第2791話 結び:準備開始

 まぁそれでも、それぞれの島にある施設を再確認して、どれが必要でどれが再利用出来て、外に出せるか危険が無いかを確認していくだけの話だ。

 私の島で行くと、畑を始めとした何かを作る為の場所は全部撤去、研究施設や図書館と言った情報的な資産が詰め込まれている場所も回収、寝泊まりしていた屋敷や寮は内部をまっさらにして置いておき、神殿や鍛冶場と言った目当てになる場所は残す、という感じだ。

 なお島の地下に作った宝石洞窟は回収対象だし、東側の桟橋と養殖している真珠貝も回収だ。流石に場所が足りなくて、クランハウスにカウントされる島が増えた時に他の場所に移した霊獣達のアスレチックはそのままでいいが、全自動おやつ入れとおやつは回収。


「うん。なんつーかこうやって並べてみると、「第三候補」が金持ってんのは道理だな? てか、真珠の養殖は俺も聞いてないんだけど?」

「言ってませんからね。あ、もちろんあの使い魔とかは連れて行っていいんですよね?」

「待って? 今「第三候補」使い魔とか・・っつった? あの棒人間連れて行くのはいいとして、とかって何? 他にもいたかあんなの?」


 いやその。不死族の研究成果が海流に乗って流れてくるのを研究施設の人に丸投げしたり、色々な資料からあの棒人間こと使い魔が再現できそうっていう計画書にゴーサイン出したり、精霊獣の子が思ってなかった進化をしたりだな。こう、色々あったんだよ。

 まさかソフィーネさんに懐いた精霊獣がヘルマちゃんに服貰ったらシルキーになるとか思わないじゃん……? と、若干まぁ共有する程でもないかと連絡を怠っていた(元『本の虫』組の間では共有されていた)部分が明るみに出てつつかれたりもしたが、ともかく。

 精霊獣の系譜の子たちについては、私を含めた召喚者プレイヤー組がテイム出来る範囲の子だけを連れて行くことになった。ここでまた、精霊獣の系譜の子達の間で一悶着あったらしいが、私は関知していないのでさておき。


「エルルとサーニャが戻ってこないんですが」

「流石に時間がかかり過ぎですね……?」


 はて? とニーアさんと一緒に首を傾げる。そう。竜都の大陸の竜都、そこにある“細き目の神々”の神殿に直談判に行ったらしいエルルとサーニャが戻ってこないんだよな。

 どうやらリアル日付変更線直後に異世界に行けないことが分かって、そのままざっくり引継ぎをしてすぐに向かったらしいから、内部時間だと既に丸3日は経過してる。いくら直談判と言っても時間がかかり過ぎだろう。

 何しろ2人とも『勇者』だからな。しかも皇女わたしの直属だ。手続き的なものは最優先で処理される筈なので、何かで待たされて時間がかかってる事は無いだろうし。


「まぁ実際の引っ越しにはもう少し時間がかかるでしょうし、もう1ヵ月ぐらい猶予はあるでしょうけど」

「問い合わせしておきますか?」

「……もし本気で直談判が通っていた場合、難易度の高い試練に挑んでいる可能性もありますからね。引っ越し決行日が決まって、それまで4日を切ったら確認しましょうか。たぶん3日ぐらいなら引き延ばせるでしょうし」

「そうですね! 1週間あれば引っ越し準備も出来るでしょう!」


 でも念の為、サーニャの引っ越し準備の手伝いを出来る人の手は空けておいてもらおう。エルルはもうちょっと持ってる物を増やさせたい程度に荷物が少ないのは分かっているし、その辺り時間のかかるタイプじゃないから大丈夫だろうけど。

 しかし、実際何してるんだろうな? 直談判しに行ったっていうなら、ティフォン様の気質的に試練を受ける事になってるとは思うんだが。何かしらの耐久系か、それともあの2人でも苦戦する難易度の試練か。

 ……流石にあんまり帰ってこなかったら、私からも聞くとしよう。お姉様とか「第一候補」とか、ツテはそれなりにあるんだし。

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