第2809話 結び:対処開始

 大体の方針が決まったところで、対策に必要だって事で(一応)届いていた婚約申し込みの手紙を見せてもらったんだが……お城にある部屋が丸2つと半分も埋まる程だとは思っていなかった。これはひどい。

 ちなみにそれは個人かつ他薦のものだけでこれであり、国名義で届けられた婚約者にどうかという打診の名簿はまた別だし、それ以前に書式も送り方もなってないものはもっとあるらしい。

 なお竜皇様お父様が把握しているだけでこれであり、もちろん事前チェックで弾かれたり、そもそも送り先が違うものは含まれていない。……首都にある“細き目の神々”の神殿あてにも結構な数が届いてるらしいからな。


「そもそも、竜族の国の長ですよ。世界三大最強種族のトップですよ。それに個人で自薦の婚約者候補として名乗りを上げるとか、怖い物知らずですか」

「……その辺りの理性というか、箍を、外したのでしょうね」


 本当にもうあのゲテモノピエロはさぁ……!!

 マジでちょっと無理してでも、それこそ腕ぐらいは持っていかれたとしても殴っておくべきだったか。その場合、その後の被害が倍じゃきかない事になりそうだが。何しろ私の体の一部をあいつらが手に入れるって事だし。……止めておいて良かったな。そうだな。うん。

 さて。そして実際にどうするかって言うと、まぁどうせ必要だったしなぁという方向でクランメンバーの同意を得た上で、大量の移住者をどう扱うかという問題に加えて、これはもうクランハウスじゃなくて国だな? というあれもあり。

 あとは時期的に、10月の最後の週には何かミニイベントがありそうという事で。


「みのみのさん達には感謝しかないですねぇ……」

「……むしろあちらから、規模が拡大した事に対するお礼が届いていますが」

「規模が拡大して工期が伸びたのにお礼? 逆では?」

「お礼です」


 ……何故? という会話もあったがともかく。

 特に召喚者プレイヤーは最後の追い込みをかけたい人もいるだろうという事で、月曜日スタート。10月の真ん中の週でリアル1週間。クランハウスとされている範囲の内、もう実質国だからって事で解放する事にしたエリア。

 「第一候補」が本格的に御使族として働く為に、聖地の島と南北の大陸にならったチェックポイント。召喚者プレイヤーの認識はスタンプラリーだったが難易度はしっかり高めに調節されたそれの、プレオープンを開催する事になった。


「問題はここまで来る道中ですけど、住民でも使える転移ポイントを設置したり、竜皇様お父様に頼んで軍の一部を警備として動かしてもらったりしましたし……後は噂として婚約者決定審査の話をいい感じに流すとか、うちの子へのやりすぎ注意とか移住組への説明とか来客用の動線の再配置とか、諸々間に合って良かった……」


 という訳で、とりあえず月曜日の夜はいつも通りログインした訳だが。


『あ! 「第三候補」ログインした!? 悪いちょっと思ったより怪我人多い! 主に同士討ちで! ポーション回せる!?』

『こっちにもお願い~。ここでは戦闘力は見ませんって言ってるのに、半分ぐらい聞いてくれないのよ~』

『ぶっちゃけもうこのままわざとスルーして「第二候補」のとこに放り込みたいぐらいだよ! それと出来れば解毒と浄化のお札もよろしく! なんか盛られてる可能性高い!』

『というか~、何とか宥めてお茶を飲ませたら落ち着く人が多いから、まず間違いなく何か盛られてるわね~。警備の人達にももう一度注意喚起しておいたわ~』


 玄関口というか、順不同の第一第二関門を担当する2人から、クランメンバー専用広域チャットでいきなりそんな事を言ってきた。あぁ、うん、そうか、半分以上盛られてるか。


『確認してすぐ対応します。ただ聞く限り毒もしくはダメな薬の可能性が高いでしょうけど、一応のろいと病気のチェックもお願いしますね』

『あーなるその可能性もあるか、あるな、あいつらならやりかねない!』

『対処できる人の手が、分かりやすい症状の対応でとられているものね~。気を付けるわ~』


 いやー、引っ越しした後もせっせと生産作業してて良かったな。とりあえずまだ在庫があるから、そっちから出している間に追加が作れるから。

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