)は追撃を止めることはなかった。

「どうやらあのロボ型のクローンは話が通じないようだな。性能が低いからコストも大幅に下げられるな」

「そんなこと言っている場合じゃないよ。このロボット達からどうすれば突破できるんだよ‼」

 ブータはブータ(未来人)に言った。

「……まぁ俺に任せな!」

ブータ(未来人)はそう言うと、ソリから雪の技を出してシャクシャク(ロボ人)の大砲が出る部分を凍らせていった。

「おじさんも雪の技が使えるんだ!」

 ブータは自分のクローンの技に驚いた。その後ブータ(未来人)はソリから飛び降りて戦うおうとした。ソリから降りると両手を地面に着け出した。するとシャクシャク(ロボ人)達のいる場所から、不思議なライトが十本出てきた。ライトは地面から出て直線や曲線など自由自在に動いてシャクシャク(ロボ人)を攻撃していった。

「すごい‼」

 トウとブータはブータ(未来人)の技に魅了された。

「えへへ」

「おじさん何でも出来るんだね」

 ブータはブータ(未来人)に言った。

「俺だってただ工場で働いていたわけじゃないぞ」

 ルドルフはソリを止めてブータ(未来人)を乗せようとした。しかし、シャクシャク(ロボ人)はブータ(未来人)によってしばらく動きは止まっていたが、再び動き出した。

「また来るぞ‼」

 ルドルフはのブータ(未来人)に言った。

「ありゃりゃ……全然聞いてないや」

「こうなったら俺も戦うよ‼」

「僕も‼」

 トウとブータもソリから降りた。そして戦闘態勢に入った。全てのシャクシャク(ロボ人)が再び動き出して一斉に襲ってこようとした。

すると突然、シャクシャク(ロボ人)よりも巨体なモンスターがやって来た。モンスターは、前にトウとブータが会ったアイスマンであった。

「あっ‼」

トウとブータはアイスマンのことを思い出した。

「ンガー‼」

 アイスマンは叫ぶとシャクシャク(ロボ人)を次々とパンチで破壊していった。シャクシャク(ロボ人)も負けずとアイスマンに向かって攻撃を放ったが、効かなかった。やがてアイスマンは全てのロボットを破壊した。

「……ありがとう、アイスマン」

 ブータはアイスマンに言った。

「ンガガガガガ‼」

 トウ達は耳を塞いだ。

「大丈夫だったか、おめえら?」

「なっ、なんとかね……」

 トウはアイスマンに言った。

「なっ、何だこのモンスターは⁉」

アイスマンを始めて見たブータ(未来人)は驚いて腰を抜かしてしまった。

「紹介するよ。友達のアイスマンだよ」

 ブータはブータ(未来人)に言った。

「ンガガガガガ、よろしくな。おめえら‼」

 トウ達は再び耳を塞いだ。アイスマンはルドルフとブータ(未来人)に言った。

「なぁ、なんでお爺ちゃんのロボのクローンがたくさんいたんだ?」

「おそらくブラックサンタクロースのマクートの仕業かもな。あいつがシャクシャクの力を利用してカルデラ屈斜路湖に向かう者を排除しようとしたのかもな」

 ルドルフはトウに言った。

「くそー、マクートのやつめ!」

「……まずいかもしれないな。早くシャクシャクを助けに行かないと……二人とも早くソリに乗るんだ」

 ブータ(未来人)はトウとブータに言った。

「アイスマン、本当にありがとう!後は俺達だけで何とかやってみるよ」

 トウはアイスマンに言った。

「おう!気を付けてな」

 そして三人はソリに乗った。アイスマンと別れてルドルフはカルデラ屈斜路湖に再び向かっていった。


 アイスマンはトウ達と別れると、住みかに帰ろうとした。するとトウ達を探してアートとエナンとアナンがやって来た。アート達は城にいた一匹のトナカイを連れてソリでやって来た。トナカイの名前はダンサーである。

