一扉目 ある日の夕方。

 私の名前は北見麻衣きたみまい。どこにでもいるごく普通のJK。学校帰り、いつも寄るコンビニで、いつも読むファッション雑誌を立ち読みをする。


 私だって、ちょっとはモデルに憧れる。でもスタイルも顔も普通。何もかもが普通。普通すぎて嫌になる。そしていつも買うお菓子を買って店を出る。


 なんで私はこうも普通なのかな。かといって、自分から、何かしらアクションを起こすことは出来ない。引っ込み思案だし。1歩も2歩も踏み出せない。情けない。誰かが背中を押してくれないかな。何て他人任せなんだろ。この性格にもうんざり。


 などと考えながら歩き、しばらく行くと、人通りの少ない道に出た。考え事しながら歩いていたから、いつもと違う道に来てしまった。


 ここはどこかな?周囲をキョロキョロすると、30メートル位先にある、1つの寂れたマンションに目が止まった。屋上には人が立っていた……女性かな?長い髪とスカートが風に揺られヒラヒラしている。今にも落ちそうな状態。


「えっ?ちょっ、飛び降り!?ヤバイヤバイ、どうすれば……」


 警察?消防?通報しなきゃ。……ううん、違う。動画に撮ってSNSにアップすれば有名になれる?普通の私から卒業できるかな。でもそんなことしたら炎上間違いない。炎上どころの騒ぎじゃない。こんな非常識なことすれば、避難され、人格疑われ、メディアに取り上げられ、普通通り越して、人生を卒業してしまう。


 とりあえず携帯を取り出したその時。


「うわっ!!落ちた……」


 瞬間目を閉じた。


 グチャッ!!


 この距離でもその音がよく聞こえた。心臓はバクバク鳴り、足はガクガク震える。恐る恐る目を開け、覗いた。辺りは血が飛び散っている。顔面から落ちたせいで、顔の半分は見るに堪えない姿に……。凝視したまま目が離せない。


 あれは、私と同じ制服……同じ学校の子なのかな……知り合いだったら……。



 えっ!?どういうこと?ちょっと待って、ありえない、そんなこと……。



 私じゃん……。






――――――――――――――――――――

聡、美里サイド


「なぁ美里、これどういうことだと思う?」


「分からないわ。あの光の中に入ったら、ここに出たんだから。それより私たちの姿透けてるよね?」


「だよな、周りの人達は俺達の存在に気づいてないみたいだし。それより、ここは何処だ?あっちょっと待って、声が聞こえる。」


「誰、北見麻衣って?あの子かな?普通のJKって言ってる。うん?これ心の声?」


「近づいてみるか。すいません北見麻衣ですか?……。俺の声が聞こえてないみたい。てか、やっぱ姿も見えてないみたいだな。」


「どんな現象かしら?んーなるほど、モデルに憧れてるのね。確かに見た目は普通よね」


「普通が1番良くないか?見た目だけが取り柄なヤツよりマシじゃね?」


「はあ?私の事言ってんの?あんただって顔だけじゃん。それより見て、道に迷ってるわよ、この子」


「顔だけね……っ!おい美里、マンションの上見ろ!!」


「えっちょ!何?自殺? はぁ?SNSに上げるとかいってるわよ、この子。それより警察、あっ携帯ダメじゃん……」


「携帯以前に俺達の存在が……」


「キャーーツ!落ちた!!……聡、どうなった?」


「…………聡?大丈夫?」


「……あ。あぁごめん。ちょっと固まってた。美里も聞こえたよな? この子の声。落ちた人が北見麻衣……」


「何言ってんの?自殺した人が北見麻衣だって?そんなわけないじゃん。本人そこにいるじゃん」


「だよな、でも見て見ろよ、その死体と北見麻衣そっくりだぞ」


「そんなの見たくないわよ。―――っ!聡、見て、扉が現れたわ」


「どういうことだ?次はあの扉に入れってか?それよりこのままでいいのか?この子ほっといていいのか?」


「わかんないけど、いいんじゃない?扉が現れたってことはそういう事でしょ。多分ここはこれで終わりなのよきっと」


「俺達は何を見せられてんだ?これは現実か?夢か?まさかこれが、奇妙で不思議な扉とかいうんじゃないだろうな……」


「さあね、でも次に行けばわかるんじゃない?」


「わかった。行こうか」



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