メンバーを集める 3
「神津さんって、飛び級して入学したっていう神津さん? そんな子が一緒にバンドやってくれるの」
日奈子が、それは意外だ、といった表情でこちらを見て言った。
「そう。仁菜と同じクラスだったんだって。仲が良かったらしくて、仁菜が勧誘してくれた」
「仁菜ちゃん、自分ではバンド演奏しないって言ってたのに、ほかの人を連れてきたんだ」
「そう。お兄ちゃんと結月さん、それに、来未のためにもなるから、って言って」
「へえ。まあ、仁菜ちゃん、お兄ちゃん子だからね」
「そうかな」
そうだよ、と日奈子が言う。この日の通学路は、仁菜が日直だからと先に行ってしまい、長岡姉妹と僕での登校となった。
「それにしても、来未ちゃん、すごく堂々としてたよね。私の5つも下の子だとは思えなかったもん」
「ゆず姉は5つ下の子にも人見知りを発揮してたよね」
「しょうがないもん、天才少女って呼ばれてる子だよ。あっちは飛び級なのに私は留年だから、なんか、何も言えなくなっちゃって」
「でも、お姉ちゃん、ちゃんと演奏で来たんでしょ」
「ゆず姉、それだけはよかったよね」
「だけじゃないもん」
「でも、あの曲って、基本的に終始僕が歌ってたような気がするんだけど」
「それは、二人が演奏するなら長所はどこかを探った結果だよ」
「お姉ちゃん、ずるい。真一が歌うまいの利用したんだ」
「適材適所、智略で制した、と言ってほしいんだよ」
そうは言うが、神津さんは結月のギターをよく見ていた。結月は難しいアレンジを加えて弾いていたから気づかなかったかもしれないが。
「仁菜ちゃんが一人紹介してくれたんだから、ひなも誰か私とバンドしてくれそうな人、紹介してくれないかな」
「お姉ちゃん、自分で見つけようよ」
「私、極度に人見知りしちゃうの知ってるでしょ」
「それを克服してさ」
「じゃあ、ひな、一緒に演奏しようよ」
「いやだ」
「じゃあ、誰か、人身御供を」
「ゆず姉、それは人を紹介してもらうセリフじゃないよ」
「そうだ、私のクラスメイトに鈴木椎って子がいるんだけど、彼女はちょっとお姉ちゃんに雰囲気似てるところあるから、話聞いてみてもいいかも」
雰囲気が似ていると言っても、結月は内弁慶だから、どのように似ているのかが分からない。
「似てるって、人見知りなところ?」
「いや、全然人見知りしない。けど、話しているときのテンションは、私たちと会話しているときのお姉ちゃんくらいかな」
「初対面からそんなに明るいのは、すごいな」
と僕は思ったことを言う。
「私、そんなに明るいかな」
「クラスの人と同じテンションで話せるの、お姉ちゃん」
「人は、社会的な生き物だから、相手によって態度が変わるのは、当たり前のことだよ」
「だよ、じゃないよゆず姉」
「で、とりあえず、彼女も部活には入ってないし、なんかいいことないかなとか、夢見がちなことを最近言ってたし、紹介するくらいならいいかなって。どうかな、お姉ちゃん」
「いいんじゃない?」
「楽器の演奏はできないかもしれないけど」
「それでも、壇上に人数が欲しいから、紹介して」
この姉妹、基本的に毒舌だから、陰で僕も何を言われているかわかったもんじゃない。
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