第2810話 結び:期間半ば

 しかし実質とはいえ本気で国が出来ちゃったよ。と思うから、移住してきた住民の行動理由というか、移住を勧めた原因(推測)から「第一候補」が外せない訳だが、それぞれのエリアの構造あるいは目玉は、あの最初のイベントでインタビューを受けて答えたものにかなり近い。

 かなり、というのは、あれからフリアドをやってきた結果、他にも用意したいものが増えたからだ。まぁそうだな。私なんか「国という入れ物があればいい」なんて言ってたのが、牧場でのふれあいコーナーを作ったりとか、移住組の困った事を集めてまとめてクエスト風にするとかしてるからな。

 もちろん私の場合、出来るかどうかは別として、お忍びで出歩いて異世界探索とか冒険者ごっこをしたいっていうのもあるが。出来るかどうかは別として。


『いやぁ千客万来、満員御礼ってな! ちょーっと注意して欲しい事が伝わってないお客もいるにはいるけど!』

『まぁそうだけど~。でも、こういうのがやりたかった~っていうのは出来てるし~、困ったお客様へ対応する時の経験もすごい勢いで積めるから~、やって良かったよりではあるわね~』

『まぁそれはそう。で? 渦中の「第三候補」はどんな感じ?』

『真っ当なお客さんは大体、移住組のおもてなしで移住組に参加するつもりになるか、牧場にいる子達の可愛さに骨抜きになるか、迷子になって精霊獣達に救出されているかですね。迷子対策として今看板を増やしているところです』

『まいご!? いや気持ちは分からんでもないっつか「第三候補」のとこは確かに地形が複雑ってかアレだからないやでも迷子! ま・い・ご!!』


 で、プレイヤーイベントの『アウセラー・クローネ』新生クランハウス、アトラクション部分のプレオープンから3日経過した水曜日の時点では、こんな感じだった。「第二候補」のところ? 楽しそうだよ。戦闘狂彼ら的な意味で。そこそこの追加移住者もいるらしい。

 ……そういう意味で、ある意味一番意外な形になったのは「第二候補」のエリアだろうか。島にあった巨大闘技場みたいなものもあるにはあるが、それ以外の部分がほぼほぼ、体格の大きな種族にも対応したサイズの迷路になったからなぁ。

 どう考えたって戦闘は避けられない。「第二候補」とその下に集まった仲間の性格を考えるにそれはどうしようもない。のだが。


『不意打ちや隠密行動といった部分が全く生かせないのはちともったいない、と思ってのう』

『珍しく相談してきたと思ったら、いやまぁその辺加味してくれるのはありがたいんですが』

『そーだなー。流石に世界単位の上澄み相手にガチ戦闘かつ連戦ってのはハードル高過ぎだとは思ってたし』

『そのままだったら~、職人の人達はちょっと厳しいんじゃないかしら~、とは思っていたわ~』

『……気付いておったのならせめて一言ぐらい何か無かったかの?』

『言葉で聞いてくれればここまで苦労してないんですよ』

『ド直球で今までの行い!!』

『事前に言っても聞いてくれないでしょ~?』


 まぁそういう事で、迷路の中は全面戦闘禁止、落ちたか降りた相手に対する追撃も禁止。ついでにパストダウンさんがそれはそれは楽しそうに「こんな事もあろうかと」と言って取り出して来た、かなり高い回復効果がある代わりに麻痺が積み込まれる、という床材を全面に敷き詰める事で、隠密逃げ切り、時間をかければ戦闘力が低くてもクリア可能、という構造にした訳だ。

 なお闘技場は迷路の中にあって唯一例外的に戦闘可能な場所であり、それ以外の設備は、武器屋とか的屋とかみたいな戦闘オッケーなやつなら迷路の上に、治療所とかご飯処とかっていう戦闘ダメなやつは迷路の中に作られている。

 たぶんみのみのさん達『牛肉工務店』への注文の内、一番大幅な変更になったのはここだろうな。元は硬く踏みしめられて短い草が生えているだけの平地が広がり、そこにぽつぽつ建物がある、っていう感じだったし。

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