第2813話 結び:最終日

 召喚者プレイヤーと違って住民の移住は比較的ハードルが低い。とはいえ、こちらは調べる手段が多いという部分はあるから、ダメなやつが混ざる難易度という意味では似たようなものかもっと上だが。何なら私も魔視と種族特性を使って確認するからな。

 観光客として来た召喚者プレイヤーも相当いたし、私の所だと可愛い好きがクラン入りを目指してきたが、クラン入りできるのは正式に運営を始めてからであり、私の婚約者としてのクラン入りは超例外だと説明すると全員引き下がってくれた。

 ……まぁ若干名「なら!」と言いかけたが、その瞬間、既に引き下がっていた召喚者プレイヤー達から文字通り袋叩きにされて死に戻っていた。うん。まぁ。その。どうやら召喚者プレイヤーの中でもこう、私とエルルは並べておく方が良い、という空気があるらしく。


「……。まぁ、流石に召喚者プレイヤー相手は、ちょっとと言うかだいぶ違いますし」


 全く別物とすら言えるからな。一応召喚者プレイヤーも、フリアド世界で結婚は出来るけど。

 みたいな事もありつつ、プレオープンして良かったなと割と全力で思いながら対応しつつ迎えた日曜日。プレオープン最終日って事で、ここまでにもまして人が詰めかけてきた。

 出禁にされた人はともかく、うっかり通行証(スタンプラリー)を完成させて「第一候補」に会って帰ってった人は、もう一度挑戦する事自体は出来るからな。一度クリアしているからサクサク進められるだろうし、途中で止めるか「第一候補」に会わずに内部をうろうろする、というのは掲示板で広まったらしいし。

 ただクランハウス内で動く人数が増えると、対応する側は忙しくなる。もちろん一番忙しいのは「第四候補」と「第五候補」なのだが、私の所もそれなりに人数が増えてきた。


「クエスト風の困りごと相談と、それに伴う町歩きがかなり好評のようですね。何よりです。会話の切っ掛けにもなるようですし」


 もちろん移住組を含めたうちにいる住民にダメな意味で手を出そうものなら、見回りをしているうちの子はもちろん、入り浸って満喫している可愛い好き召喚者プレイヤーまで鎮圧と捕縛に参加するからな。“天秤にして断罪”の神の神官さんに見つかって一発アウトになる事もあるが。

 なんかうちの子の話を聞く限り、“天秤にして断罪”の神の神官さんも結構ふれあい牧場とかのんびり馬車旅風コースとかを楽しんでいるようだが……ま、まぁ、あくまで神官として反してはいけないのは社会のルールであって、楽しい事を楽しんじゃいけないって訳では無いからな。要は程度の問題だ。うん。

 一応夜のログインの終わりには、プレオープン終了のアナウンスと同時に挨拶をして、最後までぐずって帰らない人がいたら帰ってもらう(意訳)予定となっている。だから午後に多めにログインして、なおかつ夜は途中で一度ログアウトする予定だ。


「あっ、姫さんいた!!」

「おやサーニャ、お帰りなさい。疲れは取れましたか?」

「いやまぁそりゃお城のベッドで10日も寝てればね!? むしろそこから寝過ぎでお腹減ったのと勘を戻すのが大変だったよ! ……いやそうじゃなくて! 新しい拠点って聞いてたら、こう、広くない!?」

「まぁ広いですね。文字通り山ほど「異空の箱庭」を使いましたから。『アウセラー・クローネ』の召喚者プレイヤー組が持っていた分を全部集めて」

「思ってた以上に広かった! え、でも、あっそうかじゃあ地下もあるって事!?」

「ありますよ。場所に寄りますけど、特に外周ぐるりとそれぞれのエリアの境は、防衛の必要もあるって事でしっかり」

「何で境目の地下で防衛……あ、あーそっかそうだった、“採録にして承継”の神の……」


 いやーサーニャは相変わらずリアクションが良いな。現婚約者を倒す事で自分が婚約者になれる(誤解)婚約者候補との戦いは、プレオープンと同時に終わった筈なんだが、来ないなーと思ってたら。

 しかし『勇者』になったサーニャでまず10日も寝てたとか、本当にどんな勢いで戦闘してたのか。……後で竜皇様お父様にリスト貰ってこっちで調査して、出禁を一時的な物じゃなくて永続の奴に変えるぐらいはするか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る