 町内会でブラックサンタクロースとクランプスに捕まっていた人達は、アート達のおかげで無事に解放することが出来た。

「随分と時間が掛かっちまったな」

 アートはエナンとアナンに言った。

「だから昨日のうちに敵を早く倒して、向かえばよかったんだ」

 アナンはアートの耳を引っ張りながら言った。

「いてて、仕方ないだろう。敵が建物の中から次々と出てくるんだしよ。それに夜は出歩くと危険だし……」

「あの子達が危険に去らされているのよ!何でわざわざ城に戻っているのよ」

「いや……だってトナカイ達にエサもあげたかったし、それにトナカイとソリも必要だと思って」

「そんなの誰かに頼めばよかったでしょう。動物とソリだって誰かから借りればよかったじゃない」

「じゃあ城に行く前に言ってくれよ。一緒に付いて来たくせに」

「喧嘩しないで」

 エナンはアートとアナンに言った。三人が話していると、アイスマンが自ら近付いてきた。

「なにあれ⁉」

 エナンはアイスマンを見て言った。

「ンガアアァァ‼」

アイスマンは三人を襲おうとした。アイスマンの叫び声にアート達は耳を塞いだ。アートはソリを止めた。

「お前達を食べてやる」

 アイスマンはソリの目の前まで来て言った。

「きゃあ‼」

 エナンとアナンは驚いた。アイスマンは目の前にいるトナカイから食べようとした。

「おいお前、俺達は美味しくないぞ‼」

「えっ、そうなのか⁉」

 アイスマンはアートに言われると動きを止めた。

「あぁ!」

「そうか……ん?……えっ⁉」

 アイスマンは疑問に思った。

「ん、どうした?」

 アートはアイスマンに言った。

「お前、おでが何を言っているのかわかるのか?」

「……わかるが?」

「お前も動物と話せるんだな」

「いや、話せないわよ……そもそもあんたは普通に人語を話しているよ」

 アナンはアイスマンにいった。

「えっ、そうなのか?」

「あまり人と会ったことがなかったのね」

 エナンはアイスマンに言った。

「……お前達もって、動物と話せる人と会ったことがあるの?」

 アナンはアイスマンに言った。

「おう、小さな子どもで名はトウとブータだ」

「トウとブータは私達の子どもよ」

 エナンはアイスマンに言った。

「おぉ、トウとブータの親子さんだったか、ンガガガガガ‼」

 アート達は耳を塞いだ。

「そうなのか、あっ俺はアイスマンって言うんだ。ブータが名付けてくれた」

「別に聞いてねえよ」

 アートはアイスマンに言った。

「ところでお前達、この先を進もうとしているのか?」

「えぇそうよ。カルデラ屈斜路湖にいくのよ」

 アナンはアイスマンに言った。

「この先を行くと自然を破壊したことに怒った動物が襲ってくるかもしれないぞ。トウ達は動物が怒る前に向かったから大丈夫だけどな」

「トナカイと中年のおっさんもいなかったか?」

 アナンはアイスマンに言った。ルドルフとブータ(未来人)のことを言った。

「……いたな。一人変な奴が一緒だった」

「よかった。あいつは無事に合流できたんだ」

「それなら安心ね」

 エナンはアナンに言った。

「ところでブータの未来型クローンとはどういう関係なんだ?」

 アートはアナンに言った。

「ちょっと昔に色々あったのよ……」

「まぁ、何でもいいんだけどな。ところでよ。俺達この先へ行けそうにないけどどうしようか?」

「あとは信じようよ」

「そうね、あの子達ならきっと無事に戻って来るわよ」

 エナンはアートに言った。

「あぁ……ところでこのロボットは何だ?」

 アートは目の前に無数に倒れているシャクシャク(ロボ人)のことを言った。

「おでがやっつけた」

「へぇー、あなた強いのね」

 エナンはアイスマンに言った。

「ンガガガガガ‼」

 アート達は耳を塞いだ。

「もう少しボリュームを下げてくれ!」

 アートはアイスマンに言った。

「そうよ。たまったもんじゃないわ」

 アナンはアイスマンに言った。

「そうか……すまない、直すように努力する」

「……以外に素直なのね」

 エナンはアイスマンに言った。

「ブラックサンタクロースはロボのクローンを作ったのか」

 アートはシャクシャク(ロボ人)の欠片を触りながら言った。

「これってお父さんじゃない!」

 アナンはロボットを見て言った。

「くそー、あいつらめ!」

 アートはムカついた。

「悔しがったってしょうがないじゃない。私達は城に戻りましょう」

「……そうだな。そうするか」

「待って‼」

 エナンはアートとアナンがソリに戻ろうとするのを止めた。

「なんだ?」

 アートはエナンに言った。

「ロボを片付けないと動物達が怒るわよ」

「……そうね。怒って繁華街のほうに向かわれても困るしね。片付けましょう」

「……仕方ないやるか」

「おではもう少しボリュームを下げられるように頑張るよ」

「あぁ、勝手に頑張れ」

 アートはアイスマンに言った。アート達はカルデラ屈斜路湖に進むのを諦めてロボの残骸を片付けることにした。その後アイスマンは声のボリュームを下げれるように懸命に取り組んだ。


