第2800話 結び:正当対処
一芝居打った、とは言わない。この程度は結託して話を出さないようにしていたのと同じだからだ。それに、普通のご家庭でもまぁまぁ見る光景だろ? ……見ない? そっかー。
なお下がった私はそのままクランハウスの仮設拠点に直帰した。手紙による言い訳なんか聞いてやらん。エルルとサーニャの帰還がテーブルにつく条件だ。
「という事で、私はあちらから動きがあるまで「意気消沈して外に出なく」なります。いいですね?」
「はっはーん、殿下もやるねェ。いいぜぇ」
「分かりましたー!」
なので一応うちの子には説明しておく事にした。うん。流石ヴィントさんとルチルだな。察するのが早い。そしてその反応を見て、元第7番隊だった人達は全員察したようだ。
ルウとかミラちゃんは「?」って顔をしているが、それは周りがフォローするとして。ちらっと視線を
「マリー。あくまでも向こうに動いてもらわないといけないんですからね?」
「分かっておりましてよ」
「今も結託していた男性陣は、主に女性陣に追い詰められてますからね?」
「国は傾けませんわ」
ダメだ。怒ってる。というかバーサークスイッチが入った。徹底抗戦する姿勢だ。落ち着け。流石に国全体を敵に回すつもりは無いんだからな? というか「国は傾けない」って言葉の時点でアウトなんだよ。何する気だ。
みたいな事もちょっとあったが、まぁ要するに国からの来客は断るし探りを入れられても対応しない、隠密よろしく様子を窺っても得られる情報は制限するって事だ。
なお竜族において隠密行動というのは、超遠距離からのステータスの暴力による観察の事を指す。何せ真っ当な隠密行動が出来るのはエルルの実家だけだし、ヘルトさんにも協力をお願いしたから、シュヴァルツ家は今回こっちの味方だからな。
「ごしゅじん今日も元気なかったですねー」
「ん」
「もうエルルさんとサーニャさんが出かけて、4ヵ月音沙汰無しだもんな」
「流石に堪えるよねぇ」
なので、こんな感じの会話が聞こえるばかりで私の姿がどこにも見えず、耳を澄ませても声が聞こえないとなれば、「ショックで引き籠っている」という報告にならざるを得ない。
もちろん私自身は喋る時だけ気を付けて声を最低限の音量にしつつ、室内作業をしている。料理とかお札作りとかな。いくら作っても足りないものはあるし、そもそもお菓子籠には無限に入るし、どれだけ入れてても使う時は使うから。
というか、特にお菓子はだな。どうやら結構いたらしい移住希望者へのウェルカムサービスとして配っていたら、かなりの量が消費されるんだ。何かキャンペーン張った訳でもないのになんか移住者多いな? と思いつつも対応している。
『あー俺んとこもそう。何かあっちこっちから来るよな?』
『そうね~。どこかでお話したかしら~? って記憶が曖昧な人も来るから~、ちょっと大変かも~』
『大変じゃのー。儂の所には誰も来んが』
『いや、「第二候補」の所にも移住者は来ているであるぞ。住居用家屋の数が増えている筈である』
『……。そういえばそうじゃったかの?』
『「第二候補」はいい加減、ある程度以上の戦闘力が無いと相手を認識できないの止めた方がいいですよ』
『それな。じーさん自身は良くても、それでよろしくない奴らが紛れ込んだら「第一候補」や俺らが迷惑被るんだからな』
『うむぅ……こちらでまで書類は見たくないんじゃが……』
『喧嘩売ってます? 次に納品予定の的の納品日を無期限に後ろにずらしてもいいんですよ?』
『あっはっはー、なら俺はちょっと移住者の相手で忙しいから美味しい携帯食の順番後回しにさせてもらおっかなー!』
『くっ、おぬしら! 正々堂々戦いで決めんか!』
『それは~、おじいちゃんを喜ばせるだけだもの~』
『一切否定出来んのであるよなぁ……』
みたいなクラン内広域チャットによる会話もあったがともかく。
この分だと「第一候補」も何も知らないらしいな。天然でやらかしてる可能性は消えていないが、神の方で移住を勧めているって事ではなさそうだ。
……もしかすると、一定以上の土地を「ここうちのな!」したら、移住者がやってくるっていうシステムになってるんだろうか。こう、風の噂で「あそこに新天地があるらしいぞ」的な話が出回るとか。
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