第2803話 結び:まさか
そして10月最初の週末。ここでも家族での食事会があるのだが、今度はそのお知らせの差出人がハイデお姉様だったので、安心して出席する事にする。
流石にここまで締め上げ、失礼。精神的に圧をかければね。それはそう。と思いつつ、けどまぁ引き籠っていたのは本当だし、噂はそう的外れでもないよっていうのを見せる為に、ちょっとしょんぼりめにしながらお城へ向かった。
ただまだ首都である竜都の大陸ではなく、最初の大陸のお城ではあったが。それでも、流石にこうね。そろそろいい加減に説明の1つぐらいはあると思うじゃんか。
「……。一応、理由を、聞いてもよろしいですか?」
「し、仕方ないんだ!」
「お前の為を思ってだから……!」
まさか、さ?
その道中で上の
テンプレかってほど盛大に何かがすれ違っているだろう捨て台詞を残して部屋の扉を閉め、走り去っていった
しかもこれ、進化部屋と同じく、外部からの影響の一切を遮断する構造になってる部屋だ。遮断するという事はつまり、内側から外に影響を出す事も出来ない。すなわち、領域スキルの全力展開をしても、部屋の外に居場所を伝える事は出来ない。
当たり前だが奇跡を願ってもそれが通る事はなく、隠し部屋と言いつついざという時の避難場所か、もしくはそもそも危険人物を秘かに閉じ込めておく場所だからか、滅茶苦茶に丈夫ときた。
「まさかお城の中で詰むとは思いませんでした」
まぁでも、今は時間的に余裕があるからな。そして私は
という事で端っこで膝を抱えてログアウト。からのゲーム内に伝わるメールアドレスでカバーさんに連絡だ。流石にここまでやらかすとは思ってないんだよ。本当に。
……カバーさんの爆速返信でも、かなり言い辛そうだったが真偽を確認する内容があったから、信じたくないというか、信じられないのはほんとそうなんだよな。
「だが事実なんだよなぁ……」
オートマップは働いていたし、流石に何度も通ったお城の中だ。大体の位置は分かる。だから恐らくこの辺り、と言葉による説明を添えて、マジなんですよ(意訳)と返す。
再びの爆速返信で、すぐ動きます、とあったので、私はログイン制限が開けるのを待つだけだ。リアル30分、内部時間2時間は再ログインできないからな。もちろんログアウトした時点で30分のタイマーはセットしている。
しかし、随分な強硬手段に出てきたな。そこまでするほどの理由が本当に分からないんだが。皆目心当たりがない。どういう事?
「にしても、誘拐犯が「仕方ない」とか「お前の為だ」とか。狂人の理屈だと思ってたけど、割と普通に出てくる言い訳だったのか」
乾いた笑いしか出てこないよな。ほんとに。当人の為を思うならまず事情を説明しろ。本人に決めさせろ。意見を聞け。当人の意志を無視して決定される事の9割は誤解とすれ違いで出来てるし事態を悪化させる事にしかならないんだぞ。止めろ。
施政者がそんな事も思いつかないとは思いたくないが、もしかして何か薬でも盛られてるんだろうか。でも私やハイデお姉様ほどではないにしろ、ステータスが高い分だけ耐性も高い筈だしな。
それを抜いて影響を与えるとして、流石にお城で働く人の審査基準は厳しい筈だし、料理やお茶といった口にするものを扱う人なら更に厳しい筈だ。食材や茶葉の検査だってしっかり行われているだろうし、スキル的なものだけじゃなくて神の力による検査も行われている筈だから、悪意の忍ばせようが無い筈なんだけどな?
「…………」
何故かノイズのかかった声で笑うゲテモノピエロの姿が思い浮かんだが。
最終決戦で何も仕掛けてこなかったのは、最初から「その後」に何かするつもりだったから。
とか?
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