第2804話 結び:行動開始

 そうやって待っている間に30分は経過し、タイマーが鳴ったと同時に止めて、即ログインする。カバーさんが「すぐ動く」って言ってたからな。本気でカバーさんが動いたら、フリアド世界有数の国が相手だと言ったってどうにでもなる。

 そもそも、皇族の女性陣はこっちの味方なんだ。オーバーキルしてるまであるからな。その場合ほどほどの所で止められるのは、騒動の中心だろう私か、精神的にも立場的にも一番強い皇妃様お母様ぐらいだろうし。

 さて、内部では2時間経っている筈だが、状況はどう動いたかな。


――――ドゴン!!!

「うわっ!?」


 と、ログインした起きた途端、かなりの揺れが伝わって来た。何事!?

 ただまぁ私はまだ閉じ込められている状態であり、外部とのあれこれは完全に遮断されている。だから掲示板を見る事も出来ないしウィスパーやメールでやり取りする事は出来ない。

 だから膝を抱えて部屋の隅でじっとしていた姿勢から片膝立ちになって様子をうかがうが……どうやらこの揺れ、結構な頻度というか、割と連続で伝わってくる。これは私がログインする前からやってたな?


「……一応ここ、首都ではないとはいえ竜都のお城なんですが……」


 ちょっと遠い目にならざるを得ない。ダメだろ、それは。起こっちゃいけない事が起こってる。最低限の自重が出来なかったのは誰だ? うちの子か? 可愛い好き勢か? 「第二候補」か? ハイデお姉様か?

 パッと思いつくだけでも候補がちょっと多すぎるが、その中で一番誰がマシって言うとハイデお姉様だからなー……なお、被害の大きさはハイデお姉様と「第二候補」でトップ2だ。

 ……いや、違うな。もしうちの子だった場合、ルウが参戦してたら頭1つ抜き出て甚大な被害が出るな。筋力特化を舐めてはいけない。あの子自身は事情を説明されたら、素直に「そっかー!」ってなって全力で鉄球ぶん回すし。


「しかし、影響が遮断されている筈なのにこの揺れとは。……いやまぁ、城自体が揺れているなら遮断も何も無いでしょうけど」


 メインは神の力とか魔力とか、そういうものだろうしな。物理的なものはそこまで遮断できないのだろう。それはそうだが。

 けどまぁ。カバーさんが動いているんだから、この揺れがただの何かしらの騒動の余波でしかない、って事はない。少なくとも、私に何か動きがあるよと伝えるものではある筈だ。

 ただの余波であったとしても、そういう効果を狙っているだろうし。そして揺れが伝わってくるという事は、一定以上の揺れなら伝える事も可能、という事だから。


「流石に身内とはいえ、拉致監禁されてまで大人しくしてやれるほど、私は可愛くないんですよ、皇子様お兄様――[正拳突き]!!」


 軽く準備運動をしてから扉の前に立ち、普段着のドレスから戦闘用のドレス鎧に装備変更。旗槍も出して背中に背負い、セット装備効果を発動させた状態で、文字通り全力の拳を叩き込んだ。

 ッッゴン!!! と凄まじい衝撃が通ったが、ここまでやってもうっすら罅が入っているだけだ。本当に呆れた頑丈さだな。呆れたって言ったらダメか。お城を作った人の努力と工夫の結晶なんだろうし。

 ただうっすらとはいえ罅が入ったって事は、と、そのままテンポよく打撃を叩き込んでいく。そして叩き込む数が増える程にはっきり大きくなっていく罅。壊せないって訳じゃなさそうだ。


「ま、本来なら、ここまで耐えてる時点で、褒められるべきなんです、けどっ!」


 言いながら時々アビリティを混ぜて扉破壊チャレンジを続けていると、その内、バキッ、という音がちょっと横から聞こえた。先に限界が来たのは蝶番の方だったか。まぁそれはそうだな。どうしても脆くなる場所だし。

 もちろんお城は出来るだけ壊したくないので、蝶番の部分を狙って「通す」系のアビリティを入れる。それでも1発は耐えたって言うのは、作った人が本当に優秀だったんだな。

 後で直す時は、私も全力で修繕費を出させてもらうとして。とりあえず扉が開いたら遮断の効果も薄くなる。という事は召喚者特典大神の加護で連絡が取れるようになるって事だし、そもそも領域スキルを展開すればそれが伝わるって事だ。


「まず間違いなく何か誤解が発生していたり、通すべき連絡が通っていなかったりするでしょうからね」


 しっかり、何があったのかっていう話を聞かせてもらうとしようか。

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