奇妙で不思議な扉

にゃん汰

0扉プロローグ

「ね~さとし、奇妙で不思議な扉って知ってる?」


 いきなり何言ってんだ美咲みさきは。美咲は俺の彼女。付き合って1年。今どきのギャル。スタイルだけは良い。だけね。だからなのかちょっと倦怠期けんたいき


「何それ? 知らないな。何かのタイトル?」


 そう返信するのは聡。私の彼氏。かっこいいけど、それだけ。顔だけの男。つまらない。


 私は説明した。


「タイトルとかじゃなくて、C県、K市にある廃マンション。つまり、今私たちがいるこのk市で、すぐ近くのあのマンションよ。で、そのマンションに入ると、突然目の前に扉が現れるんだって。その扉を開けると……。」


「開けると何だよ? 気になるじゃんか」


 美咲はその先のことは知らないらしい。美咲も友達の友達から聞いただけで、開けたらどうなるかは分からないと。随分中途半端な話しでモヤモヤする。


 そのマンションは知っている。街ぐるみの何かの開発とかで、住民は追い出された。しかし、その開発は着工段階で、何故かダメになったらしい。そして、そのマンションは、人が居ないまま放置され、廃マンションとなった。


「何でいきなりそんな話しをしだした?もしかして、行って確かめようと?」


 美咲はこういう手の話は昔から好きなんだよな。オカルト怪奇なものとか、UMAとかそっち系……。


「正解。そんな話しを聞いたら確認したくなるじゃん? 扉がほんとうにあるか、あったとしたら扉の先に何があるか。私に話した友達も、他の友達も一緒に行ってくれないから、聡と行くしかないじゃん?むしろ聡と行きたいし。お願い。」


 こんなの行ってくれる人なんていないし。みんな、へ~そうなんだ。って感じでさ。聡ならなんだかんだ言っても、頼めば言うことを聞いてくれるしね。そこは彼氏としてありがたいよ。


「まあ暇だからいいけど、こっから近いしね。今から行けば暗くなる前に帰れるでしょ。夜行くとか言うなよ。さすがに夜は暗いし危なからな。治安的にも」


「わかったわ、今から行きましょ。特に持っていく物もないし、このまま行こ」


 そう言って私達は携帯だけ持ってマンションへ向かった。マンションは近く、歩いて10分くらいだった。


 マンションに着くと、まだ昼間なのに、さっきまで明るかったのに、周囲はいつの間にか薄暗くなっている。さすがに不気味になり、聡の腕にしがみついた。


「大丈夫か? 怖いならやめるか?」


 一応気をつかった。こんなに怖がるのを見るのは久しぶりだった。けど里美はかぶりを振った。


「よし、なら入るぞ」


 マンションの入口を開けた。入口は自動ドアになっていて、電気が通ってないし、鍵も壊れているから、簡単に手で開けられた。中はエントランスになっていた。エントランスの中程まで行くと突然暗くなった。


「なっ、何だ。何が起こった?」


俺はかなり焦った。


「キャツ!何で暗く。何これ?どういうこと?」


 私達は怖くなり、外に出ようとしたけど自動ドアが開かない。まったく動かない。それよりも外の景色が見えない。真っ暗で……無って感じたった。完全に閉じ込められた。怖い。

 そ、そうだ。携帯で助けを……。繋がらな?


「聡、どうしよう……聡の携帯は繋がる? 」


「いや、まったく。電源すら入らない。どうするも何も、戻れないなら違う出口を探すしかない。大丈夫だよ、きっと他に出口はあるよ。」


 美里をなだめると、突然目の前に扉が現れた。白い扉。暗闇の中に突如現れた。扉……。

 これが噂の扉か? ちらっと美里を見た。何と美里は目を輝かしていた。恐怖より好奇心が勝った。美里、やめろ、開ける何て言うなよ。何が起きるかわからない。


「聡、ほんとうに扉が現れたね。奇妙で不思議って何だろうね。どうする? 入ってみる?」


 私はさっきまでは怖かったけど、目の前に扉が現れて、怖さよりも好奇心が勝った。確認したくてしょうがなかった。この先何が起きようとも。


「絶対に入らないからな? 何かが起きるのは開けなくてもわかるだろ!! それより他の出口を探そう。非常口だってあるだろ。他の部屋に、ベランダだってあるし、そこから外に出られるかもしれない」


 ダメだ、美里は入るき満々だ。どうする?美里を置いて出口を探すか?


「出口なんてあると思う? 入口だって、開かなかったじゃない。外が見えなかったのよ。閉じ込められたの。なら目の前の扉へ入るしかないじゃない。覚悟を決めて。私は入るわ」


 聡には悪いど私は行くわ。扉のノブに手を掛け、一呼吸置いて開けた。


 ギィィっと音が鳴り、重い扉を開けた。中は暗いけど、その先に微かに光が見える。出口かもしれない。中に入ろうとすると、聡に腕を掴まれた。


「ほんとに行くんだな? しょうがない、美里を1人で行かすわけにはいかないしな。何より、先に光が見えるし、出口かもしれない」


 俺も覚悟を決め、美里と中へ入った。


 ギィィ…………ガチャン。


 残された扉は、ゆっくり閉まると、その場から消えた。



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