第2796話 結び:回収物

 気になりつつもやるべき事は山積みだ。メインとなる建物だけでもかなりの規模……というか、完全に城になっているし……『牛肉工務店』の人達に依頼を出して、滅茶苦茶テンション高く建設してくれてても、まぁ多少は時間がかかる。

 なので私達の方でも道の整備をしたり、野良ダンジョンに挑んで建材を持ち帰ったり、炊き出しをしたり、整地したり、バフをかけたりと出来る範囲で動いている。装備は修理できたからな。

 まぁ思った通りナージュ(分霊)が付いて来ちゃったのは仕方ないとして、一応鍛冶場は残したし、分霊の本体である歯車はしっかり取り外せないように鍛冶場に設置されたままなので、まぁ良しとする事にした。良しとするしか無かったとも言うけど。


『いや良くないだろ「第三候補」。怒られてもしらねーぞー?』

『じゃあ「第四候補」の方は上手くいったんですね。スライム同族の誼で好感度が限界突破した結果ついてきたメーネの分霊は大人しくしてたと』

『んっんーまぁほらそれはあとの3人にもそれぞれアレがアレだからほらうんおっと仕事の続きしなきゃなー!』


 そんなウィスパーによる会話もあったがともかく。

 日曜日の午前、午後、そして夜のログインでせっせと働いたが、結局その日のうちにエルルとサーニャの続報は無かった。まぁ丸2ヵ月音沙汰無しなんだ。こちらが引っ越しを実行したとはいえ、試練に関係あるかと言われると、無いからな。

 ……2ヵ月経ってるんだよなぁ。にもかかわらず音沙汰無し。うちの子なんだが?


「そろそろ美味しいお酒を持ってティフォン様か、全力で磨き上げた宝石卵を捧げてエキドナ様に聞くべきですかね……」


 宝石卵は、あれ。宝石で作られたイースターエッグみたいなものだ。エキドナ様ってどうも卵モチーフが好きみたいなんだよな。宝石とかでキラキラしていればなお良しらしい。……まぁ、蛇と竜の始祖だからな。うん。

 中を中空にして細工物を入れても、宝石をそのまま卵型に磨いてもいいらしいので、そこは宝石の大きさと相談だが。まぁ私の所にある宝石鉱山の稼働と成長は順調かつ引っ越しで規模拡大したから。

 ……あっ。そうだ、お酒と言えばあれ、魔族の王(真)の部屋からパk回収してきた本と酒瓶そのままインベントリに放置してたな。まぁ私のインベントリは高性能だから、状態が良くなることは合っても悪くなることはないんだけど。


「お酒はまぁ良い物でしょうし、一応は魔法の研究という分野でしっかり実力があった上で私室に並べていた本ですから、まず良い物だと思うんですが」


 丁度大量の木材を運んでいたところだったので、それを工事現場に届けるついでに確認だ。まず木材を全部出して、入手順にソートして、見慣れないお酒っぽい名前がある辺りは……この辺か? この辺だな。

 お酒の種類とレア度については後でカバーさんに聞くとして、お酒じゃない名前、は……。

 …………うーんこの。


『カバーさん、今お時間大丈夫ですか?』

『はい、問題ありません。何かトラブルがありましたか?』

『いえそれが、そう言えば特例突入した時に入手していたお酒と本を調べてなかったなと思いまして』

『なるほど。では仮設拠点で合流しましょう』

『お願いします』


 仮設拠点はあれ。私が「築城の小槌」で出した城。あれは寝泊まりする場所であって、後で解体する予定だからな。仮設って規模じゃないけど分類的には仮設なんだ。

 で、何があったかって言うと……回収した本があるだろ? あれの名前が、どう見てもこう、その……集落の名前とか、人の名前とかに「の封緘本」ってついてる命名方式だったんだよな。だからたぶんこれ、本の形に封印されてるっぽい……。

 いやぁ何というか、最後まで悪意たっぷりというかダメさが徹底しているというか。もうこれどうしような? 落ち着いてからで良かったのか悪かったのか。まぁ、良かったって事にしよう。うん。

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