 次の日、トウ達を乗せたソリはカルデラ屈斜路湖まで移動をしていた。ルドルフが引くソリは夜通し休まずに移動してた。

 カルデラ屈斜路湖に行くまでには山脈を登り下りしなければならない。ソリは長く続く登り坂をただひたすら登り続けていた。

「はぁ……はぁ……」 

 ルドルフは登り坂にひどく疲弊していた。

「ルドルフ大丈夫?」

 ブータはルドルフに言った。

「はぁ……はぁ……もっ、問題ない」

「そんなわけないだろう。少し休憩するぞ!」

 トウはルドルフに言った。

「しっ、しかし!」

「いいから休憩するぞ」

「見て!あそこに小屋があるよ」

 ブータは小屋を指で指しながら言った。

「よしっ、あそこで休むとしよう」

 トウがそう言うとトウ達は小屋で休憩することにした。小屋はドアがなく座る所があるだけのものである。

「……すまないな」

 ルドルフはトウに言った。

「いいんだよ。もうずっと休まずに移動してくれてたんもんな。さすがに大変だろ」

「正直に言うとそうだ」

「もっと早くに休ませてあげればよかったよ。本当にすまない」

「いや、別にいい。しかし私はもうソリで運ぶことしか役にたてそうにないな」

「トナカイはそれが役目だろ。それ以上なんて別に求めてないよ」

「……ふっ、お前はあまり誰かに好かれないタイプかもな」

「えっ、どういうこと?」

「……いや、別にいい」

 トウとルドルフが話いてる時にブータとブータ(未来人)は話していた。

「……お前の黒子の位置を教えてやるよ」

 そう言うとブータ(未来人)はブータの耳にこっそりと話した。するとブータは体のあちこちを確認した。

「えっ、なんでなんで⁉すごいすごい‼」 

「だろう?これでわかってくれたか?」

「うん。何となくだけど、本当に僕のクローンなんだね」

「はっはっはっ」

 しばらく休憩すると、ルドルフは再び三人を乗せてソリで登り坂を登った。

「本当に大丈夫?」

 ブータはルドルフに言った。

「問題ない。心配かけたな」

――ルドルフはそれだけお爺ちゃんを探すのに必死なのかもな。いざとなれば俺が頑張らないとな

 トウはそう思った。

 すると突然、坂の上の方からゴゴゴと音を立てて雪崩が落ちてきた。

「なにあれ?」

「本当だ。こっちに来るね……」

 ブータはトウに言われると雪崩をただじっと見ていた。

「雪崩だよ。避けろ!」

 ブータ(未来人)はルドルフに言った。

「言われなくても……」

 そう言うとルドルフは雪崩を回避した。するとまたしても雪崩が落ちてきた。ルドルフは再び雪崩を回避した。回避しても回避しても、何度も雪崩が落ちてきた。ルドルフはその雪崩を何度も何度も避けることしか出来なかった。

