第1話  悲願達成と翌日の恐怖

「整列   礼!」


両チームは挨拶をすますと、お互いの健闘を称えあった。


「最後のバッグホームは凄かったな。思わず拍手しちまったぜ」

「たまたまですよ。再戦、楽しみにしています。」

「おう! 次は負けないからな!」


向こうではエース同士で何やら話をしているようだ。

「今日はいい試合をさせてもらったよ。優勝おめでとう。」

「こちらからもお礼をさせてくれ。甲子園でまた会おう」

2人は互いを称え合い、ガッチリと握手を交わした。









翌日 クラス内にて


「おめでとう、空」

「現地で見てたぞ。大活躍だったな」

「流石だな」

 翌日、教室に入ると、クラスの男子にもみくちゃにされた。そういえば俺の紹介がまだだったな。

 

 俺は青山空 中学時代には日本代表経験のある外野手だ。父方の祖父がアメリカ人だからなのか、瞳の色が名前と同じく青色なのだ。  そんなことはさておき。

「ありがとう」

と、お礼だけは言っておく。

 その後、こいつらからHRが始まるまで質問攻めに遭うことはいつものことだ。

 ただ、この後には決まって事件(俺にとってだけだが)が起こる。




放課後

HRが終わり、いつも通り部室へ行こうとすると、

「キャー、空様〜」

「一緒に写真撮って〜」

「握手して〜」

俺のファンクラブ(?)の女の子たちが集まってきた。他の人なら笑顔で対応するだろう。しかし、俺はそんなことは不可能なため、部室へ向かって全力疾走で逃走した。

「あ〜、お待ちになってくださいまし〜」



・・・やっぱり女の子と話すなんて無理だ。なんたって俺は、



“女性恐怖症“なのだから。








部室にて


先程の出来事により部室の隅で呆然としていると、3人の部員が俺に近づいてきた。

「また女の子から逃げて来たのか?」

「・・ああ」

「まったく..相変わらずだな。」

「ほんと羨ましいぜ。俺なんか昨日ホームラン打ったのに女の子に声もかけてもらえなかったからな。」と、いつも通りの会話をする。

 

ちなみに、話しかけてきた順番に、俊足のセカンド、風間疾風  フォークボールが武器の右腕、一江竜  チームの4番でファースト、岡田元気。3人とも俺とも同じ1年生だ。

たわいのない話をしていると、坂井監督がやって来られた。




「みんな、お疲れ様」

『『『お疲れ様です!』』』

「昨日は見事な試合だった。春にはセンバツが控えているから、一人一人が課題と向き合って、春に備えるように。」

『『『はい!』』』

「さて、今夜は祝勝会を6時30分から開催する。 岡田、用意はできているか?」

「ええ。楽しみにしておいてください。」

こいつの両親は、焼肉店を経営しているため、今では星嶂学園野球部御用達の店となっている。

「ではそういうことで、解散」






「じゃ、また後で」

「じゃあな」

3人と別れて帰宅の途につく。

と、その前にまだ時間もあるし久しぶりにあそこへ行ってみるか。

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