第2788話 結び:特殊アイテム

 案の定、ヘルマちゃんとアリカさんと意気投合していたナージュ(分霊)の事で一騒ぎあったが、これはもうナージュ(再現空間の本体)のゴリ押しだったとしか説明のしようがないので仕方ない。

 一応動けないなりに部屋に放り込まれた後も掲示板を見たりしていたし、そのまま日付変更線を越えたが、どうやら特に何も起こらなかったようだ。良かった。

 なお、日付変更線直後の野良ダンジョン攻略でも「異界への鍵」と「異界への鍵輪」は手に入ったとの事。だろうな。絶対必須系の消耗品だろこれ。相変わらずどこで使うか分からないけど。


「……あー……」


 で、ゲーム内でもリアルでも眠って、翌日のログイン。

 すっかり奇跡の反動も治って元気に部屋から出て、装備一式をヘルマちゃん達に渡して、さて奇跡のお礼の捧げものでも作るかと思ったタイミングで、「指針のタブレット」に通知が届いた。

 ところがそこに文字は無く、何故か周辺のサブクエストを探す画面が表示されている。ただそのサブクエスト名がどちらも「異界への道」だったので、とりあえず近い方に向かったのだが。


「まぁ、それはそう。それはそうですね。何しろ分霊そのものがいた以上はある意味ここも本殿ですし、そもそもボックス様だって外から来た神様ですし……」


 装備一式を渡した直後だったので、私がいたのはコトニワから引き継いだ、コトニワ時代の中心区画だ。そして近い方というのはボックス様の神殿であり、その祭壇にクエスト反応があった。

 なおもう1つのサブクエストは少し離れたところだったのだが、分霊に合わせて統合された、異界の大神の分霊用の小さな家だった。そうだな。冷静に考えれば大神の分霊がここで寝泊まりしてたんだから、まぁ本殿か滅茶苦茶格の高い神殿って扱いになるよな。

 サブクエストの反応があったところに近づくと「異界への鍵を使用し、異界へ移動しますか?」という選択肢が出たが、とりあえずそれは一旦ノーを選択して。


「しかしボックス様の祭壇から行ける異界って、絶対にどう考えても壊された筈のボックス様の世界では!!??」


 自分の部屋に戻ってから、全力で頭を抱えた。うっそだろ、行けるの? 今から行けるの? 直接行けるの? コトニワの世界に???

 ぉあー!? としばらくベッドで転げまわってから、装備の修復依頼を優先した為にチェックしていなかったクランメンバー専用掲示板を確認すると、既に異界の大神の分霊が滞在していた場所と、世界の外から来た神の神殿で「異界への鍵」が使える事は判明していたらしい。

 ただその向こう、異世界で活動するには時間制限があり、「異界への鍵輪」に「異界への鍵」をチャージする事で時間を延ばす事が出来るそうだ。時間切れまでにゲートに戻る事が出来なければ、「異界への鍵」が一定時間使用できないという追加ペナルティがある死に戻りとなるらしい。


「……なおかつ、対応する異世界出身か、異世界にルーツを持つ種族の住民は活動時間の制限無し。世界によっては特殊バフがかかる……というか、本来の能力に戻る。なるほど、それで双子がいなかったんですね?」


 ただ……冷静になると、コトニワの世界かぁ……ってなるからな。ボックス様が防衛戦に慣れていて、ルージュやルフィルとルフェルも十分戦えて、ルールが防衛管理に長けているのは、相応の理由があるからなんだし。

 もちろんボックス様の事だから、ゲートのある場所周辺はまず安全なんだろうが……それ以外が、な。と、遠い目をせざるを得ない。ちょっと、その……滅びかけた世界だっていうのは伊達じゃないぞっていうか……。


「ん? という事は、まさかストーリー本編の続きが分かるのでは!?」


 あれ!? もしかして思わぬ供給にダウンしてる場合じゃないな!?

 装備が直ったら早速行ってみないと! いやもちろん初手でそこまでいけるとは思って無いし、ザンシと遭遇したら今の私でも単騎だと厳しいだろうけど! あれはハメた上に特定条件満たさないと倒せないやつだから!

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