第2808話 結び:対処相談

 さて、問題の詳細とそこから予測できる原因は分かった。ここからは対処を考える時間なんだが、これが難しい。竜皇様お父様が皇族の中でも情報を絞って秘かに対処しようとしたのも納得な程度には。

 国として対応するのは、強硬な対応をすると良くないどころか『バッドエンド』邪神の信徒の思惑通りになりかねない。だからといって私が個人で対処しようとしたら、外に出た瞬間にそれこそ群がってくるだろう。そこに何が混ざっていてもおかしくない以上、これも悪手だ。

 それに召喚者プレイヤーが動いて暗躍しているだろう『バッドエンド』邪神の信徒が何とかなったとしても、一度火の付いた婚約者の椅子争奪戦は収まらない。明確で分かりやすく、かつ誰にとっても納得できるあるいはさせられる振り落とす理由が必要だ。


「まぁ極一部の、何を言っても納得しない相手はともかくとして。実際の動きを見せる規模としては、召喚者プレイヤークランが良い感じでしょうか」

「そうですね。それに『アウセラー・クローネ』の場合、かなり立ち位置が特殊であると同時に確かです。内容さえはっきりして公平であれば、問題は何とかしやすいかと」


 出ないじゃなくて何とかしやすいという表現をした辺り、カバーさんの認識と意気込みが見えるが、ともかく。さて問題は、クランとしてどういう風に動くか、という事だ。

 ここで竜皇様お父様に許可を取り、その場の全員の同意を貰ってから、この話をクランメンバー専用掲示板に上げる。クランで動く、というのがおおよそ最善であるなら、そのクランメンバーも参加者になるのは当然の話だ。

 ……なお、問題のあらましをカバーさんが書き込んだ時点で、「それって最悪世界大戦になりかねないのでは?」みたいな書き込みがあったが、そういう事なんだよな。竜皇様お父様が下手を打っていたらそうなってた。動乱の時代に対応できるタイプの有能施政者で本当に良かったよ。


「……。なるほど」

「ふむ……」


 で、あれとかこれとか色々案を出していった結果、無事方向性というか、これなら割と平和的に収まるのでは? という案が固まった。竜皇様お父様も思案に入っているし、思案する価値があるぐらいには何とかなる可能性がある、と判断したのだろう。

 もちろん諸々の調整が大変だし、実行するとしたらそれはそれで警戒するべき場所が増える。だがまぁ、状況が打開できるのであればそれは必要なリスクになるだろう。今のままだと、下手すれば疲労でエルルとサーニャが潰されかねない。

 何せ、いくら2人が強くて竜皇様お父様の方で色々手配していても、4ヵ月も自薦他薦問わず私の婚約者に名乗りを上げた中で血の気の多い連中を相手にしているんだ。ここまで私の方に何も無かった事から考えても、たぶん攻撃が掠りすらしていないだろうが、疲れるものは疲れるからな。


「というか、婚約者候補だと名乗りを上げれば竜族の『勇者』と戦える、という方向で、私に微塵の興味もない戦闘狂が参加している可能性があるんですよね」

「唆す方向性としては、十分にあり得ますね」


 なので、色ボケもとい権力にしか興味のない雑魚ゲフン実戦経験少なめの貴族とかだけではなく、そこそこ戦いにはなりそうな相手がそれなりに混ざっている可能性がある。というか、高い。


「鬼人族等からは、そういう理由での申し込みがあったな。流石に婚約者になる事を希望すると言っておいて、我が娘の名前すら知らぬ者は強制送還したが」


 ……どうやらあんまりにもあんまりなのは流石に弾かれていたようだ。そうだな。婚約者だと名乗りを上げるなら、せめてその相手であるところの、私の名前ぐらいはちゃんと覚えておくべきだな。

 ただその辺、時間経過でそういうのは減っていったらしい。のだが、これはたぶん、入れ知恵されたんだろうな。最低限戦う為に必要な情報、って方向だと、どれほど興味が無くてもするっと頭に入るのは「第二候補」で知っている。

 ん? というかそれだと、1人1回とかっていう挑戦回数の制限もない感じか? それはダメだな。せめてそこは制限しないと。たぶん、対処する手が足りなくてすり抜けたんだろうし、対処したとしてもその辺入れ知恵で誤魔化されていただろうけど。

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