自主企画「短編ミステリの感想を書かせてください４」に参加いただきありがとうございます（遅くなってすみません）。

おもしろいアイディアでした。ごくごく現実的な設定でありながら、主人公の目的とその達成手段に合理性があり納得させられてしまう。

それも株価というものの性質をうまく利用したトリックで――
読者は予言のからくりを想像しながら読むわけですが、ふたつめの予言が強力な迷彩になっていて、これがあるからよっつめの予言も関係者から何かスキャンダルの情報が漏れたんだろうとミスリードされてしまう。
しかし、実はこの予言には何の根拠もないわけです。それでもおそらく現実のものとなってしまう。しかも、それこそが主人公の目的だったとわかる驚きもあり、そこがとても秀逸だと思いました。

配信の台詞をそのまま独白体で表現する前半の演出も効果的で、日常と地続きの事件を一視聴者の気分で体験できました。

ただ欲を言えば、前半部分にもうちょっとプラスアルファの伏線――つまりなくても成立するものの読み返したときあっと言うような伏線があればさらに満足度が高かったと思います。