「どうなってるの⁉」

「きっとブラックサンタクロースの仕業だよ」

 ブータ(未来人)はブータに言った。ブータ(未来人)の予測は正しかった。坂の天辺では、二人のクランプスが爆弾を爆発させて使上から雪崩で落としていた。

「ししし、これで誰もここを登ることは出来ない」

 一人のクランプスがもう一人のクランプスに言った。

「俺達はこれで間違いなく昇格だな。俺は早くあの黒いマントを羽織りたいよ」

「よく勘違いする奴がいるよな。俺達はブラックサンタクロースじゃないって言う奴がいるんだ。クランプスだって一応、子分だしブラックサンタクロースだよな」

「……そうだな。どれ、もう何発かぶちかましてみるか!」

「だな!」

 一方のトウ達は雪崩に苦労していた。

「……何にしてもここを登るしかない。このまま突き進むぞ!」

 ルドルフはソリに乗っている三人に言った。

「まぁ、そうだろうな……仕方ない。トウ、少しだけ手を貸してくれ」

  ブータ(未来人)はトウに言った。

「うっ、うん……でも何を?」

 トウがそう言うと、目の前に回避不能なぐらいの大きな雪崩が落ちてきた。

「うわわわわわ、これは避けられないよ!」

 ブータは驚いていた。

「頼む!」

 ルドルフはブータ(未来人)に言った。

「任せろ!」

 そう言うとブータ(未来人)は、雪の技を使って雪崩を食い止めた。ルドルフは再び登れそうな道を選んで進んでいった。

「さぁ、トウも手伝ってくれ」

「わかった!」

 トウはブータ(未来人)と同じように雪の技を使って雪崩を食い止めた。

「頑張って、二人とも!」

 ブータは応援をした。やがてトウ達を乗せたソリは坂の天辺まで辿り着いた。すると二人のクランプスがいるのを確認できた。

「うわわわわわ!」

 二人のクランプスはトウ達に驚いていた。ルドルフは立ち止まることなくソリを引き、トウとブータ(未来人)は何も言うことなく、二人のクランプスに向かってアイスの技を放った。クランプスはそのままカチコチに凍らされた。

「天辺まで着いたぞ!」

 ルドルフに言われると三人は天辺の周りを確認した。すると一人のクランプスが別の坂の下から登ってきた。

「あっ」

 一人のクランプスは山を登り終えてトウ達に気付くと、逃げようとした。

「待て‼」

 ブータ(未来人)は透かさずソリを降りてクランプスの所まで走った。そして捕まえて、雪の技でつららのような鋭く長い氷を出してクランプスの首もとを狙った。

「ひいいぃぃ!かっ、勘弁してくれ!」

「他の連中はどこに言った」

「えっ⁉」

「他の連中はどこへ行ったと聞いている‼」

 ブータ(未来人)は首にさらに強く刺そうとして脅した。二人のやり取りはトウ達にも聞こえていた。

「……ほっ、他の連中はこの下にある湖にいるよ!」

「湖ね……」

「みっ、見逃してくれ、頼む。おっ、俺はもうあんな連中と関わるのはごめんだ!」

「……御苦労様」

 そう言うとブータ(未来人)は雪の技を放ってクランプスをカチコチに凍らせてしまった。

「次はここを下るということか……」

 そう言いながらブータ(未来人)はソリに戻っていった。

「おじさんひどい人だね」

「ひどいや」

 ブータが言った後にトウもブータ(未来人)に言った。

「えっ、ちょっと待てよ。俺はお前でだな……いや、そうじゃないか。俺は……だって敵だし……逃がしたら攻撃して来ると思ったし……」

 ブータ(未来人)は動揺しながら言った。

「いいから早く乗れ!湖だろ?行くぞ‼」

 ルドルフに言われるとブータ(未来人)は再びソリに乗った。そして、トウ達はソリで山を降っていった。


 緩やかな下りになるとルドルフも気を楽に移動することが出来た。しばらく下っていると、周りの真っ白な平面とは違い、黒が混ざっている地面があった。ルドルフは雪が浅くて土と混ざった場所だと思って、その場所を通って移動した。

 すると突然、ソリの下の地面が膨らみソリが押し上げられた。

「なんだ⁉」

 ソリに乗っているトウは異変に気付いた。

ルドルフは後ろを振り返り、押し上げられているソリを確認した。すると雪の中から六頭のホワイトタイガーが現れた。

「ホワイトタイガーだ‼」

 ブータは驚きながら言った。

 ルドルフはすぐにソリを移動させて逃げようとしたが、ソリの身動きが取れなかった。

「何でホワイトタイガーがここにいるんだよ!」

 トウは慌てながら言った。

「これもブラックサンタクロースの仕業だろ」

ブータ(未来人)が言うと、二頭のホワイトタイガーがソリとルドルフを繋ぐ紐を噛みちぎり、分裂させてしまった。ソリはそのままひっくり返され、乗っていた三人は近くに放り投げ飛ばされてしまった。三頭のホワイトタイガーは投げ飛ばされた者をそれぞれ襲いに向かった。残った三頭のホワイトタイガーは、そのままルドルフの足や首を噛みついた。

「くっ……」

 ルドルフもダメージを負い身動きが取れなくなってしまった。

 一方の投げ飛ばされた三人はホワイトタイガーとやり合っていた。ブータ(未来人)は襲ってきたホワイトタイガーを雪の技を使って凍らせた。そして、ホワイトタイガーから逃げていたブータの所を目掛けて雪の技を放った。するとホワイトタイガーの真下の雪が跳ね上がり、ホワイトタイガーは空中に飛ばしまた。そしてそのまま真下へと転落し、気絶してしまった。

