第2792話 結び:準備と不足

 フリアドでは、ゲーム中の時間は4倍に加速されている。つまり、リアル1週間が内部時間1ヵ月に相当する訳だ。だから動くまでにリアル1週間はかかる、すなわち動くとするなら次の週末になるだろうって推測して、1ヵ月はかかるだろう、と私はニーアさんに伝えた。

 イベントリザルトは例によって装備を強化できる特殊素材で、変わり種は「異界への鍵」だけだったのでスルーしても問題なし。なおかつ異世界っていう新ステージ、或いは新しいフリーエリアが解放されたという事でどこもかしこも忙しく、引っ越しの日はリアル2週間後の週末、となった。

 まぁ、畑や果樹園を引っ越しできるようにしたり、倉庫を開ける為に生産作業したり、生き物系を連れて行く為に船を作る事になったりと結構やる事はあったので、それぐらいの時間があって助かったが。


「そういえば、次のイベントのお知らせが来ませんね?」

「どうやらメインストーリーが完走できたという事で、大きな告知のあるイベントは間が開くようですね。その代わりサブクエストの数が異世界込みで大きく増えたという報告があります」

「あー……」


 なるほど、それはそうか。

 みたいな会話もあったがまぁそれは良いとして。


「……まさかの、エルルとサーニャが1月半も帰ってこない上に、どっちかがいなければ異世界に行ってはダメだと言われるとは思いませんでしたが」

「申し訳ありません! 一応理由も問い合わせたのですが中身のある返答がなく……!」

「ここまで理由が隠されるとは思っていませんでしたね」

「いえ、ニーアさんとカバーさんの両方から問い合わせて、私が不意打ちでヘルトさんに会いに行っても理由は不明でしたからね。仕方ありません」


 ちょっと遠い目にならざるを得ない。そう。イベント終了から、リアル11日が経過していた。明後日の土曜日の夜が引っ越し当日である。いやまぁ、翌日日曜日を予備日にしてるから、内部時間だと丸4日の余裕があるんだけど。

 ちなみにヘルトさんに会いに行って聞いてみたが、ヘルトさんも驚いていたので、よほど厳重に情報が制限されているらしい。いやまぁ、エルルとサーニャが竜族の『勇者』って事考えたら、それぐらい慎重というか大事になる……な……なるか?

 不思議な事もあるものだが、そろそろマジで引っ越し準備も終わるんだよなぁ。ここまで時間かかってるって事は相応に疲れて帰ってくるだろうし、その時この島がガラガラだったら結構ショック受ける気がするんだが。


「……いっそ先に、引っ越し先に似たような部屋を作っておくべきですかね。試練だとすると疲れて帰ってくるでしょうし、エルルはともかくサーニャとか数日ぐらいは寝てそうなんですが」

「あのお2人でそこまで疲れる試練というのは恐ろしくも感じますが、否定は出来ません……!」

「そうですね。……ただ、引っ越し先はかなり面積があります。そちらをどのように分けるかは、確か次の会議で決める、という話だった筈ですので、動くにしてもその後になるでしょうか」


 そう言えばそうだったな。面積が、あの街相当の面積だけかと思ったら、その周りもそれなりに含めていたようだったから。少なくとも、今の島を繋いだ面積よりは絶対に広いんだ。

 ピザやケーキのように五等分するのかとも思ったが、今の島の並びみたいに、少なくとも「第一候補」は守らないといけないしな。島じゃなくて大陸の一地域、つまり地続きになるから、その辺全部含めると、色々ごっそり、主に防衛態勢を変えないといけないだろうし。


「次の会議には「現在利用可能な「異空の箱庭」の数」を確定させてくる事と言われてますし、まず間違いなく絶対に狭くはない土地を更に広げるんでしょうけど」

「あぁぁそれもありました! いえそもそもあの大陸は狭くなっているのですが!」

「異世界に吸われたというか、異界の大神に食べられてしまいましたからね」


 しかしリアル明日だと、時間的にギリギリなんだよな。大丈夫だろうか。

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