第2814話 結び:不在継続
改めて『アウセラー・クローネ』の新生クランハウスについて詳しい説明をすると、ざっくり説明が終わったところでサーニャは飛び出していった。まぁ、話してる途中から目がどんどんキラキラしていってたもんな。
……そんな調子だったから、エルルは? というのが聞けなかったんだよなぁ。つまり私からでは、全く情報の無い状態が継続している。というか、サーニャで10日も寝てたんなら、普段から寝不足なエルルはもっと寝てた可能性があるか。
ただ、びっくり&わくわくし過ぎてうっかりした、としても、サーニャがその辺全く何も言わなかったっていうのは、ちょっとこう、わざとの気配を感じるんだよな。少なくとも、起きたタイミングがサーニャ自身より前か後かぐらいは教えてくれるだろう。
「それが無かったという事は、何か隠したいんでしょうねぇ……」
何かっていうか、エルルに関する事なんだろうが。何か隠さなきゃいけない事が他にもあったか?
まぁでも、サーニャが元気になって戻って来たって事は、エルルも手当てというか療養というか、そういうのは受けて回復できている筈だからな。そもそもエルルは実質公的に婚約者だしうちの子だ。何してるのか分からないが、すっと帰ってきてもいい。
それにサーニャがこっちに来たって事は、引っ越しの事も無事に伝わってるって事だしな。うっかりエルルだけが元のクランハウスの島に戻ってるって事は、まぁ、無い筈だ。たぶん。
「……そういえば、荷物の確認をしたのかどうかも聞き忘れました」
もちろんそれも手紙に書いたし伝言というか連絡をお願いしたから、たぶん大丈夫だと思うんだが。エルルはその辺で確認してるから時間がかかってる、とかだろうか。
でも一応、私の直属部隊所属で私の傍を離れて行動してたんだから、とりあえず一旦顔を出した、って感じのサーニャはともかく、その辺ちゃんとしているエルルは復帰報告にぐらい来ると思うんだけどな?
なんて考えつつプレオープンの対処(主に書類仕事)をしている内に。あっという間に夜のログインになっていた。あれ? 未だにエルルの姿を見てないんだが?
「……ここまでエルルを見てないのも久々ですね」
というか、出会う前以降なのでは? 流石にこんな、内部時間半年近くっていうのはたぶん、出会ってからは最長だな? 時間加速とか色々あったけど。体感半年は無かった筈だ。
まぁこの期間の大半は雑に言えばゲテモノピエロが悪い訳だが。だってあいつらが誘導した自称婚約者候補の内、特に話を聞かない奴らの相手をしていたからだし。
一度も返事が来なかったあたり、何か伝言があっても答えられる状態ではなかったんだろう。という事は恐らく、休みなしで戦い続けてた可能性が高い。
「まぁだからサーニャをして、10日寝続けたって事になるんでしょうし」
もちろん
あの部屋もそれなりに片付いている……と、いいな。たぶん。恐らく。当然ただ捨てるなんて勿体ない事はしないだろうけど、詳しい部分が共有されてからは
……。流石にこの状態で、エルルが無効の書類仕事に引っ張り込まれてるって事は無い筈だしな? 流石にそれは本当に色々な意味で違うだろうしな?
「というかその場合、もう一度美味しそうな香りの刑をハイデお姉様にお願いしなければなりませんが」
とか思いつつ、うちの子がやった通行証のチェックポイントの結果をまとめた書類を確認する。ざっと内容と合否が書いてあるだけだし、決定権自体はうちの子が持っているので、私がやっているのは最終確認だ。
「…………、ん?」
ここまでは文字通り目を滑らせていたその書類というか報告書。だが今回は、その1点で目が留まった。
ん??
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