 トウは、雪の技を真下に放って地面をカチコチに凍らせていった。すると襲ってくるホワイトタイガーは、滑ってしまい、そのまま近くの崖の下へと転落してしまった。

 ルドルフは、三頭のホワイトタイガーに噛まれていたが、すぐに降り飛ばしてしまい、鋭い角と蹴りで倒していった。トウ達は六頭のホワイトタイガーを倒してしまった。

「はぁ……はぁ……ルドルフ大丈夫?」

 トウはルドルフに言った。トウとブータとブータ(未来人)はルドルフに近寄った。

「……私は大丈夫だ。先に進もう。もうすぐ湖に着くはずだ」

 ルドルフはソリの中に入っていた予備の紐をソリと自分に結んで、再び坂を下っていった。

 しばらくソリで移動していると、大きな湖の所まで辿り着いた。湖は太陽の光が眩しく照らし、ハクチョウがたくさんいた。


 ルドルフは湖の周りに敵がいないか詮索していた。

「……この辺りは何もない。ブラックサンタクロースはいったいどこへ行ったと言うのだ?」

 ルドルフはブータ(未来人)に言った。

「うーん、ここじゃないのかな……でもクランプスはここだって言ってたよな……」

 ルドルフとブータ(未来人)が話している時、トウとブータはハクチョウに見とれていた。すると、湖の中にいる怪しげな陰がトウ達の所に近付いて来た。

「なんだあれ⁉」

 ブータは陰を指しながら言うと、他の三人も陰を見た。やがて陰は湖の浅い所まで来ると、水中から飛び出して来た。湖の中からはコンが出てきた。

「……コン⁉」

 トウはコンの登場に思わず声に出して言った。

「お前たち、何でここにいるんだ?」

「俺達もお爺ちゃんを助けに来たんだよ」

「コンは何やってたの?」

 ブータはコンに言った。

「私もお爺ちゃんを助けに来た。お爺ちゃんは向こうにある島にいる」

 コンは島のある方角を指しながら言った。島は遠くにあるため目視では確認できなかった。

「……島に行ったの?」

 トウはコンに言った。

「あぁ、だが今の力だと一人ではどうすることも出来ない。人を呼ぼうと考えて一旦戻ることにしたんだ。島にはブラックサンタクロースがたくさんいてな。何でも不老不死になるトップスターを探しているそうだ」

「コン、マクートはトップスターを手にしたのか?」

「いいえルドルフさん、ブラックサンタクロースはまだトップスターを見つけれていません」

「……そうか」

「ブラックサンタクロースは島に自分達の基地を造った。みんなが来てくれて本当に助かるよ」

「よし、その島に行ってお爺ちゃんを救出しよう!」

「でもどうやって行くの?」

 ブータはトウに言った。

「あそこにボートがある。あれで行こう」

トウは複数あるボートを指した。

「……心配するな、私がソリで空を飛んで運んでやろう」

「いえ、ルドルフさんも疲れているようですし休まないと行けません」

「でもどうするの?」

 ブータが言ったあと、コンは両手を前に出して粉雪を出した。大量の粉雪は氷になり、四本足で歩く巨大なドラゴンの形になり動きだした。そしてアイスのドラゴンは鳴き叫んだ。

