名前を付けてやろう
曲については、多くの人が知っているアニメの曲を1つ、ポップロックで有名な曲を1つ、オリジナルを1つということになった。
「私、オリジナルの曲を、作って演奏したい」
と結月が言い、作詞作曲長岡柚木の曲が作られることになった。その詩を僕が歌うのか。
パーカッションがないので、ドラム音は打ち込みでまかなうことになった。
「あ、バンド名」
「そうですね。結月先輩。バンド名が決まってません」
確かに、大事なことのような気もする。今決めないとおそらく当日までまた決まらないだろう。
「じゃあ、そうだな、みんなで一つ案を紙に書いて見せあって決めよう」
「それで多数決でもするの」
椎が尋ねた
「それもいいけど、いいとこどりをしてもいいかな」
「なるほどにゃー」
皆それをスルーして、結月はノートから紙を破り、メンバーに配っていた。
「こういうのは思いつきが大事だから、ぱっと書こう。5分後に見せあおう」
と僕が提案をする。
「無視しないでよ。じゃあ、無視できないようなの書いてやる」
と、椎は意気込んでいた。
僕は何を書こうか。自分で「ぱっと書こう」といった割にぱっとは書けなかった。
例えば、ある有名な少女漫画は、手元にあったCDアルバムのタイトル2つからつけられている。僕は、それなら、彼らに聞かせた曲から名前を付けるか。それなら、「名もなきバンド」ってところか。いや、逆にありふれすぎててよろしくない気がする。
『なもなきバンド』
「これは、だめだ」
と椎が言った。
「もう少しひねることできないんですか、先輩」
4つも下の子にもなめられた。
「擁護、できないよ、真一」
少し結月は少し饒舌になってきた。ボケは上手くいった、ということでいいだろう。ボケたつもりはないが。
『みくしい』
「没」
厳しいことを言ったやつには厳しいことを言ってやらにゃあかん。
「なんで」
「聞いたことがあるから」
「せっかくみくちゃんと私の名前からとった素晴らしいバンド名だと思うのに」
「僕らの名前は」
「上手く入れられなかったので、省略」
「椎さんは、ボケに走りすぎです」
「悪くない、と思ったんだけど」
結月のバンドではなかったのか?
『月のロック』
「響きは悪くはないけど、なぜ」
「真一以外の名前に『つき』が入ってるから」
「結月、は分かるけど、あとは?」
「こう、づき、み、で月が入ってる。す、づき、しい、で月が入ってる」
「鈴木は、『す』に点々ですよ」
「結構ありだな」
「待って、私のときは同じような理由で没になった気がする」
「椎のは、それ以前に、聞いたことある名前だから没なの」
『手を伸ばすもの』
「かっこいい系だ、さすが天才」
「天才って言うのやめてもらえます?」
「でもバンド名として割とふさわしいかもしれない」
「ある有名な、バンドマンは、『月に手を伸ばせ、たとえ届かなくとも』と言っていた、よ」
「じゃあ、少し変えてこうしましょうか」
そう言って決まったバンド名は、『月に手を伸ばすもの』となった。
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