第2789話 結び:それぞれの様子

「エルルとサーニャは異世界に行けないんですか?」


 という話を聞いたのは、とりあえず深呼吸してから改めてクランメンバー専用掲示板を確認し、既にマリーがコトニワのあれこれについて説明と助言をしている事、フライリーさんやうちの子を連れて突入済みである事、そして、エルルとサーニャは異世界へのゲートで弾かれた事を知った。

 マリーも十分にヘビーなコトニワプレイヤーだ。特に私から追加するべき情報も無かったのはいいとして、思ってなかった情報だな。


「いやまぁ、冷静に考えればそれはそうなんでしょうけど。……で、その2人は今どこに?」

「どうやら、本国の神殿に何とかならないかと確認しに行ったようです」

「また珍しい事を。……まぁ私はどう頑張っても突入しますからね。ついて来ようと思うなら直談判ぐらいは必要でしょうか」


 まぁだが、あの2人は『勇者』だからな。この世界において、この世界を守る為の特級戦力だ。そりゃまぁ、世界の外に敵を追いかけて多少踏み出すならともかく、完全に他所の世界に行くのは無理だろう。

 しっかし、「遍く染める異界の僭王」戦があった亜空間での、直接の謁見でガチガチに固まってたエルルが直談判とはなぁ……。としみじみせざるを得ない。成長というのかどうかは別として。

 とりあえず異世界に関する現状の詳しい事をカバーさんに確認し、その流れで聞けた話についてはそういう感じらしかった。なるほどな。島が静かな筈だ。


「まぁ、特にボックス様の世界は、双子とルージュにとっては故郷ですからね。すぐそこから行けるんなら、まぁ行くでしょう。ルージュなら「異界への鍵輪」も持っていたでしょうし」

「そうですね。それに分かっている範囲ですが、あの3人は“神秘にして福音”の神の世界では時間制限が無いようですし」


 まぁそれはそうだな。本来いた世界に戻るんだから、時間制限なんてある訳が無い。何なら調子が良くなるまであるだろう。例えばルージュなら、「装備」の範囲が広がるかも知れないな。

 コトニワ時代には流石に資材の関係で出来なかった1人騎士団とかが可能になってるかもしれない。見たい。すごく見たい。今からでも倉庫にある装備を桜色に染め上げて持って行こうか。基本自作の武器だけを「装備」するのがルージュだが、コトニワ時代は拾ってきた武器も染めれば「装備」出来ていたし。


「ところでちぃ姫さん。これは機密レベルが高い情報との事で、口頭で伝えるようにと大神官さんから伝えられた情報があります」

「「第一候補」から?」


 わくわくする光景を想像していたら、ここでカバーさんから追加情報、というか、伝言があるらしい。「第一候補」から。

 ボックス様こと“神秘にして福音”の神の真名神名解放でドタバタしているとはクランメンバー専用掲示板に書いてあったが、機密レベルの高い情報とな?


「はい。まずは、クランハウスの移動を考えているとの事です」

「…………、はい?」

「何でも、かなり広い範囲の土地の権利書があるとの事で。その権利書が最東の大陸で使えるものであり、土地の範囲を確定させるのに時間がかかったようですね」

「あの大陸で、広い範囲の土地の権利書……?」


 ……。

 おや? 気のせいか若干心当たりがあるような無いような。


「そして、現在のこの島群の拠点には、異界の神のものを含めて、重要な神殿関係建造物が多くある事から、巡礼者が立ち寄れるようにしてもらいたい、と、御使族の方から連絡があったそうです」

「あー……まぁ、私も含めると、「モンスターの『王』」になっていた異界の神及び修神おさめがみが揃っていたようですし。そもそもボックス様はこの島にある神殿が本殿ですからね」

「なおかつ、不死族の研究結果の流出がこの海域全体に及んでいる事がほぼ確定し、探索計画が長期の予定で組まれている為、そこに拠点があると協力を願われる可能性が非常に高い、と」

「今までも散々私達が対処してきましたが、ようやく大規模探索が行われるんですか」


 まぁともあれ、色々理由があっての事らしい。それなら仕方ないな。

 で、その辺の話し合いをする為に、今日の夜にログイン時間を合わせて欲しいとの事だった。いつもの時間なのでこれも問題ない。

 ……。図書館とか倉庫は【ミニチュア化】で回収するとしても、神殿は残さなきゃいけないからな。それにナージュ(分霊)がいるって意味だと鍛冶場も残さなきゃいけないか。その辺相談する為の時間なんだろう。

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