「……こいつは乗ることも出来るんだ。こいつに乗ってみんな休んでくれ」

「すげぇ‼」

トウとブータはアイスのドラゴンに魅了された。

「私はこんな技だって出来るんだ」

コンは少しだけ天狗になっていた。

「……そうなんだ」

 ブータはコンに言った。

「ところでさっきから一言も喋らないそいつは誰だ?」

コンはブータ(未来人)の方を見て言った。ブータ(未来人)は自分のことだと気付いた。

「……俺か?俺のことは気にするな」

「まぁいい……みんな乗ってくれ、背中に小部屋がある」

アイスのドラゴンは低い姿勢になった。全員は小部屋に入って休むことにした。


 全員がドラゴンの背中の小屋に入ると、ドラゴンは翼で飛んで島まで向かった。

 小屋の中はアイスのドラゴンとは名ばかりで、冷たいわけではなかった。トウのソリに入っていた毛布や枕を使って全員は休んだ。ソリの中ではそれぞれが別々に話していた。

 トウはコンの所に近付いた。コンは立ったまま壁に寄りかかっていた。

「よぉコン」

「何だ?」

「前に俺が特別だとか言ってたよな?」

「あぁ」

「考えたんだけど……俺はなにも特別じゃないと思うんだ」

「いや、お前は特別な存在だ。なんとなくだが私にはわかる。人とは違うオーラを感じるぞ」

「俺はコンの方が特別な存在だと思うんだけど……」

「私も自分が何者なのかわからない。しかし、周りとは何か違う力を持っていることはわかる」

「……」

「推測だが、私に力が使えるようになったのは、トウが雪の技を使えるようになったことが要因なのではないかと思う」

「……俺の雪の技が?」

「あぁ、トウが新しい技を覚えれば私も覚えていけるのだと思う」

「でも俺はあんなさっきみたいな技は使えないぞ」

コン 「……」

 トウはコンがアイスのドラゴンを出したことについて言った。コンは思い詰めた表情をしてしまった。自分の考えに矛盾してしまい口に出せなくなってしまった。

「俺がいったい何だって言うんだ……」

そう言うとトウは元のいた位置に戻って毛布に入って休むことにした。次にコンの所に近付いて来たのはブータだった。

「コンお疲れ」

「あぁ」

「ねぇ、コンは今でもトナカイになりたいの?」

「どうしてそれを聞く?」

「だって今のコンって前のコンと違うじゃん」

「私は私だ。大きくなったからといって、中身が変わったわけではない……だがそうだな、今はそうは思わない。今は私が何者なのか知りたい」

「ふーん」

「そもそもなぜ狐の私がトナカイに憧れなければならないのか?」

「コンはルドルフに憧れているんじゃなかったの?」

「……あの時の私はどうかしてたのかもな。たしかにルドルフさんは尊敬できるがな。もしかすると、トナカイに囲まれて生活していたからかもな。一人だけトナカイじゃなかったから、悔しかったのだろう」

 コンは悲しい表情で言った。

「……そっか」

 ブータはそう言うと、元のいた位置に戻って毛布に入って休むことにした。

コンは壁に寄りかかるのを止めた。そして唯一別室にいるブータ(未来人)の所に向かった。ブータ(未来人)はコンに気付いて動揺し始めた。

「……よっ、よお」

ブータ(未来人)は怯えた表情をしながら言った。

「……お前は未来人だな?」

コンはそう言うと、ブータ(未来人)は驚いた。

「なぜわかった?」

「どことなくブータに似ていたからな」

「クローンの存在のことは知ってたのか?」

「ブラックサンタクロースの基地にクローンに関する本があったんだ」

「なるほどな」

ブータ(未来人)はコンの全体を見た。

「なあ、お前はいったい何があったらそんな大きさになるんだ?」

「お前と私は初対面のはずなのに私の小さい頃のことがわかるのか?」

「まぁ、クローンだからな。向こうの部屋にいるちっこい方のブータの記憶は俺の中にもあるんだ。普通は主人とクローンで記憶を統合出来るんだが、主人の方がクローンの存在に気付いてないと、記憶の統合も出来ないんだ」

「……どうして今まで顔を出さなかったんだ?」

「俺は俺のやりたいように生きていただけだ。別に絶対に主人に従うなんてこともないしな……まぁ、アナン叔母さんにお願いされたら行こうとは考えていたがな」

「ふっ、まぁいい。一つ聞くが、何か私の小さい頃で知っていることはないか?」

「そいつはどう言う意味だ?」

コンはブータ(未来人)に自分の仮説を話した。

「……なるほどね。だが私は主人の記憶しかないからわからないな」

「そうか……」

「雪の技がきっかけね……他の技は何か試してみたのか?」

「他と言うのは?」

「これとかはどうだ?」

ブータ(未来人)はコンに不思議なライトを見せた。右手の二本の指からは別々の色のライトが出て、どちらのライトも直線になったり曲線になったりして自由自在に形を変えていった。

コンは、その不思議なライトの技にとても関心して見ていた。

「……どうだ?何か変わったか?」

 ブータ(未来人)に言われると、コンは自分の体を確認した。

「……いや、特に何も変化はないな。やはりトウでないと駄目だ」

「そうか……」

「でもお前のおかげで確信がついた。感謝する」

「俺がもう少し早くコンに会ってれば雪の技を見せることも出来たのにな」

「いや、恐らくそれもトウじゃないと駄目だ」

「そうなのか?」

「……いや、すまん。やはりわからない。私も少しだけ自信がなくなってきたよ」

「そうか……」

「今の私は、ただトウにプレッシャーになることを言っているだけなのかもしれない……」

コンは悲しい表情をしながら言った。

「雪の技をトウが使えるようになると私は色んな技の感覚を思い出した。もしかすると何か法則性があるというのか?」

「……わからないよ。お前のことだし、そんなに他人は心配するようなことじゃないから余計に考えづらいし」

「そうだな……」

 二人が話していると、アイスのドラゴンは無事に島に到着した。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る