第2801話 結び:瀕死とトドメ
私は引き籠り(泣き暮らし部分は噂)、女性陣から詰められ、何故か竜都の一般住民に「なんか末姫様の事で竜皇様がやらかしたらしい」みたいな噂が流れ始め、と、ほぼ全方向から叩かれているか針の筵状態で、まぁそれでも、内部時間2週間は耐えた方だろう。
ちなみにこの間、実に10通以上の「お願い」の手紙が来ていたのだが、私はそれをさっと目を通してぜーんぶ
というか私は確かに一番の被害者だが、それ以前に一番怒っているし、そもそも今回の事態の原因で元凶だからな。ちゃんと明確な条件は出しただろ? それを達成してから言い訳しようか。
「というか、言い訳すらせず何とかならないか、なんて話が通る訳が無いじゃないですか」
「まぁそれはそうね。……待ってちぃ姫、まさかそのとりなしの手紙ですら何があったか書いてなかったの?」
「何1つ。謝罪の言葉はちょっとありましたけど、何があったのか何を隠しているのかは一切。スクリーンショットは撮りましたから全部見れますよ」
「あぁ、ファイルを共有する方のスレッドね」
みたいな会話がキッチンでもあったりしたので、噂が竜都の中でとどまっただけ手加減した、って部分まであるんだよなぁ。
どうやらその週の木曜日、10月に入ってすぐのタイミングで、「色々説明するからお城においで」(意訳)という手紙が届いた。実質の召喚状なので、普段ならすぐに行くと返事をするものだ。
ものだが。
「……あら。あらあらまぁまぁ。全く、トビアお兄様の孫だけあって、本当にこういう、好意のある異性相手だとどこまでも際限なくヘタレるのねぇ……」
どうやら私のところに遊びに来ると美味しいお菓子が出る、という事に味を占めたらしいハイデお姉様が、ちょいちょい遊びに来るようになっててだな。それも、私が
まーもちろん先に相談するよなぁ? だってこの実質の召喚状ですら、何を隠してるのかについてとか、エルルとサーニャの現状についてとか、そういう事が全く書かれていないんだからなぁ?
「私、少なくとも
「それはそうでしょう。というか、あれ以上の婚約者なんていないわよ。少なくともルミル、あなたにとってはね。何しろ、私にすら結局最後まで付いて来れてたのだもの」
「……エルルについては、ハイデお姉様が振り回していたから、皇族への苦手意識が出来た可能性がある訳ですが」
「仕方ないじゃない。年頃が近い範囲だと、私について来れない者がほとんどだったのだもの。婚約者を選ぶなら育てる側だと決めていたし」
なお、そんなハイデお姉様は現在絶賛婚約者探し中である。若干うちの子がターゲットされてる気配がしないでもないが、ちゃんと正面から口説き落とすだろう事は確かだから今のところ静観だ。
お澄ましして私が相談がてら出したお茶を飲むハイデお姉様。私のような付け焼刃ではなく、しっかりと教育を受けてその身に染み込ませたお行儀は本当に美しい。……動いたら途端にお転婆になる訳だが。
なおその動くの範囲には、表情と言葉を含む。何故なら。
「ま、そこまで頑なに言いたくないというなら、相応の態度をとるまでよ。ルミル、とっても香りのよいお菓子を作って頂戴。美味しいのは分かっているから、それはもう、城中を包めるぐらいに香りの広がるものをね」
「そうですね……なら、食べる直前で温める事で完成するものにしましょうか。小さい火で炙り、焦げ目をつける事で一部がパリパリ食感になるお菓子がありますので。少なくとも部屋の近くなら、人間でも分かるぐらいに香り高いものが」
「それはいいわね!」
にんまり、とその唇が弧を描いてから告げられた内容は、まぁ、少なくとも竜族相手には、凄まじく効きが良い「攻撃」の為のものだったからだ。
……しっかりマリーと意気投合していたのは、少なくとも私の中では予定調和